第20話
「オーク様、人族の奴ら思ったより強えっす。良い腕の冒険者が中にいたんでっす。勝てねえすよ」
「ほう、お前らを困らせる冒険者がいたとはな。それなら俺が自ら相手してやろうじゃねえか」
「お願えします。お願えします」
「配下の者を全員集めろ。邪魔になるんだ」
「集めます、集めます」
オークが町の高台から飛び降りて戦火にやってきた。
「お、オークだ! アイツを倒せ!」
「グフフ、倒せるかな」
オークはたったひとりで冒険者の輪に入り、それでも笑みを浮かべた。
「しかもオークしかいない、チャンスだぞ!」
するとオークは手を差し出して呪文を唱え出した。
[オーク]
性別 男
種族 魔人
スキル フレイムバーン ドラゴンブリザード
「死んでしまえ、不要な人族よ。フレイムバーン!」
[フレイムバーン]
魔法スキル 火の属性
オークが呪文を終えて魔法を発した。
辺り一体は炎で爆発し吹き飛んだ。
吹き飛んだ冒険者は家屋にぶつかり息絶える。
中級の攻撃魔法であったため、破壊力は凄まじい。
「次はこれでも喰らえ。ドラゴンブリザード!」
[ドラゴンブリザード]
魔法スキル
水の属性
次は手から発せられたのは氷の塊であり、冒険者の多くを生きたまま氷漬けにした。
「まだまだやるぞ。斬鉄斬り!」
[斬鉄斬り]
大剣スキル
大剣を取り出してもの凄い勢いで振りまわし冒険者を大量に斬りまくる。
高レベル戦士の職業でしか使えない大技であり、さすがにひとたまりもない。
盾を持っていても意味なくぶった斬り、完全に冒険者を全滅させた。
「スゲえ! さっすがオーク様っす」
「グフフ、弱えなあ。ものども、金品と女は集めたか?」
「全部集めました」
「キルギスはいたか?」
「いいえ、いませんです。この町じゃなさそうです」
「となると次の町はどこだ?」
「へい、ピルトですぜ」
「今日はこの町で酒と女で楽しめ、明日にはピルトの町だ。必ずキルギスを探す!」
「へい!」
その日はオークと配下の魔族で地獄とかしたガフの町。
ほとんどの男は殺されて、女はもて遊ばれた。
後には瓦礫の残骸となった町の見るも無残な姿となった。
オークは探していたのはキルギス。
配下の魔族の女の子である。
ある日、王都騎士団にキルギスを奪われたのであった。
不在中であったオークは激怒した。
仲間の魔族のキルギスを奪い返すのが今回の強奪破壊の目的。
次の目的地はピルト。
冷が滞在している町であり、奴隷商館にいた奴隷の魔族の女の子がキルギスである。
あらゆる情報から田舎町に居ると知り探していたのだ。
ピルトの町では町中が大騒ぎとなっていて、宿屋も騒がしくなり冷は何事かと思った。
「どうしたのかな、みんな慌ただしい気がする」
「確かに騒がしいです、私が外を見てきます」
ミーコが宿屋を出て様子を確認しに行く。
人々が走り町を飛び出すので驚いたミーコは尋ねることに。
「どうしたの。地震でもくるのかい?」
「た、た、大変だ! 魔人オークが現れたんだ。隣町のガフが壊滅したそうだ。そして今日にもこのピルトに来ると情報があった。早く君も逃げたらいい。みんな殺されるぞ」
「魔人オーク!」
ミーコは驚いて言葉に詰まった。
その名は聞いたことのある名だった。
それも良くない噂でだ。
これはヤバイと思い、直ぐに冷に知らせた。
「魔人オークか。そんなにヤバイ奴なのか」
「はい、魔人の中でも中級魔人の部類に位置づけられる魔族です。とても勝てる相手ではないし逃げましょう」
「待てってミーコ。俺は確か魔人を倒したよなアリエル?」
「倒したが下級魔人のいちみ。中級ではないです」
「えっ、冷氏は下級魔人を倒したんですか」
ミーコは下級魔人を倒したと初めて聞いた。
下級とはいえ冷が魔人を倒したのはびっくりした。
「うん、俺を殺そうとしたから逆に殺した。俺の前では弱い相手だったから、その中級かしらんがオークも殺してやるさ」
「それに魔人は下級と中級ではまるで力が違うと聞きます。事実ガフの町の中ランクの冒険者でさえ全滅させられたそうです。逃げましょう」
「ミーコが逃げるのが得意なのはわかった。落ち着け。戦ってみないことには強いか弱いかわからないだろう。リリスさ、君は魔族だけど魔人のこと知ってることを教えてくれよ」
リリスは黙っていたが口を開いた。
「お前がこの世界に転生させられた目的。それが魔王の復活を阻止することなのだろ。上級魔人は魔王復活を実行しつつあるのだ。万が一復活させたら」
「させたら、どうなる?」
「まあ、終わりだろうな。お前でも絶対に勝てんと宣言しておこう。そうだろアリエルさん」
「ええ、一兆個ある異世界でも最も危険と呼ばれ最悪のブラック派遣とまで呼ばれるゆえんです」
「よくもまあ俺を派遣しやがったな」
「その魔王を復活させる上級魔人はオーガ、ケルベロス、ギガンテス、ミノタウロス、ウンディーネ、バハムートの6人。奴らも強い。お前も一瞬で消されると保証しよう。中級魔人はオーク、ガーゴイル、ゴーレム、ギガース、サイクロプス、グリフォンは転生の場にいた時から確認済みだが、他にも10数人はいるだろう。さらに3大魔王、魔獣ヘルサモス、魔竜ガノラゴン、魔亀クロノガランもいる。この3匹にいたっては論外だな。なぜなら会った瞬間に瞬殺で終わりだろう。残念ながら中級魔人と戦ったらお前は即死する」
「俺が死ぬと?」
「確実だな」
「じゃあどうしろと?」
「手がないわけじゃない。お前は想像以上に強かった。だから今はミーコが言うように逃げる。魔人とは戦うのを避けてレベル上げに徹する。レベル上げで今より強くれば勝てる可能性だって1%くらいは上がるぞ」
「たった1%かよ、変わらないだろ。つーかそこまで知ってて俺を転生したのは問題だろ」
「それはそれだ。今は逃げるのが大事だ」
「このピルトの人々の命はどうなる?」
「逃げ遅れたら死だな」
「だったら話は簡単だ。俺はオークを倒す!」
「すごい冷!」
「そ、そのオークを倒す!」
「私達もみんな死ぬ。道連れかよお前は?」
「俺は戦う」
冷はリリスの言葉にも動じない。
死ぬと言われても逃げる素振りはいっさい見せないのであった。
その態度にアリエル、リリス、ミーコは感銘を受けた。
死を恐れない強さを冷に見たからである。
「お前はこの世界に転生して正解だったかもな。魔人をも恐れない勇気は立派だぞ」
「素晴らしい言葉です冷。あなたは女神にもなれる心を持ってます」
「このミーコ、冷氏に心を盗まれました。感動しました。自分を犠牲にして人々を救う。泣けます〜〜〜」
三人は仲間になって良かったと心底思わせれたのだが、実は冷の思いは三人の思いとズレていて、それは。
「だって、俺が倒さないと奴隷の獣人猫ネイルちゃんと楽しいことできないだろ?」
なんとこのごに及んで冷はネイルとの楽しむことしか頭になかったのであった。
だから魔人を倒すと言ったのである。
「お、お前なあ、いい加減にしろってーの!!」
感動した三人は呆れてしまったのは当然である。
理由はどうあれ、戦うのは決まり冷はナギナタを手にした。
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