第15話 できること・やれること
「エリクサー」
西洋系マジックアイテムの最高峰といえば「エリクサー」しかない。
体力、魔力、状態異常。
全てを回復させる奇蹟のアイテム。
隣の家に住んでいるテオドラのお母さんは魔法薬士という職業で調合のエキスパートといえる。
テオドラのお母さんに確認したところ、「エリクサー」の調合は忘れられた奇蹟の回復薬ということで材料も精製方法も失われているそうだ。
そうなると、俄然、作りたくなる。
「ララン」という西の国固有の球根植物は、非常にカラフルな花が咲く。
少し変わった特徴として、太陽の光の光を浴びる時間の長さで、花弁の色が変わる。
イエロー、オレンジ、レッド、パープルと濃くなっていき、おなじくして毒性が爆発的に強くなっていく。
この「ララン」の花弁がパープルの次、一番毒性が強い青に変わったときの花弁が「エリクサー」の調合材料になる。
ということで、父の工房近くのうっそうと茂る森の近くで「ララン」の花畑を作るに至ったんだけど。
思いのほか、重労働だということに気が付いた。
ゲームの中では「穴を掘る」「植える」「土をかぶせる」が1クリックで済むもんだから、息が切れ、全身から汗が噴き出していた。
ゴロゴロとした一抱えの石をどけ、スコップを踏み込み、土を掘り返すのを繰り返していると声が掛かった。
「シュン、なにやってんだ?こんなところで」
「あ、お父さん。花畑を作るんだよ」
「花畑?」
「うん。ラランを植えるんだ」
「…。そうか。素振りは?素振りはしなくていいのか?」
「うん。もういいんだ。今はラランの花を咲かせたくて」
「……。そうか、わかった」
そう言って父は、工房の中に入っていった。
父は鍛冶師だった。
剣だけではなく槍や斧といった武器、家庭で使う包丁なんかを作っていた。
父からすると剣士になりたがっていた頃の方が、今の僕よりもずっと良かったのかもしれない。きっと遊んでいるようにしか見えないんだろう。
家の中でも雰囲気がじょじょに重苦しくなっていって、親子の会話はめっきり減ってしまった。
森から抜けてきた少し冷たい風が僕を撫でて
通り過ぎて行った。
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