『帰り道-親友への告白』
帰りに寄ったファーストフード店。
一番奥の席を陣取った私。
その前に私の話を、一言も残さず聞き逃さないようにしているのは、凛ちゃんと楓ちゃん。
二人の刺すような眼差しに、思わずたじろく。
でも、もう逃げないって決めたから。
凛ちゃんや楓ちゃんから嫌われても仕方ないって思う。
でも、親友だから、ちゃんと話しておきたかった。
「あのね…私…実は…安藤君が好きなの」
緊張で震えながらも話をする。
中学の入学式の時に、彼の輝くような笑顔に一目ぼれした事。
自分は、こんな…暗くて、内気で、ヘタレだから、航平君に似合わないと思って
想いを知られたら、航平君が迷惑だろうからって、誰にも言わなかったって事。
「なんだ…それか…」
凛ちゃんが、あっけらかんと言う。
「え?」
「そんなのとっくに気付いていたわよ」
楓ちゃんが笑いを堪えながら言う。
え?え?え?
「いつ言ってくれるか待っていたくらいだよ」
凛ちゃんの言葉で…ちょっと落ちた…
今までの私の苦労は…
一体、何だったんだろう?
ちょっと悲しくなってきた。
「いつまでたっても言ってくれないから、私達、結構悲しかったわよ」
楓ちゃんの言葉に、凛ちゃんが頷く。
「だって…2人とも、安藤君の事、ボロクソ言っていたから、もし知られたら、2人に嫌われちゃうと思って…」
俯いたままの私に、2人は顔を見合わせて笑う。
え?
ここ笑うとこ?
「あーごめんね」
目に涙を浮かべる楓ちゃん。
「ばっかねぇ」
楓ちゃんは、立ち上がって私の頭を、ポンっと叩いて
「そんな事で、キライになる訳ないじゃん。バカだね」
笑いながら言っている。
えー?
結構真剣に悩んでいたんですけど…
笑いがまだ収まっていない凜ちゃん。
「確かに、聞いたら『あいつだけは止めておきなさい』って説得に入っただろうね」
と言う。
「そうだね」
楓ちゃんも同意している。
「で…それだけじゃないよね?」
凜ちゃん、笑顔が怖いです。
「うん…実は…」
そして、私は話をする。
手を怪我した翌日のファーストキスの事も、さらに次の日の告白とセカンドキス。
後は、深田さんと小林さんの屋上での件。
そして、階段から落ちそうになって、航平君に助けてもらって偶然とはいえ抱き締められた事。
神林君に襲われそうなった後に、首筋にキスされそうになった事。
そして、昨日の恥ずかしいディープキスの事。
やっぱり恥ずかしいから、最後の事には段々と声が小さくなっていた。
流石に2人とも開いた口が塞がらない状態だった。
話を聞いた凜ちゃんは、はぁぁぁぁぁっと大きな息をついて
「前から言おうと思っていたの」
顔を引き攣らせながら
「美奈って隙がありすぎだと思う」
「…そうね」
楓ちゃんも同意していた。
え?
私って、そんなに隙がありすぎなの?
「それが美奈の個性なんだろうけど…危なっかしいと思う」
静かに感情を抑えて言う凜ちゃんを見て
私って隙だらけなんだ…
と、自覚してしまった。
「でもね…」
楓ちゃんは、その手にシェイクをのカップを手に取りストローを口に含む。
「美奈に告白した翌日に、小林と付き合うって言うのは、ひどいと思う」
そう言う。
「でもなぁ…」
凜ちゃんは何か引っかかるみたい。
「屋上での深田と小林の会話からして、無理矢理に小林が安藤に言う事聞かせているみたいでしょ?ちょっと分からないなぁ」
そういう凜ちゃんに対し
「美奈に対する気持ちが嘘かもしれない?」
楓ちゃんも少し考えている。
「うん」
凜ちゃんが頷く。
2人で勝手に話を進めないでほしいな。
「あ…でも、きっと安藤君は、私の事何とも思っていないよ。きっと」
笑顔を作って2人に言う。
「「は?」」
2人は驚いた様子で顔を見合わせている。
そして、大きくため息をついた。
「え?」
首を傾げている私に
「まぁ、いいわ」
凜ちゃんがそう言うと
「これで全部?」
楓ちゃんの問いに、私はうーんと唸ってから
「たぶん…」
と、答えた。
「まぁ、私達的には、安藤は止めた方がいいと思うよ」
楓ちゃんの言葉は、ズンっと胸に鉛が乗ったみたいだ。
「でも、そんなに想っているなら、簡単に諦められるハズもないし…それに…」
楓ちゃんの言葉が止まる。
「それに?」
私が首を傾げていると
「何でもない。ま、親友として、応援はするよ」
楓ちゃんと凜ちゃんの笑顔に、私はホッとした。
2人に話してよかった。
あからさまに嬉しそうにしている私を見ながら、クスクスと笑っている2人。
「何?」
私の問いに
「いや…美奈は本当に可愛いなって思ってね。ね、凛」
楓ちゃんが答えて、凜ちゃんに同意を求めている。
「うん、美奈は可愛いよ。だから、自信を持ちなって」
凜ちゃんがそう言う。
…絶対、それない。
私より魅力的な2人が言っても説得力無いよ。
…と、思った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます