『翌日-想定済みの出来事』
翌日、学校に行くと
下足箱の上靴は行方不明。
【ちょーしにのんな!】
という文字が机に…
あーやっぱりね…
こんな事になるのは、何となく分かっていたんだ。
だって、昨日、航平君に抱えられたんだからさ…
嫉妬深い彼女が、放っておくわけないよね。
案の定、彼女-平沢さんは、ニコニコ笑いながら
「あら、スリッパなの?上靴は?」
なんて、わざとらしく聞いてくる。
「今朝、学校に来たら無くなっていたんです」
私が答えると
「まぁ可哀想に…しかも…机に落書きなんて誰が?でも、仕方ないわよねぇ。航平君に迷惑かけたんだから」
【迷惑】の部分を強調する。
その言葉が、ズシンと胸にのしかかる。
「…あんた」
怒った凛ちゃんが、くってかかろうとしたけど、腕を掴んで私が止めた。
「誰がやったのか知らないけど、ご愁傷様」
そう言って立ち去る。
クラスの全員が、思っていただろう?
【あんたでしょ?】
って…
「美奈…どうして止めるの?」
凛ちゃんの言葉に首を横に振って
「彼女がやったっていう証拠がないんだから」
私の答えに、凛ちゃんは押し黙る。
そこに楓ちゃんが現れる。
「時すでに遅かった」
上履きを探しに行った楓ちゃんは、上靴を発見したのだが、どうも焼却炉に入れられていたらしく…
『誰だよ…こんな真似すんのは…』
用務員のオジサンが、ぼやいていたらしい。
上靴って燃やせるゴミじゃないしね。
燃やしたら、有害ガス出すし。
「インケンねぇ…いくら安藤君から抱きかかえられたとはいえねぇ…」
平沢さんに聞こえるくらい声で言う。
ピクリと平沢さんが反応する。
「『結構軽い』なんて言っていたよ」
面白そうに言う楓ちゃん。
恥かしくて、顔から火が出そうだ。
ほらぁ、平沢さんの顔が引きつっているよぉ
「どうだった?安藤君に抱っこされた感想は?」
わざとらしく凛ちゃんが聞いてくる。
火に油注がないでよ。
ほら…何だか…すごい恐ろしいオーラ出しているよ。
「いや…私…覚えてないし」
え?私の答え方悪い?
更に怒り倍増したみたい。
私を睨みつけて、こっちへ来ようとしていたけど表情が変わる。
航平君達が教室に入って来たから。
「あ…航平くーん」
さっきまでとは、打って変ったような甘えた声。
あれ?
何かが違う?
あ…腕にくっついている小林さんがいない。
休みかな?
「あれ?佐藤さんどうしたの?」
天野君が、私の足元を見る。
「インケンなヤツがいてね、昨日、安藤君から抱きかかえられたからって嫉妬しちゃって…上靴を焼却炉に投げ込んだバカがいるのよ」
凛ちゃんが説明してくれた。
天野君は、一瞬だけ平沢さんを見て
「うわぁ、インケン…航平って、そういう陰でコソコソインケンな真似する奴って、対象外なのにな」
わざとらしく言う。
「な?」
天野君が航平君の肩に手を置く。
「…あぁ、そうだな」
少し暗い表情をしている。
どうしたのかな?
あ、もしかして、彼女…小林さんが休みだから心配しているのかな?
いいなぁ
航平君に好かれて…
羨ましい。
だが、彼女がいない事をよろこんでいる人間もいる。
いわずもがな…平沢さん。
「あら?あの煩いのは?」
すり寄るように航平君に聞く。
「さぁ…」
航平君は、冷たく答えた。
その射るような眼差しに、平沢さんは一瞬たじろく。
自分の机に向かう航平君を追いかけていく。
どうしたんだろ?
ケンカ?
もしかして、私のせい?
それが顔に出ていたのかな…
辻谷君が、クスクス笑いながら
「いや、佐藤さんのせいじゃないよ。アイツね、小林とは別れたの」
そう告げた。
え?
ええ!?
別れた?
何で?
あんなラブラブだったのに?
「へぇ、別れたんだ」
凛ちゃん、結構淡白だな。
「ま、いろいろあったからな」
私を見ながら意味深に言う天野君。
え?
やっぱり私のせい?
うーん、だったら…
また、深田さんと小林さんの攻撃が再開されるって事?
ここんとこ治まっていたから油断していたけど。
また、あの嫌な日々が始まるのか…
考えただけで憂鬱になる。
そんな私のキモチを察したのか
「あの子達には手出しさせないよ」
凛ちゃんが言ってくれた。
「そうよ」
楓ちゃんも
あぁ、私、いい親友持ったな…
そういえば、まだ話をしてないや。
今日の帰りでも話をしよう。
二人の袖を引っ張り
「今日の放課後大丈夫?」
二人に聞く。
二人は顔を見合わせて
「「いいよ」」
と答えてくれた。
よかった…
結局その日、小林さんは休みで
神妙な表情をした深田さんと前田さんがいた。
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