第5話 急に仕事が来たので
「して、仕えるとは言ったがワシはどうすれば良い?」
「そのあたりを話すのは帰り道でするわ。行きましょうか」
この鉄の箱は鉄車と呼ばれる物で、魔気を動力にして動くということだった。
(車のようなものか、しかし、魔気とはなんじゃろうなぁ。どうも騎士などいるところから中世のような世界かと思えば、文明は随分と発達しておるようじゃのぅ)
とりあえず、鉄車とやらに乗り込みエスメラルダの家へと向かう仙波。
襲撃者達は縛り上げ、エスメラルダの父親へ知らせる為に護衛隊長が馬で先に報告に行った。
そして襲撃者達の見張りの為、騎士2人を残しておいた。後ほど回収し背後関係を洗うのだそうだ。
エスメラルダの家はシロガネフ家と言い、ここシロガネフ領の領主で伯爵なのだそう。
そして、現在同じく伯爵であるイリジーケ家と揉めているとのこと、今回の襲撃もその辺りが関係していると思われるらしい。
と、言うことで腕の立つ護衛は喉から手が出るほど欲しいようで、そういう意味では仙波を拾えたのは非常に運が良かったようだ。
「それじゃ、ソウイチは私の従者兼護衛ということで頼むわね」
「うむ、これよりお嬢に仕えるとしよう。おっと、話し方はコレでは不味いかの」
「別に構わないわ、社交なんかの対外的な催しの場合、基本的にはソイファがいるもの」
「ソイファだ。センバ、お前とは立場的には同じになる」
「ソイファ殿か、よろしくたのむ。つかぬことをお聞きするが、ソイファ殿はこの世界でどれ程の強さをもっておる?」
エスメラルダの隣に居るソイファと挨拶を交わす。
不躾ではあったが、仙波は興味が抑えられずソイファに質問をする。
どうも年齢に精神が引っ張られているところもあるのか自制が効きにくくなっている。
「む、私の強さか…。私は最近A級闘技者になったばかりだ。この国で言えば、上位100人と言ったところだ。あくまで目安だがな」
「A級? 闘技者? それは一体?」
「あら、ソウイチは本当に何も知らないのね」
仙波は闘技者についての簡単な説明を受ける。
ソイファのように貴族等に雇われている闘技者と、その時々で依頼を請け負うフリーの闘技者の2パターンがある。
闘技者の強さにより階級分けされており、上からS.A.B.C.D.Eと6段階ある。最低のE級闘技者でもそこらの一般兵よりも格段に強いようだ。
先程のスキンヘッドの巨漢は恐らくE級闘技者であろうとの事。
「ふむ、ということはソイファ殿は相当腕が立つようじゃな。若いのに大したものだ」
「若いって…お前が言う……いや、良い。センバ、私もお前に聞きたい事がある」
「なんじゃ?」
「奴を倒した技、アレはなんだ?」
「浸透勁の事かの?」
「シントウケイ? 差し支えなければ説明してくれ」
「そうね、私も聞きたいわ」
仙波はふむ、と一言、少し考え込むとソイファに文字通り手を貸してくれと言う。
そして、ソイファに手の平を上に向けるように指示をした。
「まぁ、実際に受けてみるのが早かろう。なに、軽くやるでな心配要らんよ」
「…あまり強くやるなよ」
「うむ。まぁ簡単に言うと外側では無く内側に衝撃を与える技じゃな。拳打の場合、殴り抜くのでは無く、引く方が重要である」
そう言うと、仙波はソイファの手の平に自分の手を上から落として叩く。
パァンと小気味いい音が鳴る。
「今、衝撃は手の平にきたじゃろう?」
「それはそうだろう」
「で、コレが浸透勁の一種じゃ」
先程と同じように上からソイファの手を叩く、が当たった瞬間仙波は手を引き戻す。
さっき同じくパァンという音。
しかし、ソイファは驚きの顔をした。
「手の甲に衝撃がいったじゃろ?」
「あ、ああ…不思議だ…」
「これに身体そのものの動きを連動させると威力が上がる。あの巨漢に打ち込んだのはこれを強くしたものじゃな」
「へー、凄いわね。それはソウイチの前世とやらで覚えた技かしら」
「そうじゃな、極めればどんな重厚な鎧を着てようが関係ない、内への打撃になるからのぅ。じゃが、これが一番凄い打撃かと言うとそうでもない。相手が動いてズレると上手く浸透せんし、そもそも修得に時間がかかる。ならば普通に殴った方が早い」
「ソウイチは何年掛かったの? ソイファにも出来るかしら?」
「ワシは完全にモノにしたと言えるまで10年は掛かった。ソイファ殿なら、そうさな…浸透勁と言っても色々あるが、まぁ基本的なもの良ければソイファ殿なら1年掛からぬじゃろうな」
なら、家に着いたらソイファにもそれを教えるようにエスメラルダは言う。
他人に教える事は自分の理解を深め、より極みへ向かう事が出来るため仙波は快諾した。
すると、エスメラルダが思い出したかのように言う。
「ああ、そうそう。家に着いたら仙波に仕事があるのよ。お願いね」
「仕事?」
「ええ」
家に着いたら、ある人物と闘ってもらうわ。と
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