初級冒険者編
第30話 冒険者になる
カマの村。
僕の生まれた村、ラサよりもちょっとだけ大きな村。
小さな宿屋で、なけなしのお金で1泊分を払った。
部屋に入る前にスーを繋いでもらおうとして、店の主人に「馬具なしかよ…」と怒られた。
だけど、頭絡だったり、鞍だったりをただで貸してくれた。
いいオッサンだと思う。
「いいか、小僧。これは貸してやるんだ。金貯めたら安く譲ってやるよ。気張って稼いでこい」
と拳で胸をドンと叩かれニヤリと笑っていた。
間違いなくこれはいいオッサンだ。
カマの村は小さいながら冒険者ギルドが存在する。
「ギルドイベント」の発生を期待しつつドアを開けると、受付カウンターとテーブルが1セットだけ置いてある簡素な作りになっていた。
「こんにちは。見ない顔ね」
受付カウンターには、ふくよかなおばちゃんが座っていた。
「こんにちは。はい、ここは旅の途中で立ち寄りました。」
「へぇ。わざわざカマの村に?家出かなにか?」
「いえ、両親は他界しました。なので、行く当てもないし、それなら冒険者にでもなって世界の果てまで行って、見て回ってみようかなと」
「そうなの…。ごめんなさいね。じゃあ、冒険者登録するのね?」
「はい。お願いします」
受付のおばちゃんに聞かれて、名前や生まれた日などを聞かれて、金属プレートみたいなものを渡された。
「これ、何ですか?」
「これはね、魔法で作られた金属でね、名前や貢献度ランクとか色々な情報が刻まれるの。結論から言えば野垂れ死んでもこの金属プレートがあれば、身元がわかるでしょ?」
「あぁ。ドッグタグみたいな?」
「シュン。また出てるよ!なに、ドッグタグって」
「え?あら!妖精さん?まぁ、私は今日、運がいいのかもしれないわね」
受付のおばさんはミレイユに「焼き菓子食べる?」「ハチミツ酒は飲む?」などと話しかけている。
「あの…。すみません…」
「あら…ごめんなさい。つい嬉しくって。どこまで話したかな?」
「身元がわかるためのものってところ」
「はいはい。そうそう。そうね。身元不明になっても、この金属プレート、冒険者証っていうんだけどね、これがあればキチッとどこの誰だったか?というのがわかるの。そして、偽造が出来ないから本人性を確認できる証明書にもなるわね」
「へぇ。そうなんですね。ちなみに偽造できないってどんな仕組みなんですか?」
「ざっくり説明すると、
「へぇぇぇ!すごいですね!じゃあ、僕とミレイユの分、2つお願いします!」
「あら、妖精さんも冒険者になるの?」
「あれ?妖精は冒険者になれないんですか?」
「ううん。そういうことじゃなくて、妖精剣姫みたいねって」
「なんですかそれ?」
「そうね。話すと少し長くなるから先に、魔力を流して冒険者証を完成させておこうか」
僕とミレイユは、まっさらで凹凸のない小さな金属板を受け取った。
「魔力を少しでいいから流してごらん」
「こうかな?」
「シュン、魔力流れてないわ」
四苦八苦して、なんとか冒険者証に魔力を流せた。
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