11話 同郷
やっと気づいてもらい、門が開く。もちろん飛行魔法や身体強化でジャンプして入れはしたが、勝手に入ることは自重して待っていた。
俺、功労者だよね?一番倒したよね?
◆ ◆ ◆
やっと門が開き、城下町に入れた俺は、冒険者ギルドのいつもの部屋に呼ばれ、騎士団長とギルマスの三人で酒を酌み交わしている。
「いや〜フウガ殿すまなかった。開門といくら指示を出しても、歓声でかき消され伝わらなんだ。ハッハッハッ」
「ずいぶんと門が開くのが遅かったな騎士団長……」
――ゴクリ
嫌味を言ってエールを一口。
「まぁ、その、なんだ……ご苦労さん。ガっハッハッハッハ」
「笑うなギルマス。お前も気づけよ……」
――ゴクリ
もう一回言ってまた一口。
戦闘後、討伐戦に参加した騎士団や冒険者達は、外の平原でゴブリン達の解体や処理を、おやっさん支持の下、働いている。
なんで俺がここにいるかというと、しばらく経って、俺が締め出されてることに気づき、詫びと色々と話が聞きたいからと、騎士団長に呼ばれたからだ。
立会人はギルマス。正直皆が働いてる中、酒を飲むのは気が引けたが、俺を忘れていた奴らだと思えば遠慮することはないと思い直した。
「本題に入ろう。で、お主のあの力は何なんだ?」
「何って魔法剣だぜ」
「それはわかる。一体どんな魔法剣だ?どうやったらあの範囲と威力になる!?」
「普通のウインドブレードだけど?身体強化し、魔力を限界まで剣に注ぎ込んで、リーチを最大に伸ばしたから」
「ウインドブレードだと!?」
「ああ、そうだぞ」
「長年鍛錬してきたが、私の積み上げてきた自信が……」
魔法剣とは、剣に魔力を込め魔法を付与し攻撃力を上げるスキルだ。俺が使ったウインドブレードは、風の初級魔法ウインドカッターを付与し攻撃力やリーチを増やす初歩中の初歩だが、使い方はパラメーターと剣術スキル。そして魔力制御により威力は変わる。おそらく騎士団長は魔力制御が乏しいのだろう。
「そう落ち込むな騎士団長。こやつは異世界人だから儂らの常識では測れんぞ」
ギルマス、ペラペラよく喋るな。隠しきれないし、正直に話すべきだろうが、もう少し、その、なんというか…………
俺、信頼するの早すぎたのか?
「何だと?お前もか!」
「おい、なにか知っているのか?」
俺は騎士団長の言葉に驚いて思わず立ち上がってしまった。
「うむ、丁度昨夜王城に報告があってな。東の貿易都市で港が破壊されたと。その容疑者を拘束、いや、説得し保護したらしい。だいぶ錯乱しているらしく、元の世界に返せ、さっさと戻せ、と騒いでいたらしい。、今は落ち着いていて、領主が身元を預かっていると」
「騎士団長、そいつの名前はわかるか?」
「たしか……ラスプーといったか」
「はぁ〜!?アイツもこっちに来てたのかよ」
「なんじゃ?フウガ。知り合いか?」
「ああ、悪いやつじゃないぞ。ただ……」
「「ただ?」」
「女癖が悪すぎるんだ」
攻略ギルドに所属していた高ランクプレイヤーで、何度か一緒にプレイした仲だ。
しかし、女性プレイヤーへの会話が、セクハラというかナンパというか、すぐリアルのデートを誘ったり、クエストを手伝う代わりに連絡先を聞いたりと、問題行動が多かった。
でも実力はあり、運営に通報はされず、女性プレイヤー達からの評判もそこまで悪くなかった。
他の男性プレイヤー達からは嫉妬の目で見られていたが。
「なるほどな。だから女性としか話をしないのか。報告でも衛兵が話しかけても答えないが、メイドや女性の騎士とは、良く喋るらしい……」
「マジかよ……こっちに来ても振れないなアイツ」
「どうにも扱いに困っていてな。フウガ、一度会ってくれないか?向こうではかなり手を焼いているらしい」
なるほど……ならばここからは交渉だ。
「報酬は?」
「はぁ?」
「おい、フウガ!」
えっ!驚くとこなの?ギルマスもなぜ俺を諌める?
「だから報酬だよ。同郷とはいえ、俺にあいつの面倒を見る義務はないぞ」
まぁ、これが身分制度の強い封建社会では異例なのはわかるが、俺には関係ない。創造神も好きにしろって言ってたし。
「うむ…………なら、陛下に掛け合って爵位を」
「いらん。そもそも、どの国にも属するつもりはない」
そう、睨むな。貴族になるなんて、どう考えても面倒だ。
「なら、金か?」
「いや、金ならある」
「なら、何がほしい?」
「そうだなぁ〜王都郊外に、誰もいない好きにできる土地がほしい。そこまで広く無くていいから」
「土地だと?」
「ああ、この世界での拠点としての家がほしい。もちろん家はこちらで建てる。あっ!庭で畑を耕すのもいいな」
もう、この世界で生きていくなら家は必要だ。狭いコンテナハウスっぽいものなら、収納魔法で持ち運びもできるし、頑丈に作れば野営も問題ない。旅に出ても楽だしな。
「それだけの強さがあるのに変わってるな。その力を世のため人のために使おうとは思わんのか?」
ああ〜〜〜騎士団長はそういう人なのね。そんなのは志が高い人達で頑張ってくれ。
「俺は俺の生きたいように生きる。冒険者は自由なはずだ」
「そうか……もったいない……」
「なんとでもいえ。俺は好きに生きる」
落ち込まれても困る。それは騎士団長の考えなのは否定しないが、能力があるからと望んでもいないのに押し付けられては溜まったもんじゃない。
「騎士団長、余り無理をいうでない。フウガがこの国を嫌って出ていったらとうする?それこそ大損だ」
ギルマスぶっちゃけすぎ。そういうのは俺のいない所で二人で話してくれよ。
しかし、アイツがこっちにの世界に来ていたのは丁度いい。必要な物を色々と作ってもらおう。
「で、どうなんだ?土地を用意出来るなら引き受けるぞ」
「わかった。陛下に掛け合って用意しよう。その代わり一度謁見してくれ」
「仕方ない。わかった。交渉成立だな」
――ガシッ
騎士団長は、もう握手で力を入れてこなかった。
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