『モヤモヤ…』
あ、また泣きそう。
でも、我慢しないと。
そこに
「佐藤さん」
クラス委員の神林一郎君が声を掛けてきた。
神林君は、真面目で、先生達からの覚えもいい。
クラスの仕事を率先してやったり、先生達に、いろんな事を掛け合ったりしてくれる。
クラスの頼れる存在。
でも、真面目な性格だから、航平君達を目の敵にしているの。
「あ…神林君」
でも、私は、どうもこの人が苦手。
航平君を目の敵にしているから…じゃなくて、何となく苦手なんだ。
「朝から、煩いね。まったく…」
そう言って、航平君達を睨む。
「ええ…」
私は、曖昧に相槌を打った。
「まったく、ああいう風紀を乱す人間がいるってのは迷惑この上ない」
そう言ってから、私の肩に手を置く。
「きゃ…」
私は、反射的にその手を払いのける。
「あ、ごめんなさい」
立ち上がって頭を下げると
「いやいや、今のは僕が悪いからね。びっくりさせてごめんね」
神林君から頭を下げてくれた。
「いえ…すみません」
私も、もう一度頭を下げる。
神林君は、航平君を睨み
「ま、風紀を乱さないでくれたらいいだけどね」
そう言ってから去って行った。
ほんと、神林君、航平君が嫌いなんだね…
でも、真面目な彼からしたら、許せないんだろうな。
だって、凛ちゃんや楓ちゃんでも、航平君が許せないんだからさ。
そこに、凛ちゃんが入ってくる。
部活の関係で職員寝室に寄ってから来たの。
「あーも、大会が近いと大変だわ」
凛ちゃんがボヤくように言う。
「お疲れ様」
私は、凛ちゃんを労うように言うと
「美奈は、優しい子」
そう言って、頭を撫でる。
ん?何か子ども扱いしてない?
文句を言ってやろうとも、凛ちゃんの嬉しそうな顔を見たら出来ないや。
「美奈は、可愛い」
凛ちゃんは抱きつこうとするけど
「どうせすぐ別れるわよ!!」
平沢さんの荒げる声に動きが止まった。
その方角を見てみると
ヒステリックになっている平沢さんと航平君の後ろに余裕の顔で隠れている小林さんが見えた。
航平君は、興味なさそうに外を見ている。
「そんなのあり得ないわ。ね?」
小林さんは、航平君に同意を求める。
「…あぁ」
航平君は、短く答えた。
平沢さんは、体を震わせる。
「見てなさいよ!!」
そう言い捨ててから、教室から出て行った。
いつものように古瀬さんも一緒だ。
その二人に、小林さんはベーっと舌を出す。
「ね?航平君、私達、いつまでもラブラブだよね?」
甘えるように言う彼女に
「…あぁ」
航平君は、短く答えた。
あれ?
そういや、深田さんは?
と周りを見渡すと、いた…
深田さんは、複雑な表情で二人を見ている。
隣にいる前田さんは呆れている様子だ。
何かあったのかな?
なんでだろう?そう思ったの。
深田さんは、少し睨んでいる…かもしれない。
やっぱり、友達とはいえ、ずっと好きな幼馴染みを取られたのは嫌なのかな?
でも、彼女の視線には、どこか憐れむような感じもしていたんだ。
小林さん?
航平君?
どちらに向けられていたのか分からないけど。
バチッっと私と目が合った。
しまった!!
私は、いつものように絡まれるんじゃないかってビクッとしたけど…
彼女は、私に絡むことなく、前田さんに話しかけていた。
前田さんは、私を見てから、少し悲しげにした。
どういう事なのかな?
私にはよく分からない。
でも、これだけは言えるんだ。
【航平君と小林さんは付き合っている】
って。
好き合っていて
私にした、口づけや言葉は、嘘であって
私をからかうつもりなんだって。
そう自分に納得させた。
でないと、たぶん立ち直れないと思うから。
大好きな航平君を諦めるには
そう納得させるしかないって
思ったの。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます