6話 報告
翌朝、宿を出て眼の前の冒険者ギルドに入ると、昨日来た時よりも賑わっていた。
依頼票が壁に張り出され、それを皆、仲間達と相談しながら吟味している。
俺はそんな光景を横目で見ながら、併設されている酒場で昨日と同じ席に座った。するとドムが奥から出てくる。
「おはようドム。ありがとな。あの宿は快適だったぜ」
「キュイ」
俺の懐から顔を出し挨拶するホルス。
「おはようフウガにホルス。だろ!それで注文は?」
「また適当に頼む」
「わかった。しかしお前さんは依頼を受けなくていいのか?割のいい依頼がなくなるぞ?」
「いや、まだライセンスが発行されていなくてな。受けても意味がない。それにギルマスと会う約束がある。朝食を食ったら部屋に向かうさ」
「ほう〜〜〜」
「俺のことなんてどうでもいいだろ?それよりホルスが腹減らしてるから急ぎで頼むよ」
「キュイ〜〜〜」
「すまんすまん、直ぐに用意する」
水を出してドムが奥に行った後、突然後ろから肩に手をかけられ話しかけられた。
「おう、おっさん。良いご身分だな」
「ずいぶんとイカした装備じゃん。貸してくれよ」
「ここは希望のある若い俺達が有効活用してやんよ」
おお!起きたぞテンプレ。あからさまにガラの悪そうな三人組に絡まれた。どうすりゃいいんだこれ?
「おい、フウガ」
すると、奥から上半身だけ出したドムが悪い笑顔で首を掻っ切るジェスチャーをしてくる。なるほど、やっちまえと。
「ここじゃ迷惑がかかる。表に出ろ」
「おお!怖い怖い」
「話が早くて助かるぜ」
「三人対一で勝てるかなぁ〜ギャハハハ」
朝からうるさい。ドムの言う通り黙らせるか……
「ドム、ホルスを頼む。先に食べて待っててくれ」
「キュイ」
「おう。余りやりすぎるなよ」
「わかってる」
俺は三人を引き連れ冒険者ギルドを出た。その間もピーチクパーチクと煩く吠える三人組。そんなのホルスだけで間に合っている。奴らの会話を遮り、俺は煽りながら言う放つ
「御託はいい。さっさと纏めてかかってこい」
――バキバキッ ドカッ ボコボコボコッ
朝食前に腹ごしらえの運動を外でして少し経ち、ヨタヨタと歩く三人組を引き連れ、俺が冒険者ギルドに戻ってくると、先ほど座っていた場所に朝食が湯気を立てて用意されていた。
「お疲れ。朝食だ」
「おっ!美味そうだな」
「ばも〜〜〜ぼればびばどうずべば……」
(あの〜〜〜〜俺達はどうすれば……)
「うるせぇっ、そこで大人しく並んで正座して待ってろ」
――ギロリ
「「「ば、ばび!」」」
(((は、はい!)))
まともに喋れていないが、理解できる。これは言語理解の無駄遣いだな……
「おっ!ホルス。沢山食べたか?」
「キュイ♪」
(ゲプッ)
さてさて、冷めないうちに俺も朝食をいただこう。うん、美味い。炙られたパンに焼かれた分厚いベーコンと野菜のスープ。しかし朝から量が多いな……
頑張って完食し、寝ているホルスをドムから受取り懐にしまう。あれ?少し大きくなったか?成長早くない?
「お前達、ついてこい」
「「「!」」」
――コクコク
俺は足を引きずる三人組を連れ、昨日ギルマスに呼ばれた部屋へと向かった。
――コンコン
「ギルマス、フウガだ」
「待っていぞ、入れ」
ドアをノックし了承をとる。三人と一緒に部屋の中に入ると、
「ガハハハハハハ、ずいぶんとやられたのう」
「フフフ、バカですね〜いい気味です♪」
「「「………………」」」
三人の姿を見てギルマスもルイーズも大笑い。やはり評判が良くない不良冒険者達だったみたいだな。随分と嫌われているな。二人共心配する気配さえ全く無い。それでいいのか?いやいいんだろう……
「それで、なんでこいつ等を連れてきた?」
――ギロリ
(((ビクッ!)))
ギルマスの圧に腰が引ける三人。そう脅すなよ。
「人手が必要でな。仕事を手伝ってもらう。おい!お前ら邪魔にならないよう部屋の隅で少し待ってろ」
「「「ばい!」」」
――ビシッ
「そうか……まぁいい。先ずはこれだ」
そうってギルマスが差し出してきた冒険者ライセンス。
「おい!中級じゃないのか?」
「元特級のわしに勝ったお主が、中級なはずが無かろう。とりあえず特級じゃ」
「そうか。ならありがたく貰っとく」
(((!!!)))
首にかけ装備する。これで冒険の準備は整った。
「早速なんですけど、ルイーズさん」
「はい?」
「王都にくる途中、ゴブリンの集落を発見しました。それで殲滅したんですけど、処理してもらえますか?」
「集落?殲滅!ソロでですか?」
(((!!!)))
「はい」
「ガッハハハハハ、やはりフウガは面白いのう」
「うるさいギルマス。今ルイーズさんと話してるんだ」
「わし……ここで一番偉いのに……」
(シュン……)
とりあえず、ギルマスは無視してルイーズと話を進める。どうせ脳筋だから詳しい話なんてわからんだろうに。
「はい。殲滅出来たと思います。証拠にゴブリン共の死体が山程そのまま収納に入ってまして。ちょっと数が多く解体が面倒だったのでお願いしたいんですけど。あっ!そのために、こいつら連れてきました。使ってください」
「「「えっ!」」」
「ああ?」
――ギロリ
「「「ばぁい……」」」
(((ペコリ)))
「おいおい、手伝わせるなら余り脅すなフウガ」
最初から素直に頷いとけよ。俺に絡んだ罰だ。
「ちゃんと給金は出してやるぞ。それとポーションもな」
「「「あばっす!」」」
単純で現金な奴らだ。
「フフフ♪人手が足りなかったんで助かります。わかりました。討伐依頼として処理させていただきます。後で集落の場所も教えていただけますか?確認依頼を出しますので」
「わかりました」
「それではフウガさん。ギルマスとの話が終わったら解体場に来てください。さあ、あなた達行きますよ」
「「「ばぁい……」」」
――バタン
ルイーズにドナドナされていく三人組。よし、これでゴブリン共がの処理を俺がしなくて済むし、冒険者ギルドへの負担も減らせたな。
「わし……もう、話していいかのう?」
「そういじけるなよギルマス。薬の件を教えてくれ」
うるさいと言ったからか?シュンとなっているジジイの大男なんてどこに需要があるんだ……
「王様は大変感謝されとったぞ。これは礼の報奨金じゃ大銀貨百枚入っとる。両替もしといたぞ」
――ドスン
「おお!気前がいいし気が利くな」
「それと、お主が希望するなら騎士に取り立てると仰っしゃっておる」
「あ〜〜〜〜〜それは勘弁してくれ……」
「そう言うと思ってわしから断っておいたぞ」
「お!流石ギルマス。出来る男」
「じゃろ?ガッハッハッ」
「それじゃ俺は解体場に行くとするか」
「フウガ、その前に一つだけで聞きたいことがある」
「なんだ?ルイーズ達を待たせているから手短に頼むぞ」
「フウガ……お主、何者じゃ?」
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