第20話 存在の理由



「え?本当にいいの?」

言ってみるものだ。人生なんてどう転ぶかわからない。


「いいよ。だだ、一つだけ、条件があるわ」


「条件?」


「そう、条件。そんなに難しいものじゃないよ」

ミレイユは一呼吸おいて続ける。


「私の呪いを解くために、シュンの人生を少しだけアタシにくれること」


「呪い?それを解くための手伝いってこと?いいよ。何も問題ないけど、なに?呪いって?」


「さぁね。わかんない。なんだろうね一体。でも、生まれつきの呪いのせいでアタシは群れから離れる必要があったし、一人で生きていく必要があったのは確かよ」


「そっか。ちなみにどんな呪いなの?」


「んー…。成長無効」

ミレイユはすこしだけ逡巡し答えた。


「成長無効?」


「そ、成長無効。そして解呪無効。なかなかに絶望的でしょ?」


「うん。すごいね。何をしたらそんなことになるんだろう?」


「さぁね。それもわかんない。きっと運命のスカリアあたりのいじわるなんじゃない?」


僕の作ったゲーム千年王国記では、女神ミリアムがいて、その下に統治される住人がいる。

種族は大別して人族、亜人族、魔族。そのほかに魔獣やら幻獣といったエンカウントするモンスターや、討伐等の対象となるイベントモンスターとなっていた。


ゲームを模したこの世界では、女神カテリアが統治しているのは知っている。


「運命のスカリア?ずっと疑問だったんだけど、女神カテリアがこの世界で一番偉いんじゃないの?」


「はぁぁぁぁ?カテリアァァ?」


「え?違うの?カテリアがこの世界を管理してるって思ってたんだけど。違うの?」


「違うわよ!太陽のニケリナと対をなすのが、月のカテリア。そして運命のスカリア。この3人がこの世界を作ったといわれているわね。月のカテリアはだいたい魔族が信仰しているわね」


「そっか。うーん。でもなんだか腹落ちしないなぁ」

そう。僕はこちらの世界に転生する際に、この世界の管理者である女神カテリアと話をした。しかし、女神は3柱という。


「そんなことはどうでもいいのよ。シュン。召喚契約は結んであげるから、呪いを解く鍵を探してくれるよね?」


「ん?あぁ、もちろんだよ」


「そう?じゃあ、召喚契約書を出して?」


「召喚契約書?」


「そ、召喚契約書」


「ミレイユ、持ってんじゃないの?」


「はぁぁ?なんでアタシが持ってなきゃならないの?意味わかんないよ」


「え?ってことは僕?」


「当たり前でしょ?」


「今から作っても?」


「いいよ、別に今からじゃなくても。準備が終わったら契約しましょ。それまでは…そ、そうね……」


「友達でもいいかな?」


「ング…。それよ、それ。トモダチ、ね」


「今後ともよろしくね、ミレイユ」


「だから、シュン。アタシの方が年上なんだから「さん」を付けなさいよ!」


「いいんだよ、きっと僕の方が年上だから!」


「なによ、それ。シュンって人族の子供でしょ?アタシ、こう見えて20年は生きてるよ?」


「じゃあ、ミレイユのままだ!」



「意味わかんない」


ミレイユはあきれ顔で、コップに残ったハチミツ酒をぐいっとあおった。

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