7話 再会
やはりそうなるよな……
元とはいえ特級ランクのギルマスより強く、鑑定を弾くほどのレベル差。そして、中々手に入らない難病を治す特効薬を持っている、突然現れた正体不明のおっさんなんて、怪しすぎるし警戒されるのは当たり前だ。
「ギルマス、今夜時間を取ってくれ。空けてくれるか?」
「ああ、時間をとろう」
「出来れば、ルイーズさんとドムにも話しておきたい」
「わかった。俺から声をかけておく。この部屋でいいか?」
「ああ、また後でな」
う〜ん、嘘をつくのは苦手だ。どうするかなぁ〜〜〜
約束をギルマスとした後、俺は解体場へと向かった。中に入ると、
「おお!あんたか?場所開けといたぜ」
「えっ!はい。よろしくお願いします」
声をかけられ驚いた。ギルマスに瓜二つ。髭だけが白では無く黒いだけで、ほぼ同一人物と言っても問題ない姿の大男。
挨拶を交した後、解体場の中を見回していると、ルイーズとナイフを持った三人組が、奥からこちらに来てくれた。あのナイフは解体用か?
「フウガさん、お待ちしてました。準備万端です」
「「「うっす……」」」
笑顔のルイーズと、つらそうな三人組。しょうがない。
「お前ら、先にこれやるから飲んどけ。その代わりしっかり解体しろよ」
「「「はびっぶば!ばざっず」」」
(マジッすか!あざっす)
俺がボコボコにした三人組に、収納魔法からポーションを取り出して三本渡してやる。流石に怪我したまま仕事をさせるのは、作業効率が落ちるし危ないからな。そして、
「ルイーズさん、この方は?」
「解体場の責任者で副ギルドマスターのマッソー様です」
「皆からは、おやっさんって呼ばれてるから、お前さんもそう呼べ。ガハハハハハハ」
この人、絶対ギルマスの血縁者だろ。笑い方までそっくりだ。
「もしかしてギルマスの?」
「おう、弟だ。あっ!双子じゃねえぞ。あと丁寧な口調はやめてくれ。むず痒くなっちまう。それよりゴブリン共をさっさと出しな」
「わかった、俺はフウガだ。よろしく頼む。さっき言われた場所でいいのか?」
「おう、それと上位種がいたら俺に渡してくれ」
「それじゃとりあえず、ゴブリンはこっちと」
――ドサドサドサドサ
「「「……………」」」
「ほら、あなた達。驚いてないでさっさと作業に取り掛かって。数も数えといてね」
「「「う、うっす」」」
「おお!すげぇじゃねえかフウガ。大量だな!」
「集落にいた奴全部だからな。そしてこれが上位種だ」
――ドッスーン
「おお!ゴブリンジャイアントか。しかし、どう戦ったらこんなにボロボロになるんだ?魔石はいいとして、これじゃ、唯一素材となる骨が折れてて、使いもんにならんわい」
「すまん、こいつには格闘術の練習相手になってもらった」
「なるほどな!そりゃこんな感じになるのも頷ける。さっさと魔石を抜き取るか。次からは首だけ綺麗に跳ねて持ってこい。フウガとその剣なら余裕だろ?」
「わかった。気をつけるよ」
なるほど、素材にならないのか。今回は仕方がなかったが、次回からはなるべく気をつけよう。なるべく……
「えっ!まさかフウガさん、素手でゴブリンジャイアントを倒したんですか?」
「えっ!ああ……まぁ……その……はい……」
「はぁ〜〜〜規格外にも程がありますよ」
「すいません。ご迷惑おかけします」
「あっ、そういう意味じゃないんですよ。それで集落の場所を受付にある地図を見て、確認して頂きたいのでここは任せていきましょう」
「わかりました。おやっさん、後よろしく」
「おう、この三馬鹿達がサボらないよう見張っといてやる」
「「「一生懸命やらせて頂きます」」」
――ビシッ
「それじゃフウガさん、いきましょうか?」
「はい。お前ら一番多く解体した奴にはボーナス出してやるからがんばれよ」
「「「よっしゃ〜〜〜」」」
解体場を出ていればルイーズと受付に向かって歩いていると、突然前を歩く彼女が立ち止まり、振り向いてモジモジしながら何か話そうとしている。
「あの〜〜〜」
「わかってますよ。寝ているから起こさないように、そっと抱き上げてくださいね」
「はい♪わかりました。ホルスちゃ〜ん」
「ZZZ〜〜〜キュ〜〜〜ZZZ〜〜〜」
「くっ………」
「あっ!ご、ごめんなさい……」
ですよね、俺はわかってますよ。ホルスが目当てなのは。
しかし俺の懐で寝ているホルスを、彼女が直接抱き上げた時に、指先が腹筋当たってくすぐったかった。思わず声が出そうになるのを押し殺すが、漏れてしまい、ホルスに夢中なルイーズも、冷静に男性の懐に両手を差し込んだことへの恥ずかしさに気づいたようだ。
「ルイーズさん……これからは、ホルスが起きてる時だけにしましょうか?」
「ごめんなさい!そっ……そうですね……ついホルスちゃんの可愛さに夢中で……」
なんとも気まずい空気の中、受付にたどり着きホルスの寝顔を愛でながら、地図を見て話す彼女の質問に次々答えていく。しばらくすると、
「クァ〜〜〜〜キュイ?」
「あら、ホルスちゃん。起きたのね」
ルイーズに抱かれ寝ていたホルスが大きなあくびをしながら起きた。
「おはようホルス。よく寝てたな。腹が減ったか?」
「キュイキュイ」
「よし、ドムの所でメシにしよう」
「キュイ」
――パタパタパタパタ
((!!!))
