第11話 ライバル同士
二人の剣士が最後の戦いで、己の刀と刀をぶつけ合っている。
「定規スラッシャー‼」
「ダークカッター‼」
“バァァァアアアアアアアアン‼”
互いの必殺技の飛ぶ斬撃がぶつかり合い激しい音を立てる。
「はぁはぁ・・・。」
「はぁはぁ・・・。」
長時間の戦いで互いに息が荒れて、目も霞んできた。
二人の剣士の片割れは文房具戦隊ボーグマンの緑色を担当しているボーググリーンであり、花屋でありながら剣道の達人。ボーグマンの中では地味ながらも、戦闘用のグリーンのスーツを身に纏い、ここぞというところで活躍する男である。
そしてもう一方の剣士は、デジタールの雇った用心棒の美しき女剣士オンラインであり、白い美しい長い髪、クールで整った顔、褐色のボンキュッボン体に合った胸元の大胆に開いた露出の高い水着の様な戦闘服を身に纏っている。が、実力は折り紙付きで、今までデジタールに挑んできた強者達を一刀の内に自分の刀のサビにして来た。
ゆえに銀河に名を轟かす剣豪である彼女が地球人の男を宿敵とするなど、彼女自身考えもしていなかった。
幾度となく刃を交えて来た二人であったが、ボーグマン達がデジタールの基地に突入して来ての最終決戦。オンラインは基地の通路でグリーンを待ち伏せており、他の仲間を先に行かせたグリーンは一騎打ちで彼女との最後の戦いの臨んだ。
そうして何十分と戦ってきた二人であったが、決着は意外にもアッサリとしたものであった。
「ソォイ‼」
“カンッ‼”
グリーンの下から上の斬撃でオンラインの刀がクルクルと宙を舞い、天井に突き刺さった。
そうしてオンラインの首元にグリーンは刃を向ける。これにはプライドの高いオンラインも敗北を認めざるを得なかった。
「くっ・・・殺せ。」
剣士同士が戦えば負けた者が死ぬのは当然だと、オンラインにとってそれが常識であった。しかし、地球を守る緑の戦士はそっと自分の刀を鞘に納めた。
「き、貴様、どういうつもりだ?」
「僕は地球を守るのが仕事です。人を殺すことが仕事ではありません。もうこれで会う事はありませんがお元気で。」
そう言って一輪のバラをオンラインに手渡して、グリーンは仲間の元に走って行った。
思わずバラを受け取ってしまったオンラインは正直意味が分からず暫く呆然としていた。
この後、スーパーアルティメットミラクルボーグロボの特攻により、巨大化した敵のボス皇帝サーバーを倒したボーグマン達は地球に平和をもたらすことが出来た。
~三ヶ月後~
僕の名前は草壁 深緑(くさかべ しんりょく)。ボーグマンとしての戦いを終え、花屋としての平凡でありながら幸せな生活を満喫している。
母さんからは彼女の一人でも見つけなさいと言われるけど、正直、花屋の仕事が忙しいし、出会いもないので無理無理。
ふと、店頭に飾ったバラの束を見て、とある女剣士のことを思い出す。基地は爆発したけど、彼女はちゃんと逃げれただろうか?
そんなことを考えていると、店に近づくお客様の気配。
「いらっしゃいませー。」
顔を上げながら出来る限りのスマイルでお客様を出迎える僕。しかし、その人を見た瞬間、僕は心臓が止まるかと思った。
「よぉ、久しぶりだな。」
白くて長かった髪がショートヘアーになっているけれど、整った顔立ちに褐色にギザ歯、なによりこのナイスバディはあの人に違いない。
「オンラインさん‼どうしてここに⁉」
「お前に会いに来た。」
「えっ⁉僕に‼」
もしかしてこの間のリベンジに来たのかな?それは困る。戦闘服は政府に返しちゃったし、刀も花屋には置いてない。
というか今更ながらオンラインさんは胸元と背中が大胆に開いたグレーのセーターを着ているのだが、もしかして色んな意味で僕を殺すつもりだろうか?
だがオンラインさんから意外な言葉が飛び出した。
「お前から貰った花が枯れてしまってな。申し訳ない。水野は言った花瓶に入れてはいたのだが。」
「えっ、あぁ、あのバラですか?それを報告しに来たんですか?」
「まぁ、それもある。」
律儀な人だな。敵ながら武士道を重んじていて卑怯なことはしない人だったけど、まさか花が枯れたのを報告しに来るとは予想外だった。
「他にはどんなご用で?」
「ふむ、貴様という人間に興味が湧いてな。暫くこの花屋で私を雇ってくれ。」
「・・・はい?」
理解出来ない。宇宙人の考えていることは全くもって理解出来ない。
「駄目か?」
「いや駄目というか、バイトは募集してましたから・・・オンラインさんが良いなら良いですけど。」
「本当か?ありがとう。あと住む家が無いのでお前の家に住まわせてくれ。」
「えっ?・・・えぇえええええええええええええ⁉」
この後、店の奥で僕とオンラインさんの会話をニヤニヤ見ていた母さんがOKを出したので、オンラインさんが僕の家に居候することが決まってしまった。
半年後、僕の理性がとうとう持たなくなり、僕に嫁さんが出来ることになるのだが、それはまた別の話である。
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