第16話 後始末
シロガネフ邸当主の部屋。
そこに当主であるジルコアと仙波のお目付役として行動していたラグ、それと白髪が少し生えてきている壮年の男の3人がいた。
「報告を」
「はっ」
壮年の男がラグへと指示する。
それに返事をし、ラグは見てきたものを全て語る。
この壮年の男はヤガタと言い、シロガネフ邸に仕える暗部の頭領である。
そして、ラグはその暗部の一員であった。
「まず、センバ殿の力。アレは恐らくA級に達していると思われます」
「A級…それは本当かね?」
「はい、私では勝てない。そう思いましたので」
ジルコアの質問にラグが答える。
あのギョエンファミリーの建物内で起きた闘いを思い出すと、とても自分では敵わない。そう感じたからだ。
続けて報告する。
「その際、センバ殿と闘った龍人族の少女、またその妹を保護しています。特に姉の方、アレも異常な力を持っています」
「その件だが、問題は無いかね?」
「ええ、何故かセンバ殿に懐いております。その為、今のところ危険はないかと」
「君がそういうならその判断を信じよう。しかし、君の擬態に気付くとは…」
「その点は申し訳ありません…まさか気付かれるとは思いもしませんでした…」
あのラピスの闘いの最中、妹を確保するよう目で指示したのは仙波だ。
ラグとしては惚けても良かったのだが、気付かれたのであれば動いた方が良いと判断した。
「いや、そのおかげでその少女を保護出来たのだ。結果が良ければなんとやらだよ」
「はっ」
「とりあえずは、うちで雇うとしよう。話を聞く限りではその少女も相当の使い手なのだろう。で、その当人は何をしているのかね?」
「あー…多分お説教かと…」
◇
「センバ! お前何を考えてるんだっ!」
ソイファが物凄い剣幕で捲し立てる。
仙波はそれを甘んじて受け入れていた。
詳細を話すこと無く、悪徳とはいえ1つの商売を潰したのだ。もし間違って法に則った商売をしていたものならとんでもない事になっていただろう。
「まぁ、その、なんだ…結果的に良かったではないか」
「結果さえ良ければ何をやっても良いと思ってるのかっ! それはそれで問題だぞ?」
「う…そうじゃな…今のは忘れてくれ…」
「ソウイチはアタシ達を助けてくれたんだ、良い事をしたんだぞ。怒る事ないだろ?」
(ああ、ラピスよ…今はそれは悪手じゃ…)
あの後、気絶していたラピスが目覚めた時には全て終わっていた。
状況を考えて、ラピスはただ雇われていただけであるし殺しもしていないとの事。
罪は罪ではあるが、この少女の戦闘力とポテンシャルは素晴らしく、罪人にするには惜しい。
そこで仙波は考える。
今は戦力が欲しいわけで、お嬢の指示通り強い者を見つけた事だし、まぁなんだ貴族のアレやコレやで何とかなるんじゃ無いか。
そう仙波は考えて龍人族の姉妹を連れて帰ってきた。
で、結果的には何とかなった。
お嬢曰く、「重大な犯罪を犯したわけでもないのなら、黙ってウチで使いましょう」という事に。
妹は戦闘には向かないそうだが、姉妹セットでシロガネフ家として面倒を見て貰える事になり、大円団であった。
そして、ラピスは自分よりも強く、そして助けの手を差し伸べてくれた仙波に懐く事になる。
が、それはそれ。
勝手な判断で動いた仙波にはソイファからの説教が待っていたのだった。
「ラピスだったな? そうは言うが、ギョエンが法を犯していなかったらどうなると思う?」
「え、えっと…どうなるんだソウイチ?」
「その場合はワシが犯罪者じゃ。その上、シロガネフ家の家名に傷がつく」
「その通りだ。わかっているなら何故エスメラルダ様に相談しなかった?」
「うむ…ワシが先走りすぎた…すまぬ…」
「その辺にしておきなさいな」
ソイファの説教をエスメラルダが止める。
エスメラルダの脳内では、割と仙波の行動に文句をつけるつもりはない。
恐らくはソイファもそこまで怒ってはいないだろうし、状況を聞けばどちらにせよギョエンファミリーは潰しにかかったことだろう。
今、仙波が怒られてるのはパフォーマンスの面が強い。
「それで、ラピス。貴女も私に仕えるという事でいいのね?」
「ああ、ソウイチが言ってた。お嬢様は良い貴族だから心配ないって。アタシはソウイチを信じるからいいんだ」
「あら、そう。随分懐かれたわねソウイチ」
「まぁ、そうじゃな…」
「それでね、ラピス。貴女に今度仕事があるのよ。聞いてる?」
「聞いてる。アレだろ? 悪い貴族を倒すんだろ?」
「ふふ、簡単に言うとそうね」
シロガネフ家に戻るにあたり、ラピスにはある程度説明をしていた仙波。
これで、現在3人の闘技者が揃った事になる。
「じゃ、早速だけどラピスの気量を計っちゃいましょうか。こっちへ来なさい」
そう言って部屋を出るエスメラルダに仙波達は付いていく。
練兵場に着くと、眼鏡を掛けた中年の男が待っている。仙波の気量を計った際も彼が特殊な器具で観察し、結果を出した。今回も同じだろう。
測定は特殊なレンズのついた筒状の物で対象を見る事で、闘気、魔気、聖気の量を見る。
量が多ければ多いほど輝いて見え、その多寡で判断をするもの。
なら異常なほどの闘気だったラピスはどれほどの輝きになるのだろうか。
「…大丈夫かのぅ……」
「何がだセンバ? 何か懸念があるのか?」
「ソイファ殿には話したじゃろ? あの娘とんでもない闘気だったと」
「それは聞いたが、そんなにか?」
そんな話をしていると既に準備が出来た中年の男が筒を構える。
「えーと、まずは闘気から…」
「アタシはどうしたら良いの?」
「そのままそこで立ってれば良いわよ」
「じゃ、見ますーーーアア嗚呼あ亜ああ阿アァ!!!!!! 目がァァァァ!!!!!」
練兵場に中年男の絶叫が響き渡った。
異世界格闘〜地球最強は異世界最強になれるか〜 冷凍みたらし @hamitarosan
ギフトを贈って最初のサポーターになりませんか?
ギフトを贈ると限定コンテンツを閲覧できます。作家の創作活動を支援しましょう。
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。異世界格闘〜地球最強は異世界最強になれるか〜の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます