第5話 転生の間
キィィィ、ガタン。
古めかしくずっしりと重そうな木製のドアが閉まる音が聞こえた。
ハッとすると、僕は古めかしいテーブルセットのイスに座っていた。
よく晴れた空の下。
どこかの園庭らしくて、花は満開に咲いている。
右手の方に、非常に大きく古めかしくて真鍮のような飾りがついた木製のドアがポツンと立っているのが見える。
僕が座っているテーブルセットの下は、イングリッシュガーデンのようなレンガ敷きで、めちゃくちゃおしゃれということは理解できた。
さっきまでのめまいや悪寒、苦しさなんかがさっぱり消えている。
どこだ?ここ。そう思っていると声がかかる。
「ようこそ、千年王国記へ」
全身真っ黒の喪服?みたいな服を着て、真っ黒でつやつやした超がつくロングの髪。豪奢なヘッドドレスのチュールで口元以外はほとんど見えない。
カラフルでおしゃれで陽気なこの場所に、すごい違和感を感じる。
白磁器のような肌の真っ赤な唇が開く。
「私はカテリア。この千年王国を管理する女神です。あなたの魂は、こちらの世界に運ばれてきました」
声を出すたびに、熟した甘い果実のような香りがする。
「千年王国記?」
「えぇ。千年王国記です。私が育てているアガルタの種。理想郷に育つ世界の種です。」
女神カテリアはいつの間にか持っていたティーカップを持ち上げ、喉を揺らす。
「
「どういうこと?僕の作った世界に、僕が行く?それに僕は君を作った覚えはないよ?君は誰?」
口元を手で隠し、フフッという笑い声。
「
「ふーん。リアルに作られたってこと?よくわかんないんだけど、なんでまた僕の千年王国記をベースにしたの?神様だったら0から作られるんじゃない?」
「そうですね。
どうぞと、僕にカップに入った飲み物を勧めてくれたので一口飲む。
柑橘系の爽やかな酸味が口の中に広がった。
「
ヘッドドレスの奥から優しい視線を感じる。
「そして、少しだけ体験させていただきました。そして思ったのです。あなたが作った楽しい雰囲気の広がる世界。このような世界を私も作ってみたいと。それが理由です。」
「なんだか出来すぎな感じはするけど、楽しんでくれたならよかったよ。レビューくれたら嬉しいな」
「それですよ、それ。矢野峻さん。あなたのその熱量。あなたはすでに魂の存在となったのに、それでもレビューが欲しいという」
ひとしきり、くつくつと笑い、「本当に面白い方」と一人ごちる。
「
「拒否権があるってこと?」
「ありますよ。ですが、女神である私が、たかが人であるあなたに敬意を払っている。この意味を理解してください」
「いいよ、言ってみたかっただけだし。そんなこととより、召喚魔法使えるの?」
「えぇ。使えます。使用者は希少です。なぜなら、召喚者との主従関係という契約が必要になりますから」
「そっかー。魔法陣から召喚するの?」
「えぇ。そうですね。ネオンライトみたいな光の魔法陣からでてきます」
「おぉ!格好いい!魔法を唱えるの?それとも詠唱なし?魔法陣の色は選べる?大きさは?空中に浮いたりする?それとも無難に地面?エフェクトはどんな感じ?召喚内容によってエフェクトは変わる?それとも共通?音は出る?どんな音かなぁ」
口元を隠し、くつくつと笑いながら僕の質問を聞いたあと「承諾いただけるのですね?」と聞かれたので元気よく「もちろんさ」と答えた。
「ありがとうございます。ただ、覚えておいてください。
「ありがとう。じゃあ、祈るよ女神カテリア。お願い!さっきの質問の答えを教えて!」
「魔法といっても基本は構文です。
「そっかー。すごいな!魔法!あとは、祈ることがないことを祈って欲しい…かな?」
「そうですね。ではよい人生を…」
女神カテリアが指をパチンと鳴らすと、甘い、甘い南国の果物よりも甘ったるい香りに包まれ、僕の意識は落ちていった。
「実は、レビューしてますよ」という声が聞こえた気がして、
なんだか嬉しかった。
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