8話 転生者
ローラは、懐で寝ているホルスの寝顔を、とても優しい眼差しで覗き込んでいる。
「かわいいわね……それに安心している。あなたをとても信頼している証拠ね」
そう小さく呟き、羨ましそうに俺を見た。母性?保護欲?ホルスの見た女性は、そういったモノに目覚めるらしい。まぁ、俺も父性?っぽい気持ちはあるが……
「抱いてみるか?」
「えっ!いいの?」
ローラにそう尋ねると、とてもうれしそうな笑顔で返事が返ってきた。
「ああ、ゆっくりと抱き上げてくれ」
「わ、わかったわ。フワフワ〜〜それにあったか〜い。ホルスちゃん、私がママですよ〜」
俺はホルスを懐から取り出すと、彼女は恐る恐る優しく抱き上げ感想をいう。いや、ママではないだろう?
しかし、綺麗な人だ。身長は女性としては高いほうだろう。大柄な俺より少し低く、出るとこは出ているが細い身体。少しつり上がっているが、くっきりとした目と、すらっと高い鼻立し。腰辺りまで長く伸びたブルーの長い髪。前世も含めて、俺が出会った女性の中で一番美しい。
ホルスに夢中な彼女に思わず見とれていると、
「フウガ、どうした?」
「い、いや、なんでもない……」
「ふ〜〜〜ん?」
(ニヤニヤ)
「お、俺にもエールをくれ」
「ハッハッハッ、あいよ」
突然ドムに話しかけられ焦る俺。思わず恥ずかしくなり、ローラへの視線を逸らす。
おいドム、なんだそのニヤケ顔は!思わずエールを頼み、それをちびちび飲んでいると、
「あっ、ローラさん。えっ、あたしのホルスちゃんが魔女の手に……」
「失礼ね、ルイーズ。誰が魔女よ!」
ルイーズが受付から酒場に来て、ホルスを抱くローラを見て驚いて声を上げた。それに思わず突っ込むローザ。
「二人とも静かに。ホルスが起きる」
「「ごめんなさい……」」
二人の声が大きかったので注意すると、やはりホルスは起きてしまった。
「キュ……キュ……イ?」
――パタパタパタパタ
「「あっ……………」」
「キュイ……ZZZ……」
そして寝ぼけながら辺りを見回し、俺の向かってゆっくりと飛んで懐に潜り込む。そしてまた眠り始めた。
「そういえば、ルイーズさん。どうしました?」
「そうでした。フウガさん、ドムさんと一緒に来てください。ギルマスがお呼びです。」
「わかりました。おい、ドム」
「ああ、わかった。と言う訳で二人とも今日は閉店だ」
そう言ってエプロンを取り、奥へと入ってくドム。
「あら残念。あっ!忘れてた。私も、解体場に倒したモンスター持っていかなきゃ。みんなまたね」
「ああ、またな」
「ホルスちゃんのママの座は譲りませんよ」
酒場でローラと別れ、戻ってきたドムと三人でギルマスの下へ向かう。しかし、ホルスのママってそれは俺の妻ってことじゃ……いやいや、そういう意味じゃないよな?
◆ ◆ ◆
――コンコン
「ルイーズです。二人をお連れしました」
「待っていたぞ。入って適当に座ってくれ」
中に入り各自適当に椅子やソファに座る。俺はギルマスの正面に座って改めて礼を言った。
「ギルマス、時間と場所に感謝する」
「ふう〜〜〜、それで早速じゃがフウガ、お主何者じゃ?」
本当に早速だな。しかし、回りくどいのは俺も好きではないのでちょうどいい。
「俺はこの世界じゃない別の世界。つまり異世界から来た」
「それはどういうことだ?」
「異世界人で転生者ってやつだな」
「なんじゃと!」
俺とギルマスの問答を驚きながらも黙って聞く二人。
「この世界とよく似た世界で生きていたんだが、事故にあってな……しかし、なぜか創造神様がこっちの世界に生前の記憶を持ったまま転生?転移?してくれたらしい。最後に好きに生きてくれって言われてさ」
「使徒様なのか?……………」
使徒?いやそんなじゃない。あんな軽い感じの文章で、しかも目的も使命も言われてないぞ。
「そんな大層なもんじゃないと思う。別に普通の人間、いや、ヒューマンだし、神様の気まぐれじゃないのか?別に使命も目的も言われてないぞ」
「教会が飛びつく話だな」
「そうなのか?でも俺だけじゃないらしいぞ?」
「なんじゃと!」
「最低でも俺以外にもう一人、いや、あの口調だと、転生者はもっといるんじゃないのかな?」
「…………」
「それはどういう?」
「文章は、俺個人宛では無く、複数形だった。それに、同じ時間に事故に合った奴らは、複数人いる可能性が高い。だとしたら俺以外に転生された者達もいると思うぞ。それがヒューマンとは限らない。種族関係なく転生していると思うぞ」
「そうなのか……」
「ここからは俺の予想だが、おそらく俺と同レベル、もしくはそれ以上の者達の可能性が高いと思う」
「それは……まさかお主より強い者達ということか?」
「強い弱いは戦わないとわからないが……」
「そうか…… で、その転生者達、害はないのだろうな?」
「わからない……別に俺が善人を気取るつもりはないが、邪な気持ちを持った者や、力に溺れている者もいるかもしれない。それに元の世界に帰りたがる者も……」
そう、同じ時間帯にプレイしていたフレンド登録に名のあるプレイヤー達。
ゲーム内とはいえ、色々な奴がいた。合う奴もいれば合わない奴もいる。プレイスタイルや言動、色々だ。
「はあ…………お主でさえどうするべきなのか悩ましいのに、そんなことが起きてるとは……」
えっ?俺ってそんなに問題起こしてないよな?それからギルマスは考え込んでしまった。黙り込んで唸っている。
「フウガさん?自覚ないんですか?十分色々と規格外ですよ」
「うんうん、規格外だな」
「えっ!」
ここで黙って聞いていたルイーズとドムが話に加わってきた。
「お前が外で再教育した奴らは、ギルド等級が全員上級の三人組だった」
「はぁ?あれでかよ?」
中級以下だと思っていたが、上級だと?弱い、弱すぎる……
「装備だって、一目で高級な物、いや、それ以上だとわかりますし……それに、今だにその身体から溢れ出す気力と魔力の圧だって……」
「えっ!そんなの出てます?」
――キョロキョロ
装備はわかるが仕方ない。でも、気力や魔力が漏れてる?そんなの初めて聞いたぞ?えっ?どういうことだ?座ったまま、自分の身体をあちこち見て回るが、全くわからない。
「自覚無しか……」
「みたいですね……」
「俺のこと?」
「「はぁ〜〜〜〜〜」」
妙に息の合う会話をするドムとルイーズ。自分がと訪ねてみると、深いため息を揃ってつかれた
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