第4話 王国城に呼び出される

 ……


 あれから更に、二週間ぐらいの時が過ぎた。

 季節も夏の時期に入り始めるが……この国は梅雨が無いらしいので、初夏の季節が続いている。


 俺やリンは普段通りの生活をしており、今日も養護施設子どもたちの為に仕事を頑張っている。

 だが、アスの方は相変わらず塞ぎ込んだままで有り、フウゴルを殺した呪縛からはまだ解かれない。


 俺は今日もリンと連れて、市場へ行って買い出しをして、教会に戻って来ると……俺やリンを待っていたかの様に神父が教会から出て来る。

 神父は真面目な表情で、俺とリンに向けて話し始める。


「スズヤ、リン!」

「先ほど王国城から伝書鳩が来まして、直ぐに王国城へ来て欲しいそうです!!」


「えっ? 今からですか。神父??」

「急ですね……(汗)」


 俺は驚いた表情で神父に話す。リンの方も『?』の表情をしている。

 時期的にまだ、王者の剣は完成していない筈だ。


 なのに、王国城からの呼び出しに俺は疑問を感じる。

 神父は神妙な表情で、俺とリンに向けて話し始める。


「あなた達だから言いますが……また、魔王軍がパプテトロンへの侵攻を計画しているそうです」

「恐らくでしょうが、スズヤ達はその遊撃任務を、ナポレン王から命じられるでしょう」


「!!」


「!!」


 俺とリンは神父の言葉で同時に驚く!

 魔王軍が再度侵攻して来るのは想定内だが、遊撃までは想定外だからだ!!


 それに、主力部隊で有るアスが戦前離脱している///

 ゴブリン数体程度なら俺やリンでも遊撃出来るが、それ以上の数はアスが居ないと絶対不利になるのは目に見えている。


 神父は険しい表情で、俺とリンに言い始める。


「ですので二人共は、早急に王国城に向って下さい!」

「もしかしたら、付近まで魔王軍が侵攻しているかも知れません?」


「……分かりました。神父!」


「……はい」


 俺は真面目な表情で神父に返事をするが、リンは困った表情で神父に返事をする。

 神父の言葉の後。俺とリンには買ってきた食材を厨房に仕舞った後、急いで身支度をして教会から王国城に向う。


 ……


 俺は戦士の姿。リンは白魔法使いの姿で王国城に徒歩で向う。

 本来はアスも連れて行かなければ成らないが、あの状態のアスを王に見せるわけには行けないし、その前に黒魔法使いに成る素振りもアスは見せないだろう。


 リンは困った表情で、俺に話し掛けてくる。


「スズヤ……本当に、遊撃任務を命じられたらどうしますか?」


「……数次第だよ。リン」

「数体なら問題ない。だが、それ以上だと俺たち二人では無理だ!」


 俺は諦めた表情でリンに話す。

 コハルが王に、リュウガンロ鉱床の結果を報告しているが、アスが心理的ダメージを受けた事までは報告していないだろう。


 それか報告していたとしても、あれから三週間近い時が過ぎている。

 普通の人間なら心理的ショックを受けても、三週間の時も過ぎれば、有る程度は回復する……


 ……


 俺とリンは王国城に到着して、衛兵の案内によって王室に案内される。

 玉座にはこの国の王で有る、マッカー・ナポレンが座っていた。


 王は俺とリンを見ながら、穏やかな表情で話し始める。


「急に呼び出して悪いな。スズヤ達!」

「……ところで、アスの姿が見えないのだが?」


「ナポレン王!」

「実は現在……アスは体調を崩していまして///」


 俺は、申し訳ない表情で王に話す。

 王は理解した表情で、俺に話し始める。


「……そうか」

「アスは体調を崩したか。季節の変わり目だしな…!」


 王は右手で、顎を触りながら言う。

 王は真面目な表情に変わって、俺とリンに向けて話し始める。


「神父から聞いていると思うが、また近い内に魔王軍が侵攻を企てている情報を、コハルから教えて貰った」

「魔王軍の兵力や何月何日までは分からないが、また前回の様な事が起きる可能性が非常に高い」


「なのでスズヤ達には、この城下町で有る、パプテトロンの守備に任命したい!」

「郊外に関しては王国軍で対処するし、城内は遊んでばかり居る黒魔法達に任せる!!」


「君たちの実力なら、魔物数体程度なら……問題なく退治出来るだろう?」

「もちろん、武器や防具も支給するし、手当キランと出そう!!」


「……どうかね。スズヤ、リン?」


「…………」


「…………」


 俺とリンは真面目な表情で、王からの話を聞く。

 

(市街地だけの防衛ならアスが最悪いなくても、何とか成るかも知れない?)

(後はリン次第だな……)


 俺には悪くない条件だと感じたので、尋ねる表情でリンに聞く。


「俺は問題ないが、リンの方はどうだ?」


「私も大丈夫です……例え、オークが三体来ても、私とスズヤが協力すれば、多分大丈夫でしょう…!///」


『ガク、ガク、―――』


 リンは強気の表情で俺に言っているが、足下あしもとは震えている。

 オークの強さをリンは十分に理解しているし、アスが居ない戦闘を想像しているのだろう。


 リンは白魔法使いで有るから、攻撃魔法が無い。

 それに杖での打撃攻撃やピストルでの攻撃も、オーク位に成ってくるとほぼ無意味で有る。


 俺とリンの会話を聞いていた王は、俺からの返事を待たずに、和やかな表情で話し始める。


「おぉ、そうか!」

「スズヤ達なら、そう言ってくれると思っていたよ!!」


「なら、今から早速頼むぞ。スズヤ達!」

「手当に関しては、この終息後に纏めて支払うから!!」


 拒否権は多分無いと思うが、半強制的にパプテトロン守備任命を受けてしまった。

 アスが居れば楽しい守備となるが(?)、俺とリンだけでは重荷の任務と成ってしまう……

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