ハーデス3/6

「皆、ユニクロは着れたかな? ちなみに民間用では最高スペックのフェーズ5だから、転んでもナイフで刺されても全然平気だ。……鉄砲を喰らったらちょっと痛いけど」


「イチローさん、撃たれたことあるんですか?」


「おう、一回だけな、しかもマシンガンだぞ? 痛いのなんのって」


 子供達、特に男の子はざわつく「すっげー」「かっこいいー」との称賛の声が聞こえる。

 さすがは男の子だ、いつの時代もこういう話に興味があるものだ。


「まあ、今回はそんな事にはならないから安心してくれ。よし、船外に出る前に設定を冥王星に合わせるんだぞ?

 分からなかったら俺か先生に聞くように、先生方は子供達のユニクロの設定をちゃんと確認してくださいね。

 間違えるとジャンプしただけで宇宙に放り出される恐れがありますので」


 まあ、そうなっても回収は簡単なんだが、初めての宇宙でトラウマ級の経験はさせられない。

 今回の旅行で宇宙が嫌いになっても困るし。


「あれ? スズキさん。おかしいですね。冥王星のデータがありませんよ、この宇宙服壊れてませんか?」


 エイミー先生が不安げな声で質問をする。


「またまたー、何もしてないのに宇宙服が壊れる訳ないじゃないですか……あれ? 本当だ、アイちゃん、冥王星のデータがない」


「おや、ほんとですね。おそらくは最新型ですからソフトウェアが間に合っていないのでしょう。あるいは冥王星のデータは不要とメーカーが判断したのか。

 ……どうやら後者が正解のようですね。環境ソフトの見直しのアナウンスによると冥王星のデータは少し前に廃止されたようですね。

 もちろん、今はコジマ重工の工場がありますので、コジマ重工のサイトからダウンロードできますよ? もちろん別途課金が必要ですが……。あとでクレームを入れておきますか?」


「いやいや、ちゃんとお金は払うよ。ソフトウェアだってタダじゃないんだ。しかもサードパーティ製なんだから文句は言えないよ。しかし、冥王星ってそんなにマイナーなのか?」


「はい、極々一部の熱狂的なファン以外に訪れる者はいないでしょう。ちなみにコジマ重工の社長の息子で冥王星工場の工場長、ヨシヲ・コジマさんもその貴重な一人ですね」


「なるほどね、余程の変わり者と見た。さて、ダウンロードも終わったことだし。いざ行かん、決戦のハーデス編だ!」


「おや、スズキさん。ハーデスとはギリシャ神話にお詳しいのですね。そのお歳で実に博識。さすがはスズキ財団の血族といった所ですね」


 スタン先生、さすがは学者さんだ。俺の適当に言った発言にマジレスをする。


「あ、ああ。いやー、それほどでもないですよ」


 ちなみに冥王星はプルートという。

 プルートの語源はローマ神話の冥界の神のことでギリシャ神話ではハーデスとなる。


 もちろん、漫画の知識だ……胸を張って言えないが、まあ、良い感じに誤解してくれたならそれでよし。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る