第21話
急いで冷と三人は宿屋を出て外に出ると、人々の逃げ惑う姿が目に入る。
そこで冒険者ギルドに向かう。
ギルドなら冷と共に戦う仲間がいると読んだからで、ギルド店の前に到着。
「冷、今日だけは他の冒険者と協力すること。いいわね」
「わかった。そこまで言うのは、よほど強いんだろう。従うよ」
素直にアリエルに従い、他の冒険者と協力するのに賛成した。
本心はあくまでもひとりで倒したいという気持ちが強いのだが。
店内に入ると予想と違う光景に出くわした。
いつもなら冒険者でいっぱいの活気ある場なのに、今は誰もいない、いや女性店員ひとりの状態であった。
「あらっ冷さん、まだ逃げてなかったの。早く私と一緒に逃げて! さもないと殺されちゃうから」
「俺は逃げる予定ないし、戦うために来たのさ」
「戦うですって! 無理無理絶対に無理です。いくら冷さんがクエストをクリアし魔物を倒せたとしても魔物と魔人では強さが比べ物にならない。脅しじゃないの。あなたのために逃げてと言ってるの」
「魔人に俺が負けると?」
「はい。必ず負けます。それほどまでに次元の違う強さだから」
「俺はすでに魔人を倒してるぞ。下級魔人のようだけどな。ならば不可能な相手じゃないだろう」
「えええ!!! 下級魔人を倒したと?」
「倒したさ。中級だって倒せる気がするんだ。ランクが高い冒険者はどうしてるのかな?」
「中級の冒険者だけ応戦することが決定してます。しかし彼らとてオークには勝てるかどうか」
「なおさら俺が必要だろう」
「必要ではあるけど、とても私の口からは」
「ありがとう。俺なら大丈夫さ。町の人は安全な場所に避難してくれ頼むよ」
冷が絶対に引かないとわかりユズハ店員はギルドを出ることに。
本当は冷に感謝していた。
オークに負けても、時間が稼げれば逃げれるので助かる人が出てくるのだから。
「冷!」
アリエル、リリス、ミーコが心配そうに見つめる。
「じゃあ君たちもユズハさんと一緒に避難してくれ。いいな」
(危ねえから。この戦いにこの子達を巻き込みたくわねえ)
「……どうして。私も戦うわ。仲間でしょ」
「アリエル。君の気持ちは嬉しいよ。だけど来たらダメだ」
「お前だけに行かせるかよ」
「そうですわ。私も戦うわよ」
「リリス、ミーコ、君たちな、この戦いは普段のクエストとは違う。生き残れるかわからない相手だ。俺だって生きて君たちに会えるかわからないんだぜ。それでも来るって言うのかい?」
「行きます!!!」
3人同時に冷に返事をした。
その返事を受けて冷はびっくりして固まった。
「……そこまで言うなら、俺と来るんだぞ。だが気をつけて戦うこと。いいな」
「もちろんです!!!」
冷の予想に反しての戦いに、厳しくは言ったが内心は嬉しくなる。
(まさかあの子達が自ら戦いを望むとはな。俺も驚いたぜ。でもその方がより成長も期待出来る。潜在能力は確かに高い物を持ってるから)
「魔人は俺がやる。残りの魔族は君たちで倒すんだ。俺が教えたことを思い出せ。きっと負けないはずだ」
「わかったわ」
笑顔で冷は返した。
魔人が出現したとされる場所の詳細を聞き、直行すると冷は血の気が騒ぎ立てるのを感じる。
強敵、絶対に勝てない相手、とされる敵との遭遇する前になると必ず冷の体内で起こる現象であった。
きっと柳生家に伝わる血統なのだろうと思っていた。
胸の騒ぎは今まで感じたことが無いほどの大きさである。
胸の騒ぎは破裂しそうになった時に、目的地に着いていた。
すでに上級の冒険者がオークの配下の魔族と戦闘中であった。
残念ながら冒険者側の犠牲者が多いのがひと目でわかるあり様である。
「君たちはあの魔族を相手にしてくれ。俺は魔人オークを探す!」
「はいよ!」
3人の女の子が到着。
オークの配下とはいえ相当な強さを持っていた。
「アリエルは訓練通りに後方で呪文を唱えるのよ。その間は私とミーコで戦うから」
「リリス、大丈夫? やっぱり強そうだけど。冒険者がいっぱい倒れてるわよ」
アリエルは張り切って言ってはみたが、現場の惨状を見て怖くなった。
「おい、この私をみくびるなよな。お前に心配されるほど落ちぶれてないからな!」
リリスは魔剣グラムを肩に乗せて言った。
「あの〜私も忘れないでよね。戦力として」
「ミーコが速さがあるから真っ先に敵に突っ込んでおくれ、出来るかしら?」
「任せなさいアリエル。こう見えても素早さだけは誰にも負けないのよ」
ミーコは勝ち誇るように言い切った。
「その素早さで逃げるなよ絶対に」
「だ、誰が逃げるものですか! 逃げません!」
「ミーコ、リリス、頼む」
アリエルは賢者の杖で魔族を蹴散らしつつ、スキをみて呪文の大勢に。
ミーコが得意の素早さを活かして敵に突き進む。
魔族は冒険者の中に女の子3人を発見すると。
「おいあれを見ろよ。女の子がいるぜ。それも3人だ」
「へへへ、女の子だけで俺たち魔族を相手にするとは、自分で墓穴を掘るようなものだろう」
「どうするよ。捕まえて好きにしてやろうぜ、グフフ」
魔族は突っ込んでくるミーコを見て、警戒するどころか逆に喜ぶ。
「死ねえええ魔族め!!!」
「おおお、可愛い子だ。コッチにおいで!!!」
魔族はミーコを弱い女の子冒険者だと決めつけると、そこに聖剣ヴェルファイアが光らせた。
「グワアアア!!!」
「コッチにおいでって。舐めないでよね!」
聖剣ヴェルファイアの特技である2回攻撃が走った。
1度に2匹の魔族を倒すのに成功した。
「この野郎、よくもやったな。もうようしゃしねえ!!!」
魔族側もこのままやられて黙ってはいない。
ミーコに対して敵意を燃やす。
「よく喋る魔族だこと。それならもう1度!!!」
聖剣ヴェルファイアが再び光る。
「速えええっす。こいつ速さあるぜ」
またも2匹を刺して片付けた。
やったねと、喜びのポーズをとる余裕。
魔族を面白いように倒したのだから、嬉しくなるなるのは当然である。
ミーコを甘く見過ぎた魔族は、気を引き締めるのだった。
聖剣ヴェルファイアだとは知らない魔族は、恐ろしく早く感じた。
そこへミーコは残党へ向けて剣を向けた。
まだまだやれるという自信があった。
「そうはいくか!!」
「ああっ! しまった!!」
ミーコは同じ攻撃を繰り返した結果、魔族に攻撃の手を読まれたのであった。
よって体を掴まれてしまい、動けなくなる。
魔族はミーコを捕まえると、不敵な笑いを起こした。
「グヘヘへ〜〜。捕まえたぜ、お嬢ちゃん。そう何度もやられてたまるかよ」
「離して〜離して〜」
「仲間の恨みだ、たっぷりと楽しませてもらうぜ、お嬢ちゃん。背は低いが胸は大きいな!」
「ヤダ〜〜!!」
魔族はミーコを捕まえた理由は1つ。
こがらなのに巨大な胸が目的である。
嫌がるミーコを無理矢理に防具をはぎ取ったので、下着姿となってしまった。
「俺にも触らせろや〜」
「きゃ〜〜〜」
ミーコが半裸状態になった途端に、集まりだした魔族。
ヨダレを垂らして触りだしたから、ミーコはたまったものではない。
抵抗するも力では魔族が上。
どうにもできない。
「お前〜〜〜!」
ミーコの叫びを聞いたリリスが駆けつける。
ミーコの周りに集まりだした魔族を斬りつけた。
「ギェえええ!」
たまらずにミーコを離して、リリスが抱きしめる。
「助かった〜リリス。危なく色々とされるとこだったわ」
「こいらとんでもないエロい奴らだ。同じ魔族としても恥ずかしいくらいだ。早く防具を!」
ミーコは急いで防具を身に着ける。
「ありがとう。残りの魔族はどうかしら。アリエルは?」
「まだまだ残党はいる。2人だけじゃ倒しきれない。そうなるとアリエルは……確かあそこらへんに居るはず……だがいないな。どこ行ったよ。」
リリスとミーコは周辺を見渡した。
「あ、あれ、かしら、まさか……」
「おいおい、呪文どころじゃねえなあれは。ほとんど脱がされてるぜ」
「助けに行きましょう!」
見つけたのはいいが、アリエルはミーコ同様に半裸状態にされて体を触られている。
「あんた達!! 見てないで助けてってば!!」
手足をバタバタさせて応援を求める。
「マズイぞ。助けるのだ!」
「おのれ魔族め。私だけでなくアリエルまでも裸にしようとは許せん!!」
リリスとミーコは直ぐに助けに行く。
ヨダレを垂らしてアリエルを触る魔族は、単細胞なのだろう、ミーコの接近に気づかない。
聖剣ヴェルファイアが炸裂した。
「グアアアア!」
さらにリリスの魔剣グラムでおもいきりぶった斬る。
「ギャアアアア!!」
アリエルは危ないところで助けてもらった。
「すまない。感謝します」
「お前だけに後方を任せてそのスキを狙われたのだろう。私にも責任はある。悪かったアリエル」
「謝ることはないです。呪文を唱える最中は気をつけないといけないわ。今後の課題になりそう」
