第46話 太陽の化身
毎日、暑い日が続きますね。
アパート暮らしの僕は、暑いので仕事が休みの日は家から出ない日も多く、クーラーの効いた部屋でゲームを嗜んでいます。
”ピンポーン”
家のチャイムが鳴りました。久しぶりなのでチャイムってこんな音だったっけ?と少し戸惑いつつも、玄関の方に向かいます。
”ピンポーン、ピン、ピンポーン”
おっと黄色信号です。何度もチャイムを鳴らすとは子供の悪戯か、それとも借金取りか・・・後者の場合だと全く身に覚えが無いので困ります。
“ガチャ”
とりあえず鍵を開けて戸を開くと、そこには白いTシャツに青い短パンの男の子が立っていました。褐色の肌にオレンジの髪という目立つ外見ですが、純真そうで穢れを知らないといった感じで、現代社会で穢れてしまった僕には男の子は眩しく見えます。
「こんにちは♪」
「は、はい、こんにちは。何か僕に用かい?」
「うん。集金しに来たんだ。」
「えっ?何の?」
こんな年端も行かない子供が何の集金に来たというのだろう?というか身に覚えが無いですが。
「何のって、君達は僕の恩恵を受けている筈だろう?」
「はい?」
ますますワケが分からなくなってきました。悪戯にしては男の子の顔が真剣なので無下に追い返すことも出来ません。
「いやだから、君達は太陽、つまり僕のおかげで地球に生活できてるんだ。だから対価として僕にお金をちょうだい。僕は太陽の化身なんだ。」
・・・なんて壮大な嘘をつく子供なんだ。自分が太陽の化身なんて思い込むなんて、これも多様化の時代だということなのでしょうか?
「あっ、その顔、信じて無いな。僕がその気になったらこの辺一帯を焼き尽くすことも出来るんだよ。やろうか?」
その時不思議なことが起こりました。男の子の体が真っ赤に輝きだしたのです。まるで今にも爆発しそうな感じにドンドン輝きは増すばかり。これは驚いている暇すらありませんね。彼が太陽の化身なのかどうかは分かりませんが、とりあえず落ち着かせないと。
「わ、分かりました。信じます。あなたは太陽の化身なんですね。」
「おっ、話の分かる子で助かった。」
少年の輝きは収まって行きます。あのままだと本当にこの辺一帯が燃えていたのかは定かではありませんが、とりあえずリスク回避に成功したということにしておきましょう。
「それで本題なんだけど、お金を僕にちょうだい。日照代をさ。」
日照代という言葉は初めて聞きましたが、確かにこの子供が太陽の化身とすると、僕たち地球に住む生物に、どれだけの恩恵を与えてきたのか分かりません。そうなると国家予算でも賄えないぐらいの莫大な金額を払わないといけないんじゃないでしょうか?・・・安月給の僕にはとても払えそうにありません。
「あの~、その日照代というのは、おいくらなんでしょう?」
恐る恐る僕がそう聞くと、子供はニッコリと笑ってこう答えました。
「500円で良いよ♪ちょっと高めのアイス買いたいから♪」
「ご、500円?」
やっすい。日照代安い。この地球が今まで繁栄出来たのは太陽のおかげだというのに、500円で良いなんて、えらい太っ腹である。
「高い?500円?」
困った顔をする子供。このままだと折れて値下げしそうだったので、僕は財布からスッと500円玉を出しました。
「はい、どうぞ。」
「やったーーーーーーー♪」
500円を受け取ると、ピョンピョン跳ねて喜びをあらわにする子供。これだけ嬉しがってくれるなら、あげた甲斐もあったというものです。
「じゃあ、また今度集金しに来るから、その時は宜しく♪」
それだけ言うと、子供はパッとその場から手品みたいに消えてしまいました。僕は幻を見せられていたのでしょうか?いや、財布の中からは確かに500円が消えているので、あの子供が居たことは間違いないでしょう。
また来ると言っていましたが、これって領収書もらっておけば国が払ってくれるんでしょうか?・・・いやそんなワケはありませんよね。
これから先、僕が太陽にお金を払い続けると考えると結構な金額になりそうですが、僕の出費で皆が太陽の恩恵にあずかれるなら、それってとっても有意義なお金の使い方ですよね?
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