俺の懐ではない事に不思議そうにしている。食事
にすると伝えたら、なんと、ほんの1メートルぐらいだがルイーズの腕から俺の懐まで、かなりゆっくりとだが羽ばたいて飛んできた。
「ホルスちゃん凄〜い!」
「凄いなホルス!」
「キュイ♪」
――ドヤッ
そのホルスの仕草に騒ぐルイーズ。俺も思わず顔が綻ぶ。そして誇らしげなドヤ顔を決めたホルスは、その後直ぐにモゾモゾと俺の懐に潜り込んだ。
しかし、生後三日で飛ぶものなのか?流石に無理があるだろう。この丸っこい体型に小さな翼。物理法則を無視している。この異世界に俺の常識は通用しないようだ……
◆ ◆ ◆
「ドム、俺には少なめで頼む」
「おう」
ルイーズと別れ、酒場のいつもの席に座り、ドムに頼み夕食を取る。ホルスの食欲は旺盛だ。日に日に食べる量も増えている。
「お待ち。おい、フウガ。なぜか今夜お前の話で、俺までギルマスに呼ばれたんだが、どういうことだ?」
「その時になったらわかるさ」
「そうか……まぁいい」
料理を持ってきたドムに理由を聞かれるが、はぐらかす。するとあっさりとドムは引いてくれた。
おっ!今日は魚か。この世界に来て初めてだな。周りに海はないから川魚だろう。泥臭さも無く美味い。
しかし、米に醤油に味噌とどうにか手にいれて、海に行って海鮮を食べるのもいいな。もしこの後の話で決別したら海を目指して旅でもするか……
そんな事を考えながら食事をしていると、突然入口から大きな声がした。
「あっ、あの時のヒューマン!」
そちらを向くと、俺を指さしている商人と揉めてた美女エルフだった。
「ああ、あの時の美人エルフさん」
「ちょ、ちょっと、やめてよね。その言い方……」
照れているのか?顔が赤いぞ。しかし嘘は言ってないから問題ない。
「となりいいかしら?」
「どうぞ」
「ドム、エール」
「おう。しかし、まさかローラの姐さんと顔見知りだったなんて、フウガも隅に置けないな」
「そんなんじゃねえよ。美人が困ってたら助けるのは当たり前だ」
「また美人って…………ドム、姐さんをつけるんじゃないわよ。次言ったら吹き飛ばすわよ」
「へいへい、怖い怖い」
中々武闘派なエルフだな。まぁドムの受け流し方で、いつものやり取りなんだとわかるが、
「あなた、その……呼び方……止めて、ローラよ。上級……」
「新人のフウガだ。改めてよろしくなローラさん」
「ローラでいいわよ。ふ〜ん、新人ねぇ〜」
改めて自己紹介を交す。悪意はなさそうだが、俺を値踏みするような視線は止めてくれますかね。
「キュイ♪」
(ゲップ)
「ホルス、もういいのか?」
「キュイ」
――パタパタパタパタ、モゾモゾモゾ
「ZZZ〜〜〜」
「まさか!その子はウインドファルコンの雛?」
「しーーー今寝たところだ。騒が無いで欲しいな」
「ごめんなさい……」
「成り行きで従魔として引き取ったんだ」
「凄いわね!警戒心が強くて、滅多に従魔にならないモンスターなのに…… 」
(このヒューマン何者?私でさえ従魔に出来なかったのに………… )
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