第24話 我慢の女性
私の名前は田所 美知留(たどころ みちる)。花の女子高校生である。
ゆえあって今は急いでおり、私は休み時間のチャイムが鳴るなりダッシュで廊下に飛び出した。廊下は走らない?そんなの状況によるじゃないか。
私は小走り気味に目的地まで急いでいると、私の前に立ちふさがる人物が現れた。何故だ?何故立ちふさがる人物が現れる?
「ちょっと待って下さい田所さん。アナタに聞いて貰いたいことがあるんです。」
「な、何かしら伊集院君。私ちょっと急いでるんだけど。」
出来るだけ平静を装う私。急いでいる理由が理由だけに男子に知られるワケにはいかない。
ちなみに私の前に立ちふさがったのは伊集院 猛(いじゅういん たける)君という私のクラスメートで、童顔で栗毛の小柄な体型でクラスの女子から愛でられている人気者であり、どうしてその子が私の前に立ち塞がるのか意味不明である。しかも先回りまでしてくるとは。
「田所さん、単刀直入に言います。僕と付き合って下さい‼」
「・・・はぁ?」
いや待て待て、どうして私のことを好きになったとか?そんなことは最早どうでもいい。なぜ今のタイミングなのだ?タイミング的に放課後ぐらいにしてくれ、だって今緊急事態なんだから。
「お願いします‼」
頭を下げ気迫たっぷりに告白して来る伊集院君。だが私に今返事を考えている余裕はない。
「ちょ、ちょっと待っててね。今済ませないといけない用事があって・・・。」
立ち去ろうとする私。しかし、伊集院君は私の進行方向に立ってそれを防ぐ。
なんだなんだ?いい加減にしてくれ。
「僕、田所さんが急いでいる理由知ってます。オシッコ我慢してるんでしょ?」
「・・・えっ?」
伊集院君の言葉にゾッとした。どうして私がトイレを我慢しているの知っているのだろう?
「実は授業中に田所さんの方をふと見ると、アナタが必死な顔で何かを我慢しているのが見えまして、僕は一目で分かりました。これはオシッコだなって。」
「い、いやはや、なんのことやら。」
これでも一応女子である。簡単に認めるわけにはいかない。
「そんなアナタの顔を見ていたら、だんだんと胸がドキドキしてきて、これは恋に落ちたなと分かりました。」
「そこっ⁉」
まさかトイレを我慢している顔で恋に落ちる変態が居るとは驚きである。
「はぁはぁ、女の子がオシッコを我慢している顔がこんなに綺麗だなんて、僕知りませんでした・・・はぁはぁ。」
鼻息荒い伊集院君。彼が童顔の美少年で良かった。じゃなければ全モザ案件である。
「だ、だから僕は一番綺麗なアナタに告白して、一番綺麗なアナタにOKを貰いたいんです‼・・・はぁはぁ、それで返事は‼」
完全に目がイっている伊集院君。でも美少年と付き合うなんてチャンスはこれから先無いかもしれない。ここは即OK出すのも一つの手だが、私は物理的に手を出すことにした。
「いいからそこを退け‼」
“バキッ‼”
「ぎゃあ‼」
私は伊集院君の可愛い顔面に渾身の右ストレートを放つと、彼は短い悲鳴と共にその場に仰向けに倒れた。
ごめん伊集院君。でも君は一つ間違えてる、私の我慢しているのは・・・・。
“ぎゅるるるる‼”
「はう‼」
お腹のビックウェーブに悶えた私は、お尻を抑えながら再び小走り気味にトイレに急いだ。
今は告白の返事よりも、コッチの方が大事である。
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