第二話 そりゃ手駒や丸め込むから『帰還させる』なんて考えないよな

 あれから王国は大騒ぎだった、いや、世界もだな。

 何時の間にか魔王とその配下、まあ魔族ってのはこの世界はもう居ないけどな、私が殺したから。

 私はというと、お城で優雅にお茶をすする毎日だ。

 

 だが不思議な事に、この城の姫様も一緒だ。

 名前はヨワタリン・ゼッタイン・ワタールア。

 まあ私は姫様とか姫さんって呼んでいる。

 私の事はセイント様って呼ぶ。


 んで、何で一緒にお茶しているか?

 簡単だ、姫さんは自分の国が嫌になったらしい。

 一緒に行きたいとも言い出した、面白い姫さんだ。

 

「ん~破滅の音が聞こえるね~世界から」

「楽しいですか? セイント様」

「ああ、世界は今大混乱だ、敵が居なくなった今、今度は人間達の戦争の開始だ、今すぐでなくともな」

「今までの世界もそうだったのですか?」

「ああ、これは千差万別だったね、異世界転生を――いや、異世界誘拐をした国が戦争を開始したり、逆に脅威だと仕掛けられたり」

「強大な力のせいですか」

「そうそう、私の世界の創作物によくあるよ?」

「私も連れていって下さい、見てみたいです」

「お姫さん、本当に私の世界に来る気かい?」

「ええ、本音を言えば、最初に貴女に異世界転生されるのを期待していました」


 あの時、ヨシ! と内心思っていた様だ。

 いやいや異世界転生や転移なめすぎだろ、いいもんじゃないぞ?

 まあ……良くも悪くも新しい環境に行くからな。

 でも何でだ? 国を見捨てる理由はなんなんだ?


「そんなにこの国が嫌いか?」

「当たり前です、他国は魔王を自分達でどうにかしようとしていました、私の国は『伝統』の一言で異世界から人を召喚します」

「ほう? 異世界転生、転移が伝統?」

「はい、昔魔王が現れた時に、異世界から勇者となり得る人物を呼び寄せたとか」

「ふむ、調べてみるか」


 私の魔法でちょちょいのちょいさ。

 ……なるほど、異世界転生や転移は技術的にあったようだ。

 その技術は悪用されないように、国で分けて保存したと。

 魔法書の分割か? んで、全ての国がゴーサイン出してやっとか。

 ほう? 帰る技術もあるのか、はっはーん、整理すると。


 まず最初に他国の魔導書、まあ禁書というべきか、それを手に入れる。

 んで他の国に黙ってコッソリと異世界転生、転移の魔法を改良する。

 姫さんが言っていた歴史って考えると、何十年もやってたんだろうな。

 もしかしたら建国からやってたのかもな。


 まあ独自で異世界転生や転移をやる理由は、世界の覇権を握りたいからだろ。

 まあ壮大な理由ではないだろうな、しかしこの国の奴らは困っているだろうな。

 なんせ異世界人を帰還させる魔法は、一部しか知らないんだからな。

 

 帰還させる必要がない、手駒にするか、帰れないとか言っとけばいい。

 ベラベラと考察したが、一言だ。


 この国は終わる。

 

「……なるほど、確かに異世界転生や転移はあったらしい、だが――」

「はい、我が国だけではなく、他国との共同で勇者を召喚しました」

「ほう? 博識だね」

「一応姫なので、他国の禁書を読ませていただきました」

「なるほどね」


 行動力が凄いなこの姫さん。

 異世界転生や転移の禁書じゃなくとも、世界の歴史にまつわる禁書を呼んだのか?

 まあそれもいいか、私は確認したい事がある。


「あんた、この世界に未練はあるかい?」

「あったとしても、貴女に付いて行く方が得です」

「……ったく、めんどくせぇのに絡まれた」

「諦めて下さい、私を異世界転生させるのでしょ? いえ、転移ですか」

「ったく、しょうがねーな、んじゃ賭けだ」

「賭け?」

「元の世界に帰れる手段が見つからなかったら、お前を連れて行こう」

「まあ大変、悪い魔女にさらわれてしまいます」

「あんた本当に図太いな」

「姫ですから」

「あんた自身が図太いだけだろ」

「セイント様、約束は守って下さい」

「ああはいはい、わかったわかった」


 こりゃ、連れて行くの確定だな。

 改良した転移魔法に対して、帰還魔法は考えてないだろう。

 さっきも言ったけど、手駒だったり、丸め込めれればいいからな。

 しかし、今回は私で残念だったな。

 ま、とりあえず、この国がどう行動するか楽しみだ。

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