『優奈-やりきれないオモイ』

寧々と一緒に屋上の扉の前に立った私-優奈


ドアの前で蹲っている。


「…優奈」


寧々が、どうしていいのか分からないで、言葉を躊躇っている。


…何で、いつもあんな事しちゃんだろ?


ほんと、自分で嫌になる。


でも、あの子…佐藤美奈を見ると


…ほんと、腹が立つ!!


あの子が悪い訳じゃないって分かっている。


でも、胸の奥で燻り続けているあの子への嫉妬。


我慢しても、我慢しても、それが溢れてくる。


私…やな女の子だな。


それに比べてあの子は…


優しくて、大人しくて…


私に無いものを持っている。


それが、悔しい…


【トン、トン、トン…】


誰かが階段を上ってくる音。


【ビクン!】


体が揺れる。


「優奈」


現れたのは、恵美。


恵美は、優しく私の肩に触れる。


「佐藤さんには、謝っておいたよ」


優しく言う恵美。


私は、わぁっと恵美に抱きつく。


「…いつも、ごめん」


小さく言う私に、恵美は頭を軽く叩いて


「悪いって分かっているなら、ちゃんと自分で謝りなよ」


そう言うけれど


「…それは出来ない」


私は、小さく答えた。


「そうだよ!」


寧々が私の擁護するように言う。


「だいたいあの子がいるから…恵美もどうして止めるの?優奈の友達でしょ?」


寧々の言葉に、恵美は息をついてから


「友達だからでしょ?優奈は、あんな事したり言ったりする子じゃない。そうでしょ?」


寧々が厳しく言うと、寧々は、グッと言葉に詰まる。


「…でも、悔しいじゃん。何であんな子が…」


そう言って唇を噛む。


…そうか、寧々も、そうだったね。


恵美は、私と寧々を抱き寄せて


「あんたらが間違った事していたら、私が全力で止める。でも、いつか、ちゃんと佐藤さんに謝らないとダメだよ」


恵美は、優しく言う。


ちょっと、嬉しいじゃない…


私も寧々も、瞳に涙が…


「ほら、教室もどろ」


恵美に手を引かれ、私達は教室に戻った。


-恵美、ありがとう

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