『放課後ー教師からの苦言』

結局、その日は、航平君も深田さん達も、学校をサボった。


古川先生は、ため息をついただけで、私達に何も言わなかった。


そして、放課後、私は、再び理科準備室に呼ばれた。


「すまなかったな」


古川先生の言葉に


「はい?」


私は首を傾げる。


「手が痛いのに、仕事を言いつけて悪かった」


と、古川先生は頭を下げてくれた。


私は、大袈裟な位に首を横に振って


「いえ…私が…ちゃんと言えないから…」


語尾は小さくなる。


「深田達の事を気付いてやれなくてな」


「いいえ…それは、私が…悪いんだと」


俯いて答える私に


「何が悪いんだ?」


古川先生は、そう訊いてくる。


言葉に詰まった。


分からない…


私の何が気に入らないのか…


全然、分からない。


でも、あの二人


深田さんと小林さんが、私を嫌っているのは本当。


「じゃあ、分からないなら、佐藤が悪いのか分からないじゃないか」


古川先生の言葉に、私は首を横に振る。


「いいえ、きっと、私が深田さん達に何かしたんです。私、鈍感で気付かないから…だから…」


涙を堪える。


きっと、私が何かしたんだと思う。


本当、私鈍感で、人を傷つけても気付かないバカヤローだから。


古川先生は、ため息をついて


「原因が分からないのに、自分だけを責めるのは、佐藤の悪い癖だな」


そう言った。


俯いたまま何も言えない。


古川先生は、またため息をついて


「お母さんも言っていたが、人に対して何も言えないのは、あまり感心しない。社会に出て困るのは、佐藤なんだぞ」


古川先生は、諭すように言った。


「…はい」


私は、俯いて答える事しか出来なかった。


「話は、これだけだ。帰っていいぞ」


古川先生の言葉に


「ご迷惑をおかけしました」


深々と頭を下げる私。


先生は、ため息をつく。


何か、悪い事しちゃった?


古川先生は、諦めたように


「とりあえず、しばらくは手を養生しなさい」


そう言った。


私は、


「失礼しました」


深々と頭を下げて、理科準備室を出る。

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