『昼休み』
昼休み…
航平君の言葉の通り
「航平君、今朝はごめんね」
ウインクをして、可愛い仕草で平沢さんは言った。
寝起きの航平君は、機嫌が悪い。
「…別に」
とだけ答えた。
その姿が、どうも彼女にはツボだったらしい
顔を赤らめて
「やだ、航平君、照れてる?」
なんて嬉しそうに言っていた。
彼の周りには、天野君、田畑君、それに辻谷秀人君がいる。
辻谷君は、中学校からの航平君の親友。
小学校は私と同じだから、私とは小・中・高の同級生になる。
「航平、寝起きわりいからな」
辻谷君が苦笑しながら言うと
平沢さんは、口を尖らせて
「照れてるの!」
と言う。
彼女の思考は、恐ろしくポジティブだ。
自分の都合のいいようにしか考えない。
「…だってよ」
辻谷君が、航平君に言うと
「どうでいいや」
と、机に伏せたまま、顔の向きを変える。
あ…目が合った。
やばい…!
私は、体ごと航平君から目を逸らす。
赤くなっているであろう顔を見られたくないから。
昨日の事を思い出す。
ドキドキするよ…
これは…ここから出て行って、いろいろと熱を冷まさないと。
【ガラ!!】
教室のドアが開いて
楓ちゃんが、怒った表情で入ってくる。
そして、真っ直ぐ航平君の元へ…
もしかして、昨日の事バレた?
そう冷や冷やしていると
「ちょっと!」
そう言って、楓ちゃんが手を掴んだのは、田畑君。
「生徒会長のあんたが、会議をすっぽかしてどうすんのよ!」
そう言ってから、田畑君を引っ張っていく。
「あ…忘れてた」
明るく言う田畑君は、楓ちゃんは
「呆れた…」
「副会長が優秀だからさぁ」
呑気に言っている田畑君に
「何言っての?あんたが生徒会長なんだから、しっかりやんなさいよ」
そう言ってから教室から出ていく。
生徒会は、七夕祭りの事で大変らしい。
「良太も、大変だよな」
天野君が言うと
「副会長が優秀なお陰で助かるよな」
辻谷君が、そう言って笑う。
「誰だよ、アイツ生徒会長に推したの…って、俺達だったな」
天野君が、そう言って再び笑い。
でも、その輪の中に航平君はいなかった。
淋しそうにどこかを見つめている。
「航平君、どうかしたの?」
平沢さんの問いに
「別に」
そっけなく答えた航平君。
「何?気になるよ?」
そう言ってすり寄ろうとするが、スルリと交わしてから
「わりぃ、トイレ」
そう言ってから、教室から出ていく。
なんだろ?
気になるな…
…
…
…
もしかして、航平君って楓ちゃんが気になるのかな?
そういえば、切なそうに楓ちゃん達が出て行ったドア見ていたし。
楓ちゃん、性格もサバサバしていて、それなりの美人さんだから。
結構、恋文とかももらっているらしいし、私の知らない所で告白も受けているらしい。
全部、断っているらしいけど。
あぁ、なら納得出来るかも…
航平君は、楓ちゃんが…
ズシン…と胸に重石が乗ったみたい。
切ないな。
すごく
切ない。
好きな人の好きな人が親友だなんて、マンガじゃあるまいしって思っていたけど
現実にもあるんだね。
そういう事。
もし、そうなら、その恋を
応援したいな。
だって、楓ちゃんは親友だし。
幸せになってもらいたい。
航平君だって、笑ってほしい。
偽善者って言われるの分かってる。
本当は、私が航平君を笑わせてあげたい。
でも、私じゃ無理。
こんな私じゃ…絶対に無理。
そう言ってため息をついた。
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