第2話 メロス外伝 セリヌンティウスが待ってる

 メロスは激怒したらしい。知らんけど。

 俺の名前はセリヌンティウス、石工の親方とかやってる男だ。一説によると太宰治の借金した人がモデルとか言われてるらしいが、真偽のほどは明らかではない。

 今、俺は十字架に磔にされ、親友のメロスを待っている。アンドロメロスではない、ただのメロスである。

 あの野郎、邪知暴虐の王様に盾突いて捕まり、妹の結婚式に出席しないといけないという理由に俺を身代わりに立て、三日後の日没までに帰らないと俺のことを殺して良いなんて言いやがった。

 ……酷いとばっちりである。しかも妹ちゃんが結婚するとか俺聞いてないし、割と好きだったんだけどなぁ。人生とは上手くいかないもんである。

 それにしても暇だ。トイレの時しか縄といて貰えないし、何して過ごせって言うんだよ。

 俺を見張っている兵士に話し掛けてみるか。暇つぶしぐらいにはなるだろう。


「なぁなぁ、なんか面白い話……」


「喋るな‼その首落とすぞ‼」


「ひっ‼す、すいません‼」


 ヤバいよ、食い気味にキレられた。真面目君かよ。いいじゃん話をするぐらいさ。

 あー暇だ、ソシャゲの周回も出来ないし、弟子も会いに来ないしよ。

 大体メロスの野郎は本当に助けに来るのか?怪しいもんである。

 ん?メロスのこと疑ってるのかって?そりゃ疑うだろ。わざわざ死ぬために帰ってくる奴なんて奇特な奴なんか早々居るもんじゃないよ。

 あぁ、でもね。ずーっとアイツのこと疑ってるから、これは一カウントだから。

 だからアイツが来た時には「ごめん、一回だけお前のこと疑ったわ、顔にワンパンで許してくれ」って言って丸く収めるからね。トンチ効いてるだろ?

 というわけで俺はメロスを待つよ。皆、応援よろしくな。

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