小森vs光龍――②

「すごいなぁ。一体、何が起きているのやら……」


 颯はそう言いながら、呆けたような顔で空を見上げる。


 天上では青い稲妻と黄金色に輝く光がせめぎ合うようにぶつかっていた。


「クッ……、何故だ! 何故、人間ごときに俺様が……!」


 小森の天叢雲剣から放たれた雷が光龍の右前足を貫く。


「お前も充分、強いよ。光を浴びた人間を即死させるなんて、大した芸当じゃねえか。そりゃ、Xランクも行くよ」


 空中で光龍と戦いながらも、小森は落ち着いたゆっくりとした口調で光龍に語り掛けた。


「ただ、俺が強すぎるんだ。お前がいくら強力な魔法を放ったところで、俺には一切利かねえ。そういう能力だからな。それと合わせて攻撃力最強のこの天叢雲剣。言わば、最強の矛と最強の盾を持ったような状態だ。まあ、運がなかったと思え」


 天叢雲剣に溜まる魔力が今日日、一番の大きな青白い輝きを放つ。


「ま、待て……! 早まるな!」


「お前を殺して、俺は再び名声を得る。じゃあな、Xランク。正直、前戦ったXランクの方が強かった気がするけど」


 ビルをも超えんとする巨大な稲妻が、光龍の全身を襲う。

 雷を浴びた魔物は一瞬で灰となり消え去ると、光龍は絶命した。


「ついでに一発!」


 小森は光龍を一撃で仕留めようと武器に魔力を大量に込めたせいで、剣にはまだ残留の魔力が残っていた。

 

 それをある方向に目掛け、小森は残りの雷を全てその場所に向け放った。


「うわぁ!」


 落雷と共に凄まじい轟音が辺りに轟くと、佐倉は情けない声を上げ尻もちをついた。

 目の前で先ほどまで自身と戦っていたスライムキングが消し炭となり、この世から姿を消したのだ。


 そんな人間離れした技を使ったのは言うまでもない。


「よっしゃ、これでモンスターは全滅! とりあえず、日ぃ暮れる前に終わってよかったわ」


 先ほど光龍がいたビルに空く黒い大きな穴。

 この穴から魔物が漏れ出し、有楽町を壊滅レベルまでに追いやったのだ。

 しかし今、小森が光龍を討ったことによって収縮が始まり、彼が空から地上に降りたった時には完全に穴が閉じ切っていた。


 これでもう、魔物が外に出て暴れることはない。

 小森は町を救った。

 

 ヘリコプターを飛ばすマスコミのカメラが彼の姿を映し、SNSや掲示板では小森の勇姿に盛り上がりを見せているのだが、そんなことは露知らず、今の彼が何を考えているのかと言うと……。


「うぇ~、疲れた。帰ったらゲームしよ」


 小学生みたいな内容だった。

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最強冒険者は家に引きこもりたい 星川カタル @kataru3

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