第23話 思い出
「バカ野郎!」
左のほおに強い衝撃を受け、僕の体は吹っ飛んだ。
吹っ飛んだ先にあった食卓に当たって食事のすべてを台無しにした。
「立て!シュン!」
殴られたほおよりも痛いけど、食卓が突き刺さった背中も痛い。
それでも、のそのそと立ち上がる。
「なんでお前は工房に行かなかった!」
「…。」
「答えろ!シュン!」
「…。なんでって、行きたくないからだよ」
瞬間、父の目が沸騰するのが見えた。
再び、左のほおに再び衝撃が加わって、今度は口の中に鉄の味が広がる。
歯も折れたみたいで、血が溢れてとまらない。
「行きたくない?ふざけるなよ!父さんの跡を継げと言ったはずだ!それをなんだ!逃げやがって!そのうえ行きたくない?甘えるな!」
「はい、行きたくありません。興味もありませんし、やりたいとも思いません」
僕の返事は、火にガソリンをくべたように、父さんは怒りで髪が天を突きそうだ。
これ現代日本なら案件じゃない?と思いながらも父さんに左右のほおを何度も殴られ、蹴られ続けた。
チラッと横目で見ると、座っている母さんは曇った顔で、自分の膝を見ている。
父さんを止めるわけでもないし、僕を守ろうとするわけではない。
「部屋に戻って、反省しろ」
殴られ、倒され、倒れている僕を蹴り上げる。
拷問のような時間は終わった。
2階の自室へあがり、ベッドに横たわる。
全身が痛い。
ぼーっとしていると、
僕は運動ができなかったから、かけっこが嫌いだった。
いつだってビリにしかなれないし、大差を付けられていて恥ずかしかった。
恥ずかしくてうつむいて走っていると、天国と地獄のテーマや放送委員の「がんばれがんばれ」もバカにしているようにしか聞こえなかった。
家に帰るとき、父の声は枯れていた。
お父さん、声、どうしたの?って聞いたら、母が「お父さん、
「……。いや、そうだな」
父は、誤魔化そうとしたけど、照れ笑いをしたけど続けた
「
「だめよ、お父さん。勉強くらいはできなきゃ!いい大学に行って、いい会社に入って、可愛いお嫁さんをお迎えして、可愛い孫を見せてもらわなきゃ!」
「そうだね、それも一つの未来だよ。お母さんの気持ちはわかるし、お父さんもそうなったらいいなって思う。だけど、
「だめよ!
「それが理由?
父も母も笑っていた。
懐かしさもあって、鼻の奥がツーンとして
視界が歪んだ。
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