タヌキングのSSS(ショートショートストーリー)

タヌキング

第1話 うさぎとかめ タヌキングバージョン

兎と亀はなんやかんやあって競争することになり、競争の途中舐めプをかました兎は昼寝をし始めたのですが、そこには亀を想う兎の不器用な気持ちが隠されていました。


私は兎。いつも亀さんのことをノロマだとかトンマだとか言ってしまうのだけど、本当は彼が優しくて、人よりも自分のことを考えられる素晴らしい人だってことを知っているの。

だから今日は花を持たせてあげようと、ワザと競争をけしかけて、ゴール手前で私は余裕をぶちかましたフリをして、昼寝をしているの。

これで亀さんが勝てば亀さんの株は上がることでしょう。皆は努力と地道にコツコツやることの素晴らしさを知ることになるし良いことしか無いわ。

えっ?私?私には何のメリットがあるかって??

・・・そんなの無いわよ。いつも素直になれなくて悪態ばかりの私は皆の嫌われ者。だから別に私の評価がどうなろうが知ったことじゃ無いわ。

さてさて、亀さんはいつ来るかしら?



「うぅん・・・あれ本当に寝ちゃってた。」


どうやら本当に私は眠っていたらしく、ふぁああと欠伸をしながら背伸びをした。

体感的には2,3時間は寝ていたでしょうから、それだけ寝れば亀さんだってゴール出来たでしょう。

しかし、私の隣からスース―と寝息の様な声が聞こえたので、そっちを向いてみると、何と亀さんが私の隣で体を甲羅に引っ込めて寝ているじゃあーりませんか。


「ちょ、ちょっと‼亀さん‼何してるのよ‼」


私は亀さんの甲羅をユサユサと揺らすと、亀さんは首と手足と尻尾を出して後に、ふぁああああと大きな欠伸をしたの。


「やぁ、兎さん。」


「やぁじゃないわよ‼どうして私が寝ている間にゴールしなかったの⁉」


「だってあんまりにも君が気持ち良さそうに寝ているから、僕も昼寝がしたくなってしまってね。」


「・・・バカ。」


私には全て分かった。きっと亀さんは私のことを慮って、ワザと昼寝をしたんだわ。昼寝をして負けるなんて他の動物から、どんな罵詈雑言を浴びせられるか分からない。だから私の隣で寝始めたんだわ。

ニコニコしちゃってまぁ、本当に人が良いんだから。

でもそういうところが・・・。


「亀さん、お願いだから先にゴールして頂戴。今だけは素直に言うけど、私はアナタに勝って欲しいの。」


「兎さん、君の気持ちは嬉しいけど、そんなことは出来ないよ。でも頑固な君はきっと納得しないだろう。だから二人の妥協点を取ることにしよう。兎さん、僕の甲羅の上に乗って。」


「えっ?」


「一緒にゴールすれば非難されるのも半分こ、それに競走なんて無意味ってことに皆気付いてくれるかもしれない。だって生き物は皆違って皆良いんだからさ。」


・・・こういう青臭い言葉を恥ずかしげもなく言えてしまうんだから、本当にこの人には敵わない。


「ふぅ、分かったわ、でも乗り心地の悪そうな甲羅ね。」


「おっ、ようやくいつもの毒舌が戻って来たね。そうこなくっちゃ♪」



かめさんの甲羅の上に、うさぎさんが乗ると、かめさんは力強くのっしのっしと歩き始めました。うさぎさんは揺れるだの、居心地が悪いだの様々な悪態をつきましたが、かめさんの気付いて居ないのをいいことに、甲羅にそっとキスをしました。

このあと二人は一緒にゴールインしましたが、素直になれないうさぎさんと、恋に鈍感なかめさんが結婚という名のゴールインを果たすのは、まだまだ先のことになりそうです。


めでたしめでたし。

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