第21話 尊重するもの
第1条
本召喚契約(以下、契約とする)は、召喚者であるシュン・ヴァリオニア(以下、甲とする)と被召喚者であるミレイユ・ミストラル(以下、乙とする)の双方の随意によって契約される召喚契約である。
第2条
契約は、甲及び乙の両者の署名及び魔力による押印を完了した時点から3年後の契約応当日の前日まで効力を有する。
ただし、契約した日の翌日より90日間に限り一方の申し出により、契約を取り消す。
第3条
契約は、甲または乙の虚偽・心裡留保等により締結された場合は無効とする。
契約が無効となったもののうち契約に対し強制力を持たせていた場合、契約締結時から無効事由の発覚の日までに生じた被害相当額の損害賠償を負うものとする。
第4条
第3条により生じた損害賠償は金品のみで補填できない場合、魂を利用し補填することができる。
甲または乙が損害賠償として受けた金品または魂については、使途を定めず、また使途を要求してはならない。
第5条
乙は、甲の求めに応じ、甲の使用する召喚魔法陣により召喚することができる。
ただし、乙の生態と合致できない空間、条件その他合理的な理由がある場合に限り、乙は甲の求めに対し召喚されない自由を有するものとする。
第6条
召喚されない自由は、乙のもつ生存権に拠るものであるが、乙の怠慢に起因した召喚拒否が発覚した場合に限り、乙は甲に対して、怠慢の都度、次の条件に抵触しない命令を1回限り強制的に受け入れるものとする。
①乙の身体に欠損等を生じる行為または改造を行う行為
②乙の精神を修復不可能な状態にする行為
③乙を人格を著しくはずかしめる行為
③各号の他、乙の人格を否定する行為
第7条
第6条の召喚されない自由とは別に、乙の食・睡眠等の生理要件により召喚を拒否した場合、乙が肉体または精神の生存的危機状況にある場合その他の状況で、甲が、契約の履行が難しいと判断する場合は除く。
第8条
甲は乙をみだりに召喚してはならない。
第9条
甲は乙の生存を尊重し、乙の生存を賭けた召喚を行ってはならない。
第10条
契約は、甲または乙の死亡その他意思の疎通が難しい場合など、契約の継続が困難であると合理的に判断できる場合、契約を一方的に破棄することができる。
第11条
第10条によらず、甲の被相続人及び乙、または甲及び乙の相続人の同意があれば継続することができる。
第12条
乙は、甲の作成した召喚魔法による魔法陣に対して異議申し立てをすることはできない。
第13条
甲と乙は、互いに尊重し、感謝の念を持って契約を履行するものとする。
「え?なにこれ…」
ミレイユと出会った日から3日が過ぎた。
父の鍛冶場から帰って、ボロボロに疲れきった頭をフル動員することで契約書が出来上がった。そして、僕の作った召喚契約書をみたミレイユの反応は芳しくない。
しまった。間抜けすぎたかもしれない。
「ねぇ。この契約書…。なんか、ガチガチすぎて怖いんですけど?」
「え?そうなの?」
「うん。もっとこう、「召喚させてね、いいよ!」くらいでいいんじゃないの?なんなの、この生存権に拠るものって。生存権ってなに?」
「生存権?生きる権利?」
「なんでアタシに聞いてんのよ?アタシが聞いてるの!」
法務関係は横嶌に任せっぱなしだったことで、僕は答えに詰まるばかりだった。
だけど、ミレイユを自由なままで僕も召喚できればなってことだよと内容の説明を続けるとミレイユは呆れていたけど嬉しそうだった。
「人族ってめんどくさいのね」
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