14話 東の街道
王都の東門をローラと一緒に出ると、丁度日の出の時間だった。グラフィックではないこの景色に感動し、立ち止まってしまうと、
「綺麗よね」
「本当に綺麗だな」
そう、ローラが呟いた。俺も同意の返事だけを返す。
ここで君の笑顔のほうが何倍も明るくて綺麗だよ。などといったら絶対にキモがられるので、止めておく。しかし日の出に照らされ呟く彼女の横顔は、本当に心から綺麗だと思った。
「出発するか」
「そうね」
流石にこのままでは一歩も進めない。俺が促すとローラも賛同しそのまま街道を進み始めた。
王国にある東西南北にある大街道。このまま東の端まで行くと海に出て、そこに貿易都市と港がある。
ゲーム設定では別大陸や他国との貿易の拠点となる王国の大都市の一つ。それは余り変わらないらしいが、一つだけ知らなかった事をローラが教えてくれた。
「フウガは何しに港町へ?」
「俺は人に会いに。それと米を買いにかな」
「へ〜そうなんだ」
「ローラは?」
「私は別大陸への行く船のチケットを買うためよ」
「別大陸か……」
ゲーム時代は、まだ実装されてなかった追加マップの別大陸。
と言うことは、この世界はアップデート後を実装された世界と考えるべきなんだろうな。
たしか、追加マップ別大陸 新職業追加 嗅覚と味覚の計器による二感覚の実装。
この三つが主な項目だったはず。それによりサブ職業の調理師の人気が爆発的に上がったのを憶えている。新職業は公表されなかったが、王都に帰ったらギルマスに聞いてみよう。
「どうしたの、そんなに考え込んで?」
「い、いや、俺も機会があったら、別大陸に行ってみたいと思ってな」
「そうなんだ♪」
色々と思い出しながら考えていたら、ローラに聞かれ、慌てて別大陸行きを話すと、なぜか嬉しそうな表情で答えが返ってきた。
特にモンスターも出なかった一日目、何度か休憩を挟み、日が暮れる頃には小さな村に到着出来た。
「今日はお疲れ様」
「ああ、お疲れ。それじゃまた明日な」
「ええ、また明日。ホルスちゃんもまた明日ね」
「キュイ」
村に一軒しかない宿屋に入り、勿論別室で泊まる。
道中、昼休憩でホルスが起きてきてから、ローラはホルスに夢中で、どうしてもと御願いされ預けることになった。ローラはホルスのためにと、弓で小鳥を仕留め捌き、その肉で餌付け間でしたのだから、ホルスもそれはそれは、ごきげんだった。
しかし毎回、
「ホルスちゃん、私がママでちゅよ〜〜〜♪」
と、言うのは止めてほしい。一応親鳥はまだ生きているのだから。
翌朝、また朝早く目覚めると、早朝なのにもかかわらず村人の多くが起きていて、何やら集まって深刻な表情て話し合っていた。
「おはようございます。どうしました?」
俺もローラも気になり、声をかけてみると、昨晩家畜が襲われたらしい。その死体はなく、森の奥へと引きずった後があり、これから村の代表者が、王都の冒険者ギルドへ依頼を出しに行くという。
「良かったら、私が討伐しましょうか?」
なんのためらいもなく、ローラは村人達にそう提案すると、皆とても喜んでいた。
これはギルドを通さない依頼。なんの実績にもならないし、下調べも必要だ。何より、ゲーム時代は、こんなイベントは稀で、基本冒険者ギルドからの依頼を受け、その途中にイベントは発生するものだったからな。
そして、
「どうやら、ここでお別れね……」
少し寂しそうにローラが俺にそう言ってきた。
「いや、俺も討伐に付き合うよ」
「えっ!いいの?」
「ああ、これもなにかの縁だろう。それに一人より二人のほうが効率がいい。早く倒して皆を安心させてやろうぜ」
「うん♪」
ここで一人だけ、先を急ぐのは流石に格好悪いだろう。もし、万が一ローラより強いモンスターだった場合、多分俺は絶対に後悔すると思うしな。
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