胎動編
第7話 熱血
「995!996!997!998!999!1000!」
手にしている木剣を正眼に構え、納剣の動きで素振りが終わる。
ぜぇぜぇと荒い呼吸が止まらないまま全身をだらりと脱力して、乱れた呼吸を整え、そのまま瞑想に入っていく。
「おはよう、シュンくん。今日も頑張ったね」
目を開けると、優しい笑顔と腰まで伸びたサラサラした銀髪が、朝日を浴びてキラキラと輝いていた。
僕の隣の家に住んでるお姉さんだ。
「おはよう、テオドラ。ありがとう」
「シュンくんは努力家だね、私も見習わないとね」
「好きだから続けてるだけなんだけどね。剣士になりたいし」
この世界には冒険者という人達とは別に剣士と呼ばれる人達がいる。
冒険者は主に金品やまだ見ぬ世界へ踏破していく人で、剣士は誇りとか名誉のために迫りくる危険と戦う人をいう。
僕は剣士になりたかった。
お母さんに読んでもらった「ドラゴンを退治する剣士」の話を聞いた日にお父さんに木剣を貰った。
ごっこ遊びなんだけど、空想のドラゴンと戦い、木剣を振り回す僕は優秀な剣士でついにドラゴンを退治することができた。
次第にごっこ遊びは素振りに代わり、僕は1年間、雨の日も、高熱が出た日も休まず素振りを続けてきた。
「今日、運命の女神様の教会まで行くんでしょ?楽しみだね。これだけ頑張ったんだし」
「うん。そうなんだけど剣士になれなかったらどうしよ?」
「大丈夫だよ、スキルなんて補助みたいなものじゃない?シュンくんの努力はシュンくんを裏切らないよ」
「そうかな?」
「そうだよ」
テオドラは少しだけ僕より背が高くて、少しだけ手が大きい。
その少しだけ大きな手が僕の頭の上にのせられ「よしよし」される。
「ちょっとやめてよ!もう子供じゃないんだし!」
「うんうん。じゃあ、私が困ったときは助けてね、剣士シュンくん」
「当たり前だよ!テオドラだけじゃなくってお父さんもお母さんも、この村のみんなも僕が守るよ」
「それなら安心だね。じゃあ、私もシュンくんに負けないように学校に行ってくるね」
「うん、行ってらっしゃい」
テオドラが二コリと笑うと、足元に魔法陣が広がった。
広がった魔法偉人から青白い光が飛び出してテオドラが見えなくなると、そのまま魔法陣も霧のように消えていった。
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