第18話

「冷さん、こちらがネイル。獣人猫で現在の奴隷の中では最高の品になり800万マリです。しかも予約があり今週には売買契約ができそうなので、もしも購入し契約さらるのならお早めにお願いします。あくまでも早く支払いをしたお客様の物となります。従わないお客様は町の騎士団に通報します」


「先客がいるのか、誰なのかな教えてくれはしない、例えば貴族とか」


「それは秘密です、もちろん冷さんのことも秘密にします」


「ありがとうバタ、また来るよ」


 バタにはまた来ると言ったのは、資金がないと思われたくないからである。

 

(800万マリ、高くてそんな資金はないなぁ)


「お待ちしております」


 奴隷商館を後にして歩いた。

 冷はネイルが気に入ったのであるが、今の手待ちのマリはとても足りなかった。


「そういえば飲食店に行く予定は。探してたんだよね冷」


「そうだったな、まずは飲食店でご飯としよう」


 近くの飲食店に入り席についた。

 

「残念ね、800万もしたら無理だわ。だから初めからインチキ臭いと思ったのよ」


 アリエルは奴隷商館自体が好きではなく、買えなかったことに喜んでいた。


「やけに嬉しそうだアリエルは」


「そりゃそうよ。あんなの潰れちゃえばいいのよ」


「まいったなぁ」


「冷氏、現在の所持金はおいくらあるの?」


「せいぜい、5万てとこだな。とても足りない。ああーいい方法ないかな」


 ミーコは5万と聞いてニンマリした。

 必ず冷のスキをみて盗んでやろうと企んだからだ。

 

「ギルドに行けば800万の報酬クエストがあるかもしれません。とても普通の冒険者では無理ですが」


「なるほどな、クエストなら今日にも報酬が入るし、間に合うよな。すぐにでも行こうギルドへ」


 食事を終えるとそく冒険者ギルドに、ユズハ店員に説明をしてみたところ。


「800万! 冷さんの頼みでも叶えられません。そもそも現在の当店のクエストにはそこまでの高額な報酬クエストは用意してません。誰もやりたがらないですし。理由があるようですが難しい話でしょう」


「他には稼ぐ方法は知ってますか。あれば教えて欲しい」


「知りませんねごめんなさい。それに冷の事を考えた場合、知っていても教えたりしません。あなたをみすみす殺すことになるから。800万ていう報酬はたとえ冷さんがとても凄い冒険者でも勝てる相手ではない」


 店員は冷の心配をして言った。

 確かに恐ろしく早いペースでクエストを終えて来るし、無傷で帰ってきて驚かされるのだが、まだ初級のランク3程度。

 3か4を紹介するのがベストと判断力していてた。


「残念だなぁ。仕方ないので今日もクエストをお願いします」


「はい、メンバーのレベルを考慮してまだランクは3がいいでしょう」



クエストランク3

 ウッドポイズン

 報酬 一匹 2000マリ



「冷さんならば倒せるとは思いますが、問題は毒を持ってるので攻撃を受けると毒状態となり体力をも奪っていき最後には死を招きますのでお気をつけて」


「毒持ちか。ようは相手の攻撃を受けなければオッケーてわけだ」


「簡単にいいますね冷さんは」


「行ってきます」


 ウッドポイズンの生息する森へと向かった。

 ウッドポイズンは木の魔物である為、森にだけ生息してある魔物であり、うかつに歩いていると毒の攻撃を受けて森から出ることなく死を迎える冒険者は数多い。

 冷といえど舐めてかかると痛い目にあうのだ。

 

「元気出してください、あのネイルって言う獣人は諦めましょう」


「ミーコよ、俺はまだ諦めてないさ。ウッドポイズンを倒して倒して倒しまくり、800万まで貯めてやる!」


 冷はミーコに言い残して森奥深く突入した。

 

「冷は本気だな。だがどれだけ倒しても限界がある。計算ができない性格みたい」


 アリエルは冷が頑張るほど呆れた。


「どう考えても800万は無理です。あの獣人を気に入ったようで困りました」


「勝手に好きにさせればいいだろう。倒すのはアイツなんだから」


「あらリリスは冷たいこと」


「うるせーアリエル。お前こそ女神ぶって奴隷反対とか言ってるが男の奴隷を欲しくないのか。男を服従させて掃除をさせたりすると楽しいぞ」


「楽しくない! それに女神ぶってといったけど私はれっきとした女神ですから! あなたの様な下品なのと違います」


「下品とはなんだと!」


「ケンカしないで早く冷氏を追いかけましょう」


 その頃、冷はウッドポイズンと戦っていた。



ウッドポイズン

(闇の毒)



[闇の毒]

敵に触れただけで毒の効果を与える。徐々に体力を奪う。



 ウッドポイズンは木の枝が伸ばし、その枝が武器と化して攻撃をしてくる。

 冷はまだ近くには行かず様子見である。

 どこから枝が来るかわかりにくいのもあるし、毒持ちの為ダメージは弱くても後で面倒なステータス異常となる。

 ウッドポイズンは枝を1本から2本と増やした。

 

(あの枝が怪しいな。毒の臭いを感じるぞ。先に斬ってしまおう)


 冷はウッドポイズンに近寄るとナギナタを振り枝を2本とも切り落とした。

 枝は無くなり無防備になった本体の樹木部分にトドメをさしにいく時に異変が起きた。

 

「なんだっ! じ、地面からも出てきたぞ!」


 ウッドポイズンの攻撃は枝だけではなかった。

 根をも自在に操ることが可能であり、冷の一瞬のスキをみて根を地上に出して冷の足にからめたのだ。

 僅かな傷ではあるが、根の先から毒を盛り込むことに成功していたのを冷は経験から悟った。


(一杯食わされたな、地面からも来るとは。今ので毒を受けただろうな)


 現世では毒を持ってる相手との対戦は数多く経験してきた。

 通常は皮膚に傷口をつけられ、その傷口から毒を注入されるのだが、冷は訓練で毒を吐き出す技を身につけていたのである。

 その方法とは血管に入る毒を防ぐ事は出来ない為に、入ってしまうが血管を一時的に収縮し止めてしまい、一気に血管を拡張することで傷口から血が飛び出せるのだ。

 入って来た毒はほぼ放出されるというわけである。

 もちろん最初のころは何度も毒が体内を回り苦しんだものだった。

 失敗に失敗を重ね、遂に毒を吐き出せるように会得した。

 世界最強の武術家と言われるには、敵は人間と限らない。

 あえて誰も近づかない相手に戦いを選んだのである。

 

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