『航平ー決意』

体育でサッカーの試合していたら、潤に足を引っ掛けられて転倒した。


『保健室行って来いよ』


ニヤニヤ笑う潤。


う…俺が佐藤の事を気にしている事に気付いてやがる。


まぁ、親友のお気遣いとやらに、たまには甘えてみるか


そう思って、保健室のドアを開けた。


目に入ったのは…佐藤の姿。


振り向いて、驚いている。


加納先生がいなくて困っていたら


『私がやろうか?』


その言葉に甘えて椅子に座る。


その仕草の一つ一つが愛おしく思う。


『でも…私…迷惑ばかり…かけて…』


泣きそうな顔で、そんな事言うなって


それは反則…レッドカードだよ。


愛おしくて、今すぐ触れたくて


『お礼って事で…』


そう言って彼女の顔を引き寄せて


唇を合わせていた。


抑えきれない想いで、舌まで入れて


佐藤は、それに答えてくれた。


無意識に…


唇を離した途端見せた


トロンとして潤んだ瞳。


少し開いた口元。


その全てが、すごくエロくて


理性の箍が外れそうになった。


『そんな…顔をするなよ…』


そう言って保健室から出て行った。


だってあのままあそこにいたら…



"俺が壊れてしまう気がした"



自分の中にある欲望に負けて


佐藤をめちゃくちゃにしてしまう気がした。


神林のように…


佐藤を泣かせたくない。


だから、逃げるように去っていく。


途中で、加納先生と保護者らしき女性に出会う。


なんか佐藤に似ていた。


もしかして、お母さんかもしれない。


…よかった。


あのまま流されなくて。





今の自分、誰にも見られたくないな。


すっげぇ情けない顔してると思う。


だから、誰にも見せたくない。


こんな顔…


もうダメだ…


俺は自分のキモチを誤魔化せない。


こんなに愛おしい。


佐藤が…佐藤美奈が愛おしくてたまらない。


これ以上…偽りたくない。


…決心がついた。


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