第23話

 夜になり宿屋に行くと。


「ええええ!!! あのオークをしたのですか!!!」


「完勝って奴かな」


「町を救って頂いて感謝します!」


 エクセリア店員からもありがたいですと言われた。

 宿屋でも冷は救世主で有名人が泊まる宿屋としてスター扱いがさらにアップしたようだ。

 宿屋の部屋に行き、くつろいでいると疲れたから冷はベッドに寝っ転がる。


「今日は魔人と戦い体力もないでしょう。ゆっくりおやすみなさいませ」


 ミーコは安らかに寝れるように、小声で言った。

 しかしそれは冷を油断させる為の工作である。

 オークをも倒したので大金がギルドから支払われたのを確認済みであった。

 全額盗んでやろうとずっと狙っていて、そのチャンスが到来したのだ。

 真の目的は金品を盗むことであり、そっとみんなの目を盗んで持ち物の場所に近寄る。

 まだ気づかれてはいないと、慎重に行動に出る。

 だがミーコの努力も冷には無効であった。

 小声でも冷の耳は聞こえていたのは、1キロ先の女の子の会話を聞ける聴力だからである。


(寝れるようにだと、そうはいかないぞミーコ〜〜〜)


「ミーコそこに座りなさい!」


「ええ! 起きてたの?」


 ビクッと動きを止める。


「俺を寝かせようなんて真似は通用しないぞ」


「中級魔人と激しい死闘を繰り広げたのだろう!」


「俺の体力を見損なっては困るな。さあ服を脱ぎなさい!」


「脱ぎません!!」


「無駄だよ、脱ぐさ!」


「ぜ〜〜〜〜たいに脱ぎませ〜〜〜〜〜ん!」


「もう脱いでるぞミーコ!」


「いや〜〜〜なんでか!! 防具が全部脱がされてる!!」


 ミーコが認識する間もない速さで防具を取っていた。


「たとえ相手が中級魔人だろうと俺の楽しみは別口だ」


「はああああ〜〜。もういいでしょここまでにして〜」


「ダメだもう1回だミーコ」


「私の体を何だと思ってるの。魔族と戦って体力は底をついてるってわかってるでしょう〜」


「そんな体力じゃあ、魔人には勝てやしない。もっと体力をつけなくちゃだな」


 ミーコは抵抗むなしく楽しまれ、アリエルとリリスも同様に朝まで行われたのである。

 隣の部屋の住人は今日は元気がイイなと呟いた。


 翌朝になりスキルで確認したいことがあった。

 ひとりで外に出て広い場所に移動して、オークから獲得したスキルを試してみる。


(今の俺に使えるか実験だな)


 まずは斬鉄斬りを試してみる。

 ナギナタを装備して素振りを何度か試してみたが、どうも変化を感じないので、近くにあった石を叩いてみる。

 石は破壊されて、しかも切れ味は鋭い。

 明らかに断面が綺麗で冷は驚いてしまい、スキルの効果と判断していいだろうとけつ論づける。


(これを与えられた相手は痛みはハンパないだろう)


 次にフレイムバーンを試してみる。

 これはオークの手から放たれた猛烈な炎であり、使えれば楽しそうだと思ってて、冷は今まで炎を発した経験はない。

 というか現世では炎など発しようがなかった。

 気になるのはフレイムバーンが魔力を必要とするので、斬鉄斬りと違い使用不可も考えた。

 フレイムバーンは魔法なのかと思っていたがスキル庫にあるので魔法とスキルは同じ意味のようであると思った。


「フレイムバーン!!」


 壁に向かって試してみたが、予想通りと言ってもいい結果で何も起こらなかった。

 

(これは使えないか。魔力ってのがイマイチ理解できないな)


 同様にしてドラゴンブリザードを実験してみる。

 

「ドラゴンブリザード!!」


 成功すれば氷の塊が飛び出るはずだが、何も出なくむなしさだけが残った。

 そこに現れたのは小さな少年であった。

 少年は冷の一連のスキルの実験を一部始終見学していた。

 この人は何をしてるのか不思議であり、朝から独り言を言ってる人に見えた。

 

「お兄ちゃん何をしてるの?」


「ええっ、キミは見てたのかい?」


「そうだよ、もしかしてお兄ちゃんて、冒険者になりたいけど怖くて冒険にいけないヘタレ冒険者かなあ?」


「ヘタレ〜〜。う〜〜ん、冒険者ではあるけどヘタレじゃないよ」


「でも今のヘタレっぽい。職業は何?」


「職業は無職狂戦士さ」


「無職か、あはああああ! やっぱりヘタレじゃんか。だって無職の冒険者なんて聞いたことないし、普通は養成所に通って職業を一つ身につけるでしょ。どうして通わないの?」


「ちょっと家庭に事情があってな〜〜」


 ヘタレ冒険者と言われてショックを受けたが、無職狂戦士だけに反論できないのが辛かった。


「養成所は町にあるから通ったらいいさ、俺も将来は有名な冒険者になるんだ、じゃあ!」


 少年は養成所について教えてくれて、立ち去ってしまったが確かに少年の言うことに説得力があった。

 スキルを得たのだし、魔法について養成所に通うのを考えてみることにし、宿屋に戻った。

 宿屋ではアリエルとリリス、ミーコがベッド起きてきていて着替えてる最中であった。

 運悪く、いや良いのかもしれないが、3人の下着姿は朝から見るにはとても強烈な光景であり、扉を開けたまま見いってしまう。


「ち、ち、ちょっとのぞき!!」


「変態〜〜〜〜!」


「お前、許さんぞ〜〜〜!」


「こ、これは、どうも失礼しました〜〜〜ー!」


 謝る冷に容しゃなく服を投げつけて、顔面に当たり吹き飛ばされた。

 紳士に謝りやっとのことで部屋に入れてもらうと、養成所の件について相談する。

 

「俺さ実は養成所に通いたいと思ってる。ミーコは盗賊の職業だよな、それはどうしたんだ?」


「養成所です。普通は冒険者ならまず最初に養成所に行くのが常識ですよ。もしかして冷氏は養成所に行ってないとか」


「当たり。俺はずっと無職狂戦士のままさ。オークを倒したから一気にレベル上がって無職狂戦士レベル3101まで上がった。だけど無職であることになるのかな」


「えええええ!!!! 無職狂戦士って知りませんでした! てことは無職のままオークを倒したと?」


「はい、倒しました」


「し、し、し、信じろと言われても信じられないです。常識外な行動ですし誰も考えつかないですよ。無職で冒険にでるなんて世界中で冷氏だけです! それに無職狂戦士ってのは聞いたことないですね。初めて聞く職業です。冷氏しかなれない職業なのかな」


「う〜ん、養成所とか嫌いなんだよな。だって俺はこの世界に来る前の話だけど養成所みたいに学校ていうシステムがあった。勉強をするのだけど教師がいて教わるのは一緒だと思う。俺はその教師から教わるシステムが合わなくて嫌いでいっさい通わなくなったんだ。だけどスキルによっては魔力が必要かもしれない」


「それで養成所に拒否反応がでて通うのを遠ざけてた。心配いらないですよ冷氏なら黙ってても覚えられるでしょう」


「ミーコの話で行く気しなくなるなあ、面倒になった〜〜」


「そう言わず、頑張って養成所に行きましょう!」


「私も応援します」


「ありがとうアリエル」


「お前なら、養成所の教師より強えよ」


「ありがとうリリス」


 こうして最強無職の不登校である冷は養成所に通うことになった。

 どうなるかは冷は不安でいっぱいになったのは黙っていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る