13話 港町へ


「し、失礼いたしました陛下。」


「うむ」


 焦る騎士団長の謝罪を赦し、扉が開き王様が部屋に入ってきた。


「こちらにおわすのが、フリーダム国国王ストライク・フリーダム陛下であらせられる」


「「ははっ」」


 騎士団長が紹介し、その場で俺と副団長は跪き頭を下げた。

 おお!王様だ。そんな名前だっけ?ゲーム時代にオープニングやPVで良く登場し、イベントでは、ソロランキングトップ10に入ると謁見出来て、その時レアアイテムをくれたキャラ。ストレージにアイテムがぽいっと入っているだけではなく、表彰や発表も凝った演出だったもんな。面倒くさいと嫌うやつも少なくなかったが、以外にこのロープレは受けていた。

 俺も何回か貰ったことはあったが、今回はなに貰えるのだろうか?


「フウガとやら、面を上げよ。直答を許す」


「はっ」


「急に呼び立てに応えてもらい感謝する」


「勿体無き御言葉」


「そう、畏まるでない。そなたはわしの命の恩人で、この王都を守った英雄だ」


 その言葉に驚く騎士団長と副団長。


 うん、ギルマスは話さなかったのか。信頼度アップだな。


「して、お主が別の世界からきた、転生者でよいのか?」


「はい、理由はわかりませんが……」


「そうか。東の港町でそなたの同胞を保護しているのだが、どう扱ってよいか助言を請いたい」


「先ずは、会ってみないことにはわかりません。あいつがこの世界でどうしたいのか」


「そなたはどうなのじゃ?」


「私は、ゆったりまったりのんびりと、生きていきたいと思っております。そのうち世界を旅して回りたいとも考えております」


「そうか……羨ましいのう」


「「陛下!」」


 へえ〜それが本音か王様。とても人間臭い感じに違和感と共感が混ざる変な気持ちになる。

 単なるプログラムで動く丁型文しか話さない王様しか知らないからな。それが、やり上がりで体調がまだ悪そうな顔つきに、内心自由を望む気持ち。国王ともなればゲームと違い責任と激務で大変なのだろう。

 身分だってそうだ。生まれた時から将来の選択肢がほぼない。これがリアルなんだろうなと改めて思う。


「二人共、今のは他言無用で頼むぞ」


「「はっ」」 


 そりゃそうだ。あの言葉を拡大解釈すれば、引退したいと思うだろうよ。そうなれば色々と面倒そうだ。

 

「それで、申し訳ないが早めに会いに行ってもらえると助かるのじゃが……」


「わかりました。明日には王都を出発いたします」


「おお!そうかそうか」


「そのかわり」


「わかっおる。下賜する土地は既に用意できている」


「ありがとうございます」


 やったね。土地ゲットだぜ。


 それからは、ゴブリンとの戦闘の話を聞かれたり、再度騎士にと勧誘され断ったりと話をした後、王城を後にした。外に出ると、今まで懐で大人しく寝ていたホルスが起きてきた。


「キュイ〜〜」


「そうだな。冒険者ギルドに行ってご飯にするか」


「キュイ!」


 もう昼過ぎだ。俺も腹が減った。



◆ ◆ ◆



 しかし、冒険者ギルドの中に入ると、酒場は臨時休業だった。探してもドムの姿が見当たらない。

 受付にルイーズがいたので尋ねると、


「ドムさんはおやっさんの手伝いで解体してますよ。今は人手がいくらあっても足りないんですから」


「そうですか」


「ところで、フウガさんはこの後お時間は?」


「いや、俺はこれから旅の準備で商店に行くつもりですよ」


「えっ!ホルスちゃんどこかいっちゃうんですか?」


 ですよね、俺よりホルスですよね。


「冗談です。ギルマスから聞いてます。港町へ行かれるんですよね?」


「ええ、なので少し食料を買い足そうかと」


 いやいや、目がマジでしたよルイーズさん。


 そう、あの店に行って米の入荷を確認しないと。もうそろそろ限界だ。米が食いたい。労働力にはなりたくなかったので、直様冒険者ギルドを出て、ローラと出会ったあの店に向かった。


「店主はいるか?」


「おお!あの時の旦那じゃありませんか?」


「例のものは入荷したか?」


「ゴブリンのせいで流通が止まりまして、入荷予定だったんですが遅れてます。もしどうしてもと仰るのであれば、東の港町に在庫があるそうですよ」


「わかった。それとは別に鳥の干し肉は扱ってたりしないか?」


「そちらでしたらございます」


「キュイ!キュイ♪」


 ホルス用の携帯食を買い足し、適当な酒場で食事を済まして、この日は早めに休むことにした。




 翌朝、まだ日が昇る前に起き、東門へつくと知った顔がいたので驚いた。


「おはよう、ローラ」


「あら、フウガ。どうしたのこんな朝早くに?」


「東の港町へ用があってな」


「あら?奇遇ね。わたしも港町へ向かうところよ。これもなにかの縁かしら。どう、一緒にいかない?」


「別に構わないぞ」


「決まりね♪」


 一人と一匹だったが、道中少しは賑やかになりそうだな。



 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る