第8話 運命の女神の采配
運命の女神様の教会で神託を受けることで、持って生まれたスキルや大まかな運命を知ることになる。
というのを小さいころからお母さんに聞いていたので、ドキドキしながら僕は順番を待っていた。
静まり返った教会の中には、なんだか寒々しい雰囲気がする。
居心地の悪さを覚えていると、司祭様に呼ばれて席を立って教壇の方へ向かった。
ちょっとだけ後ろを振り返るとお父さんは怖い顔をしていたし、お母さんは心配そうな、だけど嬉しそうな顔をしていた。
教壇に立つ司祭様の後ろには、運命の女神様の像が見上げるほど高くそびえている。
「これより女神スカリア様より、シュン・ボネアルへの神託が下されます。一同、礼拝」
司祭様が声高らかに伝え、手にしていた真っ白な紙を広げる。
そんなに長い時間ではないけど、僕も練習した通りに祈りを捧げ、そのときを待った。
「女神スカリア様より、神託が下されました。シュン・ボネアル。目を開け、神託を受け取りなさい」
うやうやしく受け取り、ありがとうございました!とお父さん、お母さんの元へ戻り神託の書かれた紙を広げると、頭の中が軽くパニックになった。
そこには基本スキル「限定召喚」「限定魅了」と書かれていて、あとは見たこともない文字や記号のようなものが連なっている。
お父さんもお母さんも黙り込んでしまい、無言の時間が過ぎた。
「あ、あの。シュンは、召喚魔法が使えるのはわかりました。しかし、こちらのこれ。一体、これは何なのでしょうか?」
「残念ながら、私も理解できません。神託の儀を20年やってきましたが、こんなことは初めてです。原因も理由も私にもさっぱりわかりません。しかし、運命の女神様の神託ですから、きっと何かしらの意味があるのでしょう」
お母さんと司祭様とでの話が終わり、家路に向かう。
「召喚魔法か…」
「うん、召喚魔法だって。でも、お父さん、僕は剣士になる夢をあきらめないよ!」
「そうか。基礎スキルはあくまで持って生まれたものだし、お前の頑張りでは新しい剣術のスキルが身につくかもしれないな」
お父さんはにっこり笑って、僕の頭をくしゃくしゃに撫でた。
「うん!お父さん、ありがとう!僕、絶対に剣士になってドラゴンを倒すんだ!」
「じゃあ、そろそろ階段を登らなきゃならないな。シュンの練習用に一つ拵えるよ。出来上がったら木剣は終わり」
「ありがとう!お父さん!すごく楽しみ!」
「そうか。善は急げというし、準備を始めるか。じゃあ、お母さん、俺はこのまま工房に向かうからシュンをよろしく」
お父さんはお母さんのほっぺにちゅーをして、元来た道に戻っていった。
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