『明かされる本性』
「ちゃんと待っているんだよ!!」
恐ろしい迫力で楓ちゃんに言われてしまった。
「…うん」
その迫力に呑まれて保健室へむかった。
あれ?
加納先生がいない…
ま、そういう時もあるよね。
先生だって、いろいろあるんだから。
仕方なしに座って待っている。
暇だから本でも読んでいますか…
って、しまった!!
今日が返却期限の本がある。
楓ちゃんに、ちゃんと待ってるように言われたけど…
楓ちゃん待っていたら、図書館しまっちゃう。
返却期限過ぎたら、ペナルティで1週間は借りられない。
嫌だー
私、どうしても読みたい本あるのに…
…
…
…
よし、行こう。
少しの間だし…
返してから、すぐに戻れば問題ない。
そう思って、鞄を持って保健室を飛び出す。
図書室は4階。
1階から上がるの、ちょっとキツい。
私、まだ17歳なんだけど…
年寄になるの、まだ早いんだけど…
そう思いながらも4階に辿り着いた。
図書室に入ると、トイレに行っているのか当番の子もいない。
ゲゲッ…どうしよ…
勝手に返却操作は出来ないしな…
早く帰ってきてよー
なんて考えていたら
【ガラリ…】
静かに扉が開く。
やった、委員の子が帰ってきた。
そう思って顔を上げて固まった。
…神林君。
いつものように笑顔で、そこにいる。
でも、何だか違う。
いつもと同じようで、何だか違う。
…怖い。
本能的に、そう思った。
「やぁ、佐藤さん」
口調は優しい…でも、すごく怒っている感じがする。
「こんにちは」
小さく答えた。
「奇遇だね。こんな所で会うのは」
…奇遇?
何だろう、違和感があるような?
「そうですね」
適当に相槌を打つ。
ゴクリ…唾を飲み込んだ。
逃げなきゃ…
本能的に感じる。
この人と一緒にいるの…ダメ。
「本を返しに来たんですけど、委員の子がいなくて…」
「あぁその子なら、帰したよ。僕が帰りの片付けをするって言ったら、あっさり帰った」
近づく神林君。
無意識に私は、後ろに下がる。
「じゃあ、私も帰ります」
そう言って彼の横をすり抜けようとした…
けど、腕を掴まれてしまう。
「…痛っ」
それくらいに強く。
「ねぇ…君のお陰で、全校生徒の前で恥をかいたよ」
掴まれていた手に力が入る。
痛い!!
「君は優しいから、絶対に、あの場所じゃあ、≪NO≫って言えないって思っていたんだけどな」
「え?」
「計算外だったよ。君が、そんな勇気あるなんて思わなかった。弱っちい女だと思っていたのに」
「何を…言っているの?」
ちょっと、意味分かんないんですけど…
頭の中が混乱する。
「君のような気の弱い女は、あの場に流されるって思っていたんだけど」
いつもの優しい口調じゃない。
すごく、低くて…怖い。
「まぁいいや。ここで白紙撤回してくれたら、許してあげるよ」
「は?」
「あの時は、恥ずかしくて、≪YES≫と言えなかった…そういう事だったら、許して
あげるよ」
そう言ってから、腕を引っ張る。
「な、何を…」
私は、必死の抵抗を試みる。
「だーかーらー、僕と付き合いますって言っていいって言ってるの。そしたら許してあげるよ。アイツの胸に飛び込んだ事もね」
アイツ…?
一瞬、誰の事だか分からなかったけど
航平君?
もしかして、昼休みの階段での事を言っているの?
「…見ていたの?」
背筋が凍る気がした。
冷たく見下す神林君の視線に震えた。
体中が、恐怖で震える。
「ダメだよ、僕という者がありながら、他の男の胸に飛び込むの」
引っ張る腕に力がこもる。
「いっや…」
私も必死に逃げようと抵抗した。
逃げなきゃ
逃げなきゃ
逃げなきゃ
本能じゃない、状況が告げていた。
「だめだよーこの僕から逃げられるとでも思っている訳?」
ニヤニヤと嫌な笑いを浮かべる。
そして、力いっぱい私の抱きしめてから
「やっと、僕だけのモノになった」
クックックッと笑う。
…狂ってる
この人、狂ってる。
楓ちゃんの言葉が蘇る。
見抜いていたんだ、彼の本性を。
優等生という皮を被った人間だって言う事を。
だから、私に注意をしてくれたのに…
なんて事だろう?
私ったら…
油断していた。
「嫌!!」
私は、必死に抵抗を試みるが
「だーめ、ここには誰も来やしないんだから」
え?嘘…
「もう施錠しました的にしてきたし…」
また、クックックッと笑う。
「君を自由に料理できるよ…美奈…」
そう言って、顔を近づける。
「や!!!」
私は、力を込めて神林君を突き飛ばす。
「ご、ごめんなさい」
こんな状況でも謝る自分…バカだ。
ゆらり…神林君は立ち上がる。
「優しくしてりゃ、付け上がりやがって…」
鬼の形相のような表情に凍りつく。
「いや…来ないで…」
後ろに逃げる私。
ゆっくりと迫ってくる神林君。
「もう優しくしてやんないから」
そう言って、床に押し倒す。
「嫌!!何するの?」
そう言って彼を睨んだ…けど
「優しくしないって言ったでしょ」
そう言ってから、私のブラウスに手をかける。
両手で必死に阻止したけど
「往生際わりぃな」
そう言って、ネクタイを外して私の両手を縛り付ける。
片手でネクタイごと両手を塞がれた。
【ビリ…】
ブラウスのボタンがはじける音。
もうダメ…
この人にめちゃくちゃにされる。
出来るなら、初めては好きな人と…そう思っていたけど…
ファーストキスも初体験も、結局、夢に見ていたのとは違うんだ。
でも、キスはマシか…
好きな人と出来たんだもの。
でも…
首筋にねっとりとした物体が這ってきた瞬間だった。
【ドカ!!】
派手な音を立てて倒れるドア。
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