12話 登城
ホルスを家に連れて帰ろうとするルイーズから、奪い返し宿へ泊まった翌朝、俺は騎士団長に言われるがまま登城した。入口にはショートボブの金髪美人女騎士が立って待っていてくれた。
「お待ちしてました。ご案内いたします」
「あっ!この声、もしかして副団長さん?」
「はい、申し遅れました王国騎士団副団長のマリス・ミゼルと申します」
「ご丁寧にどうも。フウガです」
「とうぞ、こちらへ」
王城に入り、案内されながら長い廊下を歩いてあると、なんか知らない偉い人達が道を塞いできた。ゲーム時代にも見たことのない顔ぶれ。
「これは、宰相閣下」
マリスが立ち止まり礼をするので、俺も黙って見様見真似で礼をした。
「うむ、そのほうが今回活躍した冒険者か?」
黙っていると、マリスが肘で脇腹を突いてくる。
あっ!この人俺に話しかけてるのね?
「いえいえ、騎士団の皆様始め、参加した冒険者達全員が活躍したかと」
「ふむ、しかしその方がゴブリン共を全滅させたのであろう?」
「私は最後に少しだけ力を振るっただけに過ぎません。ギルドマスターが私の策を聞き入れ、騎士団長が的確な指示を出し、皆がそれに従った結果、全滅出来たと思いますが」
「た、たしかにそうだが……」
「閣下、陛下をこれ以上おまたせする訳には……」
「足止めしてすまなかった。機会があればお主とまた話がしたいものよ」
「しがない身分の私には、もったいないお言葉でございます」
会話が終わり、宰相達は去っていった。
気を使う面倒臭い会話が終わって、内心ホッとしていると、副団長が話しかけてきた。
「あなた、元貴族かそれに伴う身分だったの?」
「いやいや、ただの平民ですよ」
そんなじっとり見られても、本当に平民ですから。
「その割には、礼儀作法や言葉遣いがしっかりしてるわね」
いやいや、これぐらいの返しは、アニメやドラマ、ラノベで少しはできるでしょうよ。
「俺のことより、陛下がお待ちなのでは?」
「本当にあの人邪魔なよね……急ぎましょう」
本音が漏れてますよ副団長。
少し足早に廊下を進み、謁見の間とは別の部屋に通された。ゲーム時代に謁見の間には、いったことがあるので、不思議に思ってあると、
「今回は正式なものではないのよ。だからといって不敬にならないように。さっきの宰相様とのやり取りを聞いて、その不安は減ったけど……」
「過分な評価ありがとうございます。マリスお嬢様」
「そ、そう呼ばれたのは、ひさしぶりよ……」
少し冗談めいて、副団長をお嬢様呼びすると、驚いた後、顔を背け赤らめ呟いた。
やっぱりお嬢様だったか。まぁ、貴族令嬢じゃなきゃ副団長になんてなれないよな。ゴブリン討伐のおり、冒険者達を少し舐めた視線で見ていたし、言葉にもたまに棘ががあった。少しは、意思返しできただろう。
「ほら、副団長。照れてないで早く部屋に案内してください」
「て、照れてなんかないわよ」
そうですか、嘘が下手ですね副団長。
「失礼します。特級冒険者のフウガ殿をお連れしました」
「入れ」
部屋の中には豪華な椅子が一脚とその右側に騎士団長が立っている。
「遅いぞ!何をしていた?」
「申し訳ございません」
直ぐに騎士団長が遅れてきたことを責めてきた。何も話さず謝る副団長。俺は納得いかないので間に入り、理由を話す。
「待て待て、突然宰相閣下が行方を遮って話しかけてきた。対応していたら時間を食ったんだ」
「はぁ、あのお方は……」
「だから副団長は悪くないぞ。これでも、かなり急いで話を切り上げて、ここに来たんだからな」
「すまなかったな、二人共」
「いえ、遅くなり申し訳ございません」
「騎士団長、あの宰相、いかにも企んでそうな顔つきだが大丈夫なのか?」
蔑んだ粘着質な視線。絶対まともじゃないだろう。王の客人を足止めなんて不敬以外の何ものでもない。
「フウガ、お前も遠慮がないな。ここだけの話かなり面倒な御仁だ……」
騎士団長に確認すると、やっぱり迷惑な人なのね。
「ふう〜ん。俺には関係ないが……例えば、降りかかる火の粉は払わないといけないんだけど、それはしょうがないよな」
今は問題ないが、もし向こうが俺にちょっかいをかけてくるなら、それは対応しなければならない。別にやりすぎても国外に脱出すればいいだろうし、人里離れた場所でのんびりするのも悪くない。
「そうだな、それはしょうがない」
騎士団長も悪い笑顔で了承してくれた。期待されても向こうが仕掛けて来ない限りは何もしないぞ?
「但し、払う時は知らせてくれると助かる」
「わかった。事前に連絡するさ」
(もう、この人達と一緒だと疲れるわ。そんな話私のいないところでしたよね)
「ゴッホン、まだかのう?」
つい騎士団長と話が長引いてしまった。椅子の後ろにある扉から咳払いと、催促の言葉が聞こえた。
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