第25話 三者面談
僕の名前は寿 司(ことぶき つかさ)。高校三年生である。
親父は実家の寿司屋【寿寿司(ことぶきずし)】を僕に継がせたいみたいで、僕が高校を卒業したらすぐにでも寿司の修行をさせようと思っているらしい、でも僕は寿司に興味無いし、大学に行ってもっと勉強したいんだ。
その折を担任の赤石 焔(あかいし ほむら)先生に相談したら、放課後の教室にて先生、僕、親父の三人で、面談で話すことになった。
僕と親父は横並びに席に座り、机を挟んで先生と対面になって面談スタート。
「どうも‼私‼司君の担任の赤石 焔と申します‼お父様‼どうもよろしくお願いします‼」
流石は赤石先生。今日も無駄に熱い。けどこの無駄な熱さなら頑固な親父に対抗できるだろう。
「てやんでぃ‼バカヤローめ‼お父様なんて呼び方は良してくれ‼」
江戸っ子調に喋る親父だけど、実は江戸っ子でも何でもない。形から入るタイプの職人なんだ。今日だって、ねじり鉢巻きで、寿司職人の格好で来てるし、恥ずかしいったらありゃしない。
「では‼何とお呼びすれば良いでしょうか⁉」
「下の名前の茂吉(もきち)とでも呼んで下せぇ‼」
「分かりましたァ‼茂吉さんと呼ばせて貰いますっ‼」
前と横でうるさい。でも波長はあってそうだな。
「それで話ってのは何ですかい?まだ仕込みが終わってねぇんですが。」
「はいっ‼実は司君の進路のことで‼」
いよいよ本題だ。緊張して来た。
「進路ぉ⁉司お前、また大学に行きたいとか言い出すんじゃねぇだろうな⁉」
親父が睨んできたが、今日だけは引くわけにはいかない。
「そうだよ、僕は寿司職人になんか成りたくないんだ。大学に行ってもっと勉強したいんだよ。」
「なんだとっ‼テメーが継がなきゃ、誰が【寿寿司】の看板を背負って行くんだよ‼15年続くウチの店を終わりにするなんて、俺は嫌だぜ‼」
親父が脱サラして始めた寿司屋である。15年だったら伝統も無いんだから別に終わりにしても良いだろという気すらしてくる。
「お父さん落ち着いて下さい‼司君は勉強も出来ますし‼東大だって狙えるかもしれないんです‼どうか彼の可能性を潰さないであげて下さい‼」
頭を下げる赤石先生。やっぱり熱いぜ赤石先生。赤石先生がプールに入ったら、プールの中の水が蒸発すると言われているだけのことはある。
「駄目だ‼ウチの寿司屋は潰させねぇ‼司は寿司屋になるんだ‼」
むっ、やっぱり頑固な親父である。最早、頑固で居ることが寿司屋と勘違いしている節すらある。コイツは厄介だ。
しかし、次の赤石先生の発言で事態は急転する。
「なら‼俺が【寿寿司】を継ぎます‼」
「えっ⁉」
僕は思わず声を出してしまった。先生が寿司屋を継ぐとは一体どう言う了見だろう?
「な、何言ってんだい‼それに先生、寿司屋になるって言ったって、先生続けながら寿司屋になるって言うのかい⁉」
「いえ‼僕の尊敬するウルトラマン80もUGMと中学教諭の二足の草鞋は無理でした‼だから僕は高校教諭をやめて寿司職人になります‼」
引き合いに出して来たのがウルトラマンなのが気になるが、赤石先生はどうやらマジで寿司職人になるつもりらしい。
「僕は実は寿司職人になるのが夢だったんです‼ですが夢を追うことが怖くなって、安定した高校教諭の道を選びました‼でも夢を追う司君や‼このクラスの子供達を見ていて、僕も自分の夢を追ってみたくなりました‼お願いします‼僕を寿司職人として雇って下さい‼」
ここで僕はある懸念が生まれた。先生が僕の相談に乗ってくれたのは、自分が寿司職人になる為だったのではないだろうか?
・・・いや流石に僕の考え過ぎか。
流石の親父でも見ず知らずの男を寿司職人として雇う筈も無いか。
「ウチの修行は厳しいぞ?」
「どんな修行でも耐えてみせます‼ネバーギブアップ‼」
「・・・よし、分かった。今日から厨房に入れ。」
「は、はい茂吉さ・・・いえ親方ァ‼」
「えぇええええええええええええええええええええええ⁉」
僕の絶叫が教室にこだました。
いやいや、良いのかよ?しかも厨房に入れちゃうの?
もう意味不明だったが、とりあえず大学に行けそうなので勉強頑張ります。
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