アリエルは防具を着ることなく魔族に捕まってしまった反省をした。
「それにしてもアリエルは小さいな〜」
そこにミーコが余計なひと言を入れた。
「ち、小さいですって! なにがですか!」
「だって私はわかるでしょ。魔族が脱がそうとした理由が。ほらこれよ!」
ミーコは大きな胸を下から持ち上げてみせた。
「お、大きい……。わ、私が小さいって馬鹿にしてるわねミーコ! 女神にはそんな大きいなのは必要ない。だから小さいのよ!」
アリエルは迫力に負け、言葉に詰まる。
そして女神だからと言う説明を持ち出した。
「まあまあ、そんな小さいことでケンカするなよ。まだ魔族だっているのだし」
「小さいことじゃない!!」
アリエルはリリスにも馬鹿にされた気分でふてくされつつも、防具を装着し直した。
アリエル達が苦戦中の頃。
冷は魔人オークを探した。
「フレイムバーン!!」
オークが手から炎を吐き出して冒険者を燃やしだし、それも家屋からまとめて燃やすという攻撃であるので、辺りは完全に焼け野原となった。
(ひでえ、あの火を使う奴だけ異常に強い。アイツがオークだな)
「わははっは。冒険者は全員死んでるっすオーク様」
「よし、キルギスを探せ!」
「はいっす!」
「待てよ、まだ終わっちゃいないぜ」
「誰だキサマは、冒険者の生き残りだな、たった一人だ殺してしまえっすーーー」
魔族達は剣や槍を持ち冷を殺しにくる。
そこでナギナタを取り出して構える。
敵の魔族は30人はいて武器の数も、その数だけ迫ってくるわけで、中級の冒険者も多くを犠牲者にした。
普通の冒険者ならこの数、30本もの剣、槍を前にしたらビビるのは無理もない。
冷は違った。
30本どころか100本の攻撃を同時に受ける訓練をしてきたからだ。
その訓練とはどこの家でもある物を使用する。
ティッシュペーパーであり、そのペーパーをテープで繋いで留めると、服の形に切り取り冷がそれを裸の状態で着る。
つまり裸の上にティッシュペーパーだけの状態になるが、大事な物は見えない。
雨の日にそのペーパーだけの服を着て外出し、当然に水滴の雨が降ってくるのを一滴も濡らさずに帰宅する訓練法である。
雨の水滴に当たってしまうとたちまち紙は濡れて破けてしまい大事な物が見えてしまうと、大変なことになり、女子高生が濡れた冷を見たら変態男として叫ばれるから、絶対に一滴も濡らさずに帰宅した。
ただし何事も失敗はつきものであろう。
横殴りの大雨に打たれ、さすがに濡らしてしまい、そこを近所の女子高生に発見されて、大事故になった失敗もあるが、俊敏性を人のレベルを超えた速度と動体視力を養い続けた。
魔族らの30本の剣と槍の嵐。
その嵐を一本のミスなく動体視力で見切り流した。
(遅いな、そんな剣じゃカラスにも当たらないぜ!)
「なに!!!」
「俺が剣のさばきを見せてやろう!」
ナギナタをひと振りする。
魔族の体はひと振りで5人は斬られて地に沈んだ。
「ぐえエエ!」
さらにナギナタを軽く振り、残りの魔族は面白いように斬られて血の嵐となったが、冷の体には返り血は浴びていなかった。
僅か数秒の出来事であった。
配下が全滅させられたオークは衝撃を受けた。
「き、キサマは冒険者だが、さっきの冒険者とは違うな。その剣さばき、ただならぬ使い手とみる。名前は?」
「冷だ。オークよ死んでもらう」
オークは冷よりも遥かに巨大な姿をしていたため不気味に感じた。
(これが魔人の姿か、キモいな)
「いい度胸だ、死よりも怖い恐怖を味わうがよい冷よ」
「これでも受けてみろ、斬鉄斬り!」
「斬鉄斬りだと!」
剣の長さはゆうに身長くらいある大剣。
その大剣を軽々と回転しだしたので、腕力の強さをみせつけられた。
(あの腕力は人間とは違うな、人外って奴かな)
大剣はその大きさと重量を活かして上から振り下ろして冷を真っ二つにするかの速度で来た。
大剣をナギナタで受け止めて耐えた冷は、これは普通に剣なら折れてると確信した。
(ふ〜〜。危ねえ剣だぜ。こいつじゃなかったら折れてたな)
「この斬鉄斬りを受け止めただと! いったいどんなナギナタだ、普通の武器の硬度では刃は吹き飛ぶはずだ」
オークは冷はの技量だけでなく武器のナギナタにも衝撃を受けた。
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