第14話 女勇者と薄い本

私は勇者パーティの格闘家ロックというのだが、ある宿に泊まった晩のこと。

私は酒場で女勇者に相談を持ち掛けられた。

勇者の名はミラと言い、美しい金髪ワンレンの出るところは出て、引っ込むところは引っ込んでいるといった、スタイル抜群の女勇者である。

そんなミラからどんな相談を受けたかというと、こんな相談である。


「巷では私をモチーフにしたこの様な本が出回っている様ですが、どう思います?」


差し出して来た本を見て私は驚愕してしまった。それはいわゆる薄い本ことエロ同人誌であり、表紙の女はM字開脚でポーズを決めて、とろけた官能的な表情を浮かべており、ミラに似ている、というかミラであった。

どうやら勇者ミラを題材にした薄い本らしい。現行の勇者を題材にエロ同人を描くとは不届きな奴もいるもんだ。タイトルは【女勇者ミラ凌辱戦記】と、タイトルで無い様にも察しがついた。


「ミ、ミラ、怒りたい気持ちも分かるが耐えてくれ、君があまりにも魅力的だからこういう本が出回るんだ。決して悪いことじゃ無い。」


私はミラを宥めようとしたのだが、当のミラはこんな感じである。


「いえ怒ってはいないんです。」


えっ?怒ってないの?逆に少しは怒って欲しい。自分が守ろうとしている人々が、自分が凌辱される本をオカズにしているんだから少しは怒ろう。


「ただ不甲斐なくて、私が弱いからこんな本が描かれちゃうんですよね?もっと精進しないといけないと思いまして。まさかスライムに負けると思われるてるとは・・正直ショックでした。」


はぁと溜息をつくミラ。そうかスライムに負ける系の奴か。弱いからと油断してやられて酷い目に遭うんですね、分かります。


「ミラ、正直に言うが、お前がいくら強くなろうと、これ系の本は無くなることはない。強い女が酷い目に遭うのに興奮する男達は沢山居るのだ。お前ほどの良い女なら尚更だ。」


「い、良い女って、仮にも私は勇者ですよ。口説かないで下さい。」


「いや口説いているつもりは全く無い。そこに反応しないでくれ。顔を赤らめないでくれ。」


勇者ミラは優秀なのだが、ちょっと天然で真面目な所が玉に瑕である。


「そうですか。私がいくら強くなろうと、媚薬と拷問で性奴隷にされたり、魔物の子を孕ませられる想像をする人は居るんですね。まぁ、それで皆さんの役に立てるなら、この勇者ミラなんの不満もありません。むしろ一肌脱ぎたいぐらいです。」


「脱ぐな脱ぐな。女勇者ミラのヌードなんて出たら大陸全土、ひょっとしたら魔王サイドにまで激震が走るわ。」


俺がしっかりしないと、本当にエロ同人みたいなことに成りかねんな。

まぁ、俺の目が黒い内は、たとえ大地が割れ、空から槍が降ろうとも、そんな卑猥なことは許さんがな。


「はぁはぁ・・・。」


「ん?どうしたミラ?息を乱して顔も赤いぞ、もしかして熱でもあるのか?」


「い、いえ、この薄い本を読んでからというモノ、体がポーっと熱くなって、なんだか変な感じなんです。」


おぉっと不味いぞ。ミラは自分が凌辱されるところを見て、発情してしまったのではないか?だが自家発電で発散させろと男が言うのは不味く無いか?セクハラだしコンプラ違反だろ?


「はぁはぁ・・・そこでロックさん。今から私の部屋に行って、この火照りを鎮めるお手伝いをしてくれませんか?」


「・・・えっ?」


「だって私、そういう経験無いのでやり方が分かりません。だからお願いします。」


「もしかして誘ってる?」


「はぁはぁ・・・はい。ロックさんならこの本に描かれてる様なことされても良いかなって。」


おいおい待て待て、この子最初からそのつもりで俺を呼んだのではあるまいな?だとしたら、とんだ淫乱ビッチだぜ。

さて、こうなると俺の選ぶ道は一つか。


「先に部屋に戻ってな。装備を買って来る。」


「はい♪お待ちしています♪」


この後、俺達の夜が熱くなった。









  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る