第4話 さよなら現世。転生当日
ブブブブブブ‥‥
けたたましい振動が手首から響いて、夢から一気に覚めた。
ヤバい!寝てしまった!
ガバっと起き上がると、朝10時。
「もしもし?寝てた?」
スマホから流れてきた声は
「いやいや!起きてた!起きてたって!」
「声、寝起きじゃん」
「え?マジで?」
「はい、寝起き確定。今、近くにいるからそっちに行くよ」
「ごめん」
「いいって。朝飯もどうせないんだろ?コンビニ寄るけどいる?」
「はい、すみません。お願いします」
僕は謝りながら電話を切った。
スマホ、充電しなきゃ。
3%と表示されている電池のアイコンを眺め、スマホを充電器に置く。
指紋認証でスリープが解けたパソコンの画面は、煌々と明るく、延々とコードが並んでいる。
しかし、コードの合間によくわからない寝言が途中から書かれ始めていて、最後の方は完全に誤字のオンパレード。
寝言が入る少し前から、もったいないけど一気に削除してコードを打ちなおす。
窓の外は気が滅入るような曇天の冬空。
ハロウィンイベント終了後、すぐにクリスマスイベントに向けて動き出したけど短期間すぎる。
少しリリースのタイミングも考えなきゃなぁ…
ドアを2枚ほど隔てた玄関からピピッという電子音が響く。
ややあってカチャリという軽快な音とともにリビングのドアが開いた。
「
野菜ジュースとサラダの入ったコンビニ袋を渡された。
「。。。野菜しかなくない?ごはんも肉もないよ?」
「いやいや、ちゃんと買ってるって。サラダ食べたら渡すよ。ほら」
中にはラザニアとフライヤー商品が入っている。
なんで野菜なんか食べなきゃならんのだ!とぶつくさ言いながら、野菜ジュースにストローをさしてグイっと飲む。まったりした喉越し。
サラダにはマヨネーズをグルグルとぐろを巻きながら山のようにかけてほおばる。
その様子を見て横嶌はため息をつく。
「言いたいことはわかる。だから先に言わせてもらうと、お前は俺の母親かよ!」
「そうだな。お前は小学生の頃から好きなことにハマったら、それ以外、一切興味をもたないもんな。ぽっちゃりしていたころのお前が懐かしいよ」
「ぽっちゃりは余計だよ!」
「健康的なぽっちゃりとした少年から、顔面蒼白の不健康の標本みたいな顔したガリガリの青年になるって誰が想像できるよ?食って寝るか、食って帰って寝るか好きな方を選べ。あぁ。あと俺のバットで昏倒して病院で少しゆっくり過ごすってものあるぞ?」
そんなことを言いながら部屋の隅においてあるプラスチックのバットをぶんぶん振り回しながら物騒なことをいう。
「いや、イベントを成功させなきゃいけないんだよ。あと2日は籠るぜ~」
ラザニアに手を伸ばしつつ、口いっぱいにほおばると、幸せな気持ちになった。
糖分と肉は最高だ!
「パソコンにこぼれそうだから、ソファの方に行ってくれ」
苦笑いする横嶌に促されてソファに移動しようと立ち上がったら、ぐらりとめまいを感じた。
「地震だ!」
ヤバい!ラザニアは死守しなきゃ!
そう思った瞬間には、手を離したぬいぐるみみたいに、僕の体は床へ崩れ落ちていった。
「
ぼんやりとした視界に綺麗に磨かれた靴が近づいてくるのが見える。
ガクガクと寒気が体中を駆け巡っているのに、体の内側から吐き気と熱がこみ上げてきてサラダとラザニアが、口と鼻から逆流して溢れ、息が詰まる。
苦しさから逃れようと手を伸ばすと、しっかりとした感触が僕の手をつかむ。
「
真っ赤に染まった視界に、うっすらと横嶌の顔が見えた。
「クリスマスイベントが」
そう声を出そうとしたけど、
視界が歪んで、僕の意識は飛んだ。
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