第16話
翌日になり食事を取るためみんなで外出することに。
リリスだけはとてもそれどころではなかったのは、リリス本人でも言いにくかった。
冷の体力はケタ外れに上昇しているためであり、もはや夜の時間が足りないくらいにまで成長していた。
エクセリア宿屋店員が笑顔で出迎えた。
「おはようございます冷さん。また活躍したそうですね」
「今日はもっと活躍しますよ」
エクセリア店員はあっけにとられてしまった。
噂は聞いていて、かつてないルーキーの登場と。
その冷はどう見ても若い青年にしか見えない。
とても噂のルーキーには思えないので、ギャップを感じていた。
その後、ピルトの町中を歩いていると見慣れない店を発見した。
身構えは豪華な造りをしてひときわ大きな建物。
なぜか冷はひかれる物を感じる。
「あれは飲食店かな。妖艶な感じするけど」
「ご存知なかったのですね。あの館は奴隷商館でして奴隷人を取り扱っている店です。お金持ちの貴族が召使いとして女性を何人も雇ったりしています。冒険者が仲間として購入して奴隷契約して探索に同行することもあります」
「そんな店があるのかよ、奴隷か。中を覗いてみたいな」
「商館を見るのは興味があると?」
「大変興味があるな。何しろ君達だけでは物足りないんだよ」
「お前はそっちの方だけは魔王級だ」
「いいやリリス、それは違うさ。女の子の興味なら魔王にも負けない自信がある。絶対に負けない」
そこは絶対の自信を持って発言した。
「張り合ってどうする馬鹿か。見たけりゃさっさと見な。淫魔としてもちょっと興味があるんでさ」
「リリスは賛成派か、淫魔だけあるな」
淫魔の最大の特徴として、魔物を隷属させる能力があり、有名であったが、今のリリスには無関係であった。
なぜなら隷属は使えなかったからである。
対してリリスとは正反対の職業であるアリエルはムッとしている。
「奴隷を買うなんてひどいです。女神としては認められませんわ」
「アリエルは反対派か。まぁ女神なんだから当然か」
「当然です!」
「じやあここで待っているかい。俺が出てくるまでさ」
「アホ言わないでよ! 奴隷商館の前に女神をずっと立たせるって、私が奴隷だと思われたらどうする気よ!」
「あり得る話だな。アリエルなら十分に高額の値がつくだろうけど」
「値段の問題じゃない!」
いつになくアリエルは怒り出して冷に激怒する。
偶然にも通りかかり見つけた奴隷商館に入る決意をした。
(どんな女の子がいるのだろうなぁ〜〜)
扉を開けて入ると男が立っていて冷を出迎えた。
通常は冷のような若造が来る所ではない。
生まれながらにして格差社会である世界であり、貴族は一般的な平民とは違う豪華な生活である。
平民は一生商館には縁がない。
貴族以外だと資金の余裕がある冒険者に限られていて、見た目からして冷は貴族とは程遠いから、冒険者と判断されていた。
「いらっしゃいませ。今日は奴隷をご覧になられにきましたか?」
バタ
職業 奴隷商人
(隷属契約)
[隷属契約]
隷属契約をすることにより、奴隷として強制支配できる。絶対に服従するわけではない、逆らう場合もある。奴隷商人専用スキル。
「ああ、見せてくれないか」
「その前に失礼ですがあなたは貴族のお方でしょうか」
「いいや違うな。普通の冒険者だけど。1度拝見したい、必要ならマリを持っている」
「とてもこの商館に来れる程の資金を持っているようには見えないです。商館は選ばれた人しか立ち入れない所です。お帰りください」
男は冷に丁寧に対応するが、言っている内容はお呼びじゃないという意味であり、冷を馬鹿にしている。
その対応にイラッとしたが気持ちを抑える。
断られらたら余計に見たくなるものであり、冷は粘ることにした。
(見せなきゃ帰らないぞ!)
「これで見せてくれるかな」
「…………わかりました。お名前は」
「冷だ」
「冷様ですね。どうぞこちへ」
男に1万マリを手渡したので、態度が急に変わり閲覧可能になったのであった。
1万マリは決して安い金額ではない。
クエストで一日の収入の多くを渡したことになるからだ。
多額の出費にも関わらず冷はためらわずに渡したのは、どうしても見たいという欲求が上回ったからに他ならない。
現世で女の子と会話すらしなかった人生が影響しており、通常の人の何百倍も性欲は高まっていたのである。
男は冷を資金力のある者と見定めた。
「いくら渡