第3話 赤鬼のバレンタイン

僕の名前は田口 義男(たぐち よしお)。高校二年生の男子である。

突然だが、眼鏡で冴えない僕は生まれてこの方、異性からバレンタインのチョコを貰ったことが無い。ちなみに母親はノーカウントである。

よって今年の2月14日も何も貰えないことを覚悟して、朝、学校に行くために玄関の扉を開けた。


「よ、よぉ、遅かったじゃん。」


おや?隣に住んでいる幼なじみの鬼子ちゃんが、玄関先で待っているなんて珍しいこともあるもんだ。鬼子ちゃんは赤鬼の女の子で、僕と同い年。可愛いのだけど男勝りな性格で怒ると手が付けられない。いつも僕は振り回されているわけだが今日は何故に僕を待っていたんだろう。


「わ、私、顔赤く無いよな?」


「うーんと、顔とかじゃなくて全体的に赤いかと。」


ちなみに鬼子ちゃんは頭に二本の角と肌の色が赤い、あと怪力であること以外は普通の女の子であり、今だって学校指定の制服を着ているのさ。


「そ、そういうことじゃなくて・・・まぁ良いや、アンタにコレあげる。」


鬼子ちゃんが渡して来たのはハート形の形をした、赤い包み紙に包装された謎の物体である。何だろうこれ?


「これはなんですかな?」


「はぁ?お前分かんないのかよ?」


眉間にシワを寄せて、割とキレている鬼子ちゃん。これって僕が悪いのかな?


「ご、ごめんよ鬼子ちゃん。頭叩かないで。頭蓋骨が陥没しちゃう。」


「はぁ、叩かないよ。ちなみにそれチョコレートな。」


「チョコ・・・レート?」


なんだそれは?・・・ってチョコレートか。


「なんで僕にチョコレートを?」


「な、なんでってお返しだよ‼お返し‼もう‼先に学校行ってるからな‼」


そう言いながら足早に行ってしまった鬼子ちゃん。

お返しって一体何の?

僕は頭を働かせて考えてみると、ある結論に辿り着いた。


「あぁ、節分のお返しね。」


そうだそうだ、節分の時に僕が豆をあげたんだった。それでかぁ。

豆渡す時に「鬼は外ってワケにもいかないから、ウチあがる?」とか言ってゲームして遊んだわ、思い出したよ。

ということはこのチョコ義理なわけだよな。残念だなぁ。

まぁ、とりあえずチョコを一個ゲットできたワケで、朝から気分は凄く良かった。


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