第28話 小さな出会い



馬のいななきが断続的に続く。

同じように威嚇するようにグギャだとかグゲゲとかいった声が聞こえてきた。


真っ白な馬が嘶いていた。

その周りをこん棒をもったゴブリンが5匹ほどで取り囲んでいる。



「あちゃー。あの馬、食べられちゃうね」


「え?ゴブリンって馬も食べちゃうの?」


「え?食べるでしょ。何いっての?」


「まじかー。ここでグレートハンティングは見たくないなー」


「あのさ、シュンって結構な頻度でアタシの知らない言葉つかうよね?」


「そう?ごめん、そこまで気にしてなかった」


「いいわよ。別に。アイツらが馬に気を取られてるうちに行きましょ」


「いや、ダメだよ!助けようよ!」


「えー。やだー」


「やだーって、いいじゃん。ミレイユ強いし」


「アタシ頼み?それにさっき、アタシは最弱だって話したばっかりじゃん」


「昏倒使ってくれたら、とどめは僕がさすよ!」


「えー。それはそれで何かイヤ」


「いやいや、ごめんって。あの馬、助けたい。というか移動用に馬が欲しい」


そう。

村を出てからずっと歩いているんだけど、オープンワールドの欠点を僕はひしひしと感じていた。

それは、どこまでもいけるけど、すべてを歩いて行くのは時間がかかる。ということ。



「えー。別に助けても乗せてくれるかわかんないよ?」


「いいよ。それはそれで乗せてくれるまで挑戦するよ。てゆーか、あの馬、マジで危ないからミレイユお願い」


「もー。仕方ないなー。じゃあいくよ。みんな、アイツらを倒すために手伝って!【カイドウ】」



ふわっと風がすり抜けていくと、ゴブリンが次々と倒れていった。


「え?早くない?倒れるの?」


「そうよ。意識を奪う魔法としては、花魔法は最強だからね!」


「そっか。すごいな、花魔法!」


僕は、腰ベルトにさしていた父の短剣を抜き、倒れたゴブリンたちに恐る恐る近づいていく。

しかしゴブリンたちは起き上がる気配がない。

ほっと安堵して、黒ずんだ緑色のような喉を掻き切った。

ごぼごぼと斬ったところから血があふれ出す。

うーん。かなりグロい。

だけど、残り4体も同じように喉を掻き切っていく。



「ねぇ。血の匂いが広がってるから、早く逃げよう」


「そうだね。馬も連れて行かなきゃ!」


白い馬を見ると、優しい目と目があった。

なんだか想いが通じそう!なんて思ったけど、すぐにそっぽを向いてサッと走り去っていってしまった。切ない。


仕方がないので再び、歩みを進めていく。


しばらくすると、さっきの真っ白な馬が僕とミレイユを待っていた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る