第11話 頭痛の夜に見る夢
僕は夢を見ていた。
四角に切り取られた空。
まだらにしか見当たらない植物。
すごい音を立てて走っていく色とりどりの何か。
溢れかえるような人の群れ。
テーブル。
神託に書かれていたような見たこともない文字や記号が書かれた板。
笑いかけてくる顔。
明るい夜。
目が覚めると、まるで僕が僕じゃないような感覚があった。
そして決まって頭痛に見舞われてしばらく動けなくなる。
頭痛には波があって、弱いときと強いときがあって、一番強いのが朝。
昼にかけて弱くなり、夕方から夜に強くなって、気絶するように眠る。
お父さんもお母さんも、僕をずっと心配していて、教会で呪いを受けていないか、とか、聖別された物を受けとって、毎日少しずつ食べたりなんかをしていたけど、まったく効果がなかった。
かれこれ10日ほど続いたある日。
夢をまったくみないほどぐっすりと眠り、朝日とともに目が覚めた。
痛くない!僕は嬉しくて庭に飛び出して、久しぶりに素振りを始めた。
お母さんが驚いて家から出てきて、よかったと喜んでいた。
いつも素振りは1,000回で終わらせていたけど、なんだか倒れるまで素振りをしたい!って思って続けていたら昼になり、太陽が傾き始めた。
滝のようにしたたる汗、腕がいよいよ上がらなくなり始めて、体から無駄な力が抜けていく。
ただ、僕は強くなりたかった。
魔獣の襲撃にも僕は足手まといで、何もできなかったのが悔しかった。
強くなりたいと無心に剣を振り続けた。
気が付くと、土と草の匂いがした。
僕はいつの間にか倒れていたみたいだ。
立ち上がろうとすると、今までの中で一番きつい頭痛と、目につららを刺したような痛みが始まって、知らず知らずに声が出ていた。
ヤバい、死にたくない。
抱えた頭から、ぼんやりとした視界に小さな靴が近づいてくるのが見える。
「助けて…」
ガクガクと寒気が体中を駆け巡っているのに、体の内側から吐き気と熱がこみ上げてきて、からっぽだった胃から口と鼻へと胃液が逆流して溢れ、喉が焼け、息が詰まる。
苦しさから逃れようと手を伸ばすと、しっかりとした感触が僕の手をつかむ。
「シュンくん!どうしたの?シュンくん!」
真っ赤に染まった視界に、うっすらとテオドラの顔が見えた。
「助けて…。死にたくない」
そう声を出そうとしたけど、
視界が歪んで僕の意識は飛んだ。
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