第23話 イジメの三人

私、神林 雅子(かんばやし まさこ)です。

今日から高校生なんですけど、私には一つ目標があります。

小中と小柄で気弱な性格が災いし、ちょっとイジメられていたんで、高校生になったらイジメられない様に頑張りたいのです・・・と目標を立てたその日の放課後、いきなり、とある人物に目を付けられてしまいました。

その人はオカッパの髪に三白眼そばかすのある、身長が170センチはありそうなひょろっとしたクラスメートの女の子でした。


「ケッケケ♪私の名前は原 美幸(はら みゆき)アンタのこと明日からイジメてあげるからね。」


私は愕然としました。イジメてあげるからねって堂々と宣言されたのは初めてだったからです。しかもケッケケ♪って怖い。ケッケケ♪って笑い人は絶対に陰湿なイジメをしそうな気がします。オワタ―、私の高校生活オワタ―。

次の日、学校に行き、靴箱から上履きを取るところから緊張しました。きっと画鋲か何か仕掛けられているに違いありません。生物だったら苦手なので勘弁して欲しいです。

と思って上履きを調べたんですが、何もされている様子もなく、ほぼ新品のままでした。

あれ?おかしいな?

十中八九何か仕掛けられていて物陰から見ていた原さんが「もうイジメは始まってんの♪」と決め顔で言ってくる気がしたんですが、コレでは肩透かしも良い所です。身構えていた私の覚悟を返してください。

しかし、教室に行ってからも何かあるかもしれません。入口の扉に黒板消しのトラップが無いことを確認してから教室の中に入り、自分の席を入念に調べてから座りましたが、やはり何も起こっていないようです。けれど調べ過ぎて他のクラスメートから白い目で見られて気がします、これはとんだ弊害です。

と、ここで息を荒げた原さんが入って来ました。


「はぁはぁ、寝坊したわ。おかげでリアクション見忘れた。」


そんなことをブツブツ言いながら、私のところにツカツカとやって来る原さん。

おおっと大胆不敵に皆の見ている前で私をイジメるって魂胆ですか、初日からキツイことしてきますね。


「ケケッ♪どうだった?上履きの画鋲は?さぞ足の裏が痛いでしょ。もうイジメは始まってんの♪」


とドヤ顔の原さん。ですが私は首を傾げました。だって上履きには画鋲なんて無かったんですから。


「な、何他所の反応。反応が悪いじゃない。せっかく昨日の内から画鋲セットしたのに、もう少し良いリアクションしてくれなきゃ、やった甲斐が無いじゃない。」


「い、いえあの、画鋲なんて無かったものですから。」


「えっ、画鋲が無い?そんなバカな、私はちゃんと画鋲を入れた筈・・・。」


とここで第三者が我々に介入してきました。


「オーホホホ♪画鋲ならココにありましてよ♪」


ツカツカと私達の前に現れたのは、金髪巻き髪の目をキラキラさせた如何にも御嬢様といった感じの170センチ越えのムチムチナイスボディの女の子でした。

えっ?これも同級生なんですか?特に胸の発育が凄すぎるんですけど、推定Gカップはくだらないかと。


「誰だアンタ⁉」


「オーッホホ♪私の名前は竜ケ崎 麗子(りゅうがさき れいこ)。竜ケ崎グループの令嬢にして、才色兼備、眉目秀麗、質実剛健を体現した女ですのよ。以後お見知りおきを。」


見た目、言動、何もかもが濃いキャラクターです。もうお腹いっぱいです。


「そ、そんなアンタが私達・・・いやアタイ達に何の用があるって言うんだい⁉」


急に一人称がアタイになる原さん。もしかして竜ケ崎さんのキャラに対抗しているんでしょうか?付け焼刃はやめた方が良いと思います。


「だから画鋲がここにあると言っているのよ♪」


得意気に竜ケ崎さんが右手を軽く振ると画鋲を宙に舞います。もしや私の上履きの中に入った画鋲を回収してくれたんでしょうか?マジ天使。


「テ、テメー私の画鋲を返しやがれ‼」


怒った原さんは竜ケ崎さんに掴みかかろうとしますが、竜ケ崎さんは逆にフィジカルパワーで原さんの腰持って持ち上げ、そのまま彼女を左腕で抱きかかえました。

見た目通りのパワーキャラの様です。


「うわっ、おろせーーーーー‼」


原さんはジタバタしますが、竜ケ崎さんの左腕は彼女の体をガッチリホールドしておりビクともしません。


「私はねイジメが大嫌いなのですわ‼私の目の黒い内はイジメなんてさせませんからね‼そしてイジメをしたアナタには罰を与えます‼」


竜ケ崎さんはそう言うと、フリーになっている右手で竜ケ崎さんのお尻をバチーン‼と叩きました。


「痛ーい‼」


一撃で涙目になる原さん。しかし竜ケ崎さんは更にバチン‼バチン‼とお尻を叩き続けます。


「もうイジメはしないと言いなさい‼じゃないと酷い目に遭わしますわよ‼」


いやもう十分酷い。クラスメート達の目の前で公開お尻ぺんぺんとか、人間としての尊厳をズタズタにするトラウマ案件です。


「ひーん‼ごめんなさーーーーーーーい‼」


泣きじゃくりながら謝る原さんにちょっと萌えを感じてしまいましたが、こうして私の波乱に満ちた高校生活は始まったのです。

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