『目覚めたら保健室』
あれぇ?
なんか、ふわふわ浮いている気がする。
とくん…
とくん…
心臓の鼓動?
なんか早い気がする。
誰かに抱っこされているみたいに気持ちいい。
すごく安心する。
遠くで凛ちゃんと楓ちゃんの声がするような?
あれ?
航平君の声も?
あれ?
あれ?
今度は、加納先生の声もする。
夢の中?
航平君の声がするって事は…夢だな。
うん…夢だ。
どこかに寝かせられている気がする。
ベッド?
どこだろう?
どこなんだろう?
…
…
でも、何か疲れたな。
もう休もう。
そこからは何も考えられなかった。
私の視界に最初に入ったのは
天井-
…
…
…
状況が分からない…
視界に入る、仕切りカーテンと
固めのベット
真っ白なシーツの掛けられた掛布団
以上の事を踏まえて
ここが保健室である事は分かった。
しかし、なぜに私は
ここにいるんだろう?
待て…
待てよ…
状況を整理しよう。
確か、航平君達にお礼を言って
クルリと回れ右をしました。
そして、自分の席に戻ろうとしました。
はい、ここまでバッチリ。
よく出来ましたと褒めてあげたい。
すごく緊張していたから、気が緩んでました。
なんか、段々と周囲の風景が歪んできて
それから、足元がスポンジみたいに感じてきて
『ちょっと!』
と、誰かに呼ばれて腕を掴まれました。
よし、覚えているな。
で…
問題は、これからで…
それからの記憶が、さっぱりとない。
気付いたら、保健室の天井が目に入ってきた。
ふわふわ浮いていたような…
誰かに抱っこされていたような…
それがすごく気持ちよかったような…
うーん
何度、記憶を掘り下げても
…何にも出てこない。
何故、ここにいるのか?
どうやって、ここに来たのか?
しばらく考えたけど、いくらやっても思い出せない。
…とりあえず起きよう。
加納先生に聞けばいいだろうし。
むくり…
体が重いな…
この微妙に固いベッドのせい?
『起きたのかい?』
加納先生の声に、ビクッとする。
「は、はい!!」
思わず返事してしまった。
慌ててベッドから降りて、乱れた布団を整える。
仕切りカーテンを開くと
「大丈夫かい?」
養護教諭の椅子に座った加納先生がいた。
「あ、はい…」
戸惑いながらも答える私。
「最近、寝てなかったの?」
「はい…」
素直に答えてしまう…私はおバカさん。
加納先生は、一息ついてから
「寝不足な上に、精神的疲労が、溜まっていたから、ぶっ倒れたんだよ」
加納先生の簡潔な診察結果。
なるほど、それは分かりました。
しかし、分からないのが
「えっと、どうやって私はここに?」
そう、どうやってここに来たかって事。
無意識に、ここに歩いてきたのだろうか?
それとも、凛ちゃんや楓ちゃんに連れてこられたのだろうか?
さすがに、凛ちゃんか楓ちゃんに運ばれたというオチはないだろう。
二人とも女の子だし
私…それなりに重いだろうから。
加納先生は、わはは…と豪快に笑う。
「クラスメイトの…誰だっけ?…あーあー…安藤君…かな?彼が抱えて連れてきてくれたんだよ」
は…?
…
…
…
思考が停止する。
【ダレ】が【ダレ】に連れて来られたって?
「え?安藤…君?」
固まったままの私に
「そうそう、3年4組イケメンの一人の安藤航平君に抱きかかえられてね」
意味深に笑う。
「…まさか?」
思わず出た言葉。
「いや、あれは安藤君だったよ。この学校の有名なイケメンでプレイボーイの顔は忘れないって」
「あり得ませんよ」
まだ認めない私。
「すごく心配そうにしてたよー?彼氏?」
先生の目が興味深そうに光っている。
「いやいやいや!安藤君には彼女いますから!!」
思いっきり否定する。
「…なーんだ」
つまんなそうにしている加納先生。
…一応、教師だよね?
まぁそれは分かった。
安藤君に抱えられてきたのね。
だが、すぐに…
「ええ!!!」
と、驚きの声に変わる。
わ、わた、私が航平君に抱えれたぁ?
今さらながらに顔が熱くなっているような気がする。
「あらー照れてる?可愛いね。佐藤さん」
加納先生の茶化しも、頭に入らない。
えー!
えー!
えー!
どうしよう?
航平君に抱えられたなんて…
恥かしいし…
わ、私、重くなかったかな?
こんな事なら、少しぐらいダイエットしていればよかったよ。
どうしよう?
頭の中は、パニックのオンパレード。
その顔つきは、加納先生曰く…面白いそうだ。
全然、面白くありませんよ!
「可愛いねぇ、青春だねぇ」
クスクス笑いながら加納先生が言う。
「笑い事じゃありませんよー」
完全にパニックっている。
どうしたら、いい?
これからどうしたらいい?
ふと時計を見る。
え?もう6時限目?
私の記憶が正しければ、確か意識が無くなったのはホームルーム前…
つまり、6時間半も寝ていたの?
「あぁ、そういや昼休みとか坂本さんや津川さんが来ていたよ。ぐっすり寝ているって言ったら、帰ったけど」
私の考えている事を察していたのか、加納先生が言う。
「…どんだけ眠っていたの」
思わず漏れた一言。
「それだけ疲れていたって事さ」
そう言ってから、私に一枚の紙を差し出す。
「ほい。保健室の利用カードに記入だけはしていってね」
笑顔で渡される。
「…はい」
加納先生の元に行き、紙を受け取る。
「あと、親御さんに連絡しておくから、今日はもう帰りなさい」
そう言って、ある一点を指差す。
そこには、私の鞄などが、ちょこんと置いてあった。
「昼休みに、坂本さん達に言ってもってこさせた。さて、私は親御さんに連絡してこようかね」
そう言い残してから保健室から出ていく。
…何から何まで用意周到な事で
感心しながら、一回息をつく。
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