15話 初パーティー


「フウガ、ありがとう」


「だから気にするなって。それでどうする?」


「一応、パーティー組んでくれない」


「わかった。なら一つ条件があるんだが?」


「な、なによ?」


「ローラを鑑定させてもらっていいか?」


「う〜ん、しかたないよね。そのかわり、あなたの能力も教えてね」


「わかった」


 ローラに誘われ、この世界で初のパーティー(バディ)を組む事になったが、彼女の実力や能力がわからないままでは、役目の割り振りが出来ない。

 一人でさっさと片付けるのは、今回ちょっと違うと思うしな。


「では、失礼します」


「ええ……なんか改まって丁寧に正面から言われると、恥ずかしいわね……」


 鑑定


 名前ローラ

 レベル 62

 種族 エルフ族

 職業 レンジャー

 サブ職業 調合師

 装備 

 魔樹の魔弓(特級)攻撃力80

 貫通 

 森蜘蛛の毒ナイフ(上級)攻撃力35

 毒の付与

 森蜘蛛の麻痺ナイフ(上級) 攻撃力35

 麻痺の付与

 水蜥蜴のレザーアーマー(上級) 防御40

 火属性攻撃2割減少

 土蜥蜴のブーツ(上級) 防御20

 転倒防止

 アクセサリー

 古代の指輪(伝説級)

 魔力消費3割減 魔法威力2割増

 魔法袋

 HP223  MP192

 攻撃力108 防御力100


 なるほど……やはりレンジャーか。

 装備で短剣術と弓術のスキル持ちなのはわかるし、ゴブリンとの戦闘で水魔法スキルも持ってるだろう。

 種族補正は、たしかMIDとDEXの増加とSTRの減少だったはず。それにあったサブ職業の調合師ってわけか。


 しかし鑑定で、保有スキルやパラメーターが見えないな。でも人物鑑定出来るだけありがたい。ゲーム時代は頭の上には名前とレベルと職業しか出なかった。

 基本アイテムはNPCから説明してもらい、初めて名前や性能などがわかるシステムになってたし……

 わざわざ???としか表示されないアイテムを、鑑定士に見せてアイテムファイルを埋める作業は辛かった……

 本当にNPCしか出来なかった鑑定を貰えたのは色々と助かる。


「短剣術と弓術、水魔法以外の戦闘スキルは?」


「風魔法と精霊魔法、後は罠かな」


「なるほど」


 レンジャーと言っても、魔法士よりのスタイルか。たしかに、あの時放った水魔法の攻撃力は凄かった。


 「それで、フウガはどうなのよ?」


 「俺か?正直に話すけど信じるか信じないかはローラ次第だな、ははは……」


「何よそれ!勿体ぶらないでさっさと教えなさいよ!」


 それから俺は、鑑定で見れる項目を正直に伝えると、ローラは一度驚いて、直ぐにブツブツと独り言を呟いた後、なぜか納得した表情に変わった。


「一応、正直に話したんだが……」


 ローラに恐る恐る尋ねると、


「信じるわよ。あの戦いをこの目で見てるからね」


「そうか、助かるよ……」


「なにそれ?変なの。フフフフフ♪」


 たしかに変だな。助かるってなんだよと自分でも思ったけども……

 ここで彼女に嫌われないかと不安な気持ちになっていた自分に気づくが、それは勘違いとしておこう。


「で、どうする?」


「先ずは襲われた家畜小屋にいきましょう」


「そうだな」


 村人に頼み、案内してもらうと家畜小屋の壁が外側から破壊され、中は血が飛び散った後がいくつもついていた。少し匂いがキツイな。

 ローラも鼻と口に袖を当て、匂いを堪えながら中を調べ始める。俺は鼻をつまんで口で息し、家畜小屋周辺を調べると、北ある森へと続く血の跡が三つ続いているを発見した。


 ローラと合流すると、彼女は掌を出してきて、その上には赤黒い剛毛が乗っていた。


「レッドグリズリーの仕業ね。しかも複数」


「また、面倒だな」


「家畜小屋で良かったわ。もし家にいってたなら……」


「間違いなく全員やられてただろうな」


 レッドグリズリー。火属性の熊の大型モンスターだ。討伐推奨レベルはたしかに30以上。基本職一つはマスターしておかないと勝てない。それもソロでは無理だろう。あくまでもパーティーレベルの話だからな。ソロでは倍の上級職でやっとだろう。


 「逆に冒険者ギルドに依頼を出さなくて正解だったかもね」


「そうだな。下級が探索に来て遭遇したら全滅もあり得るだろう。どうする?血の跡から跡を追うか?」


「そうね。今奴らは満腹で巣穴で休んでると思う。こちらから仕掛けるならチャンスかも」


「決まったな」


「ええ、早速いきましょう」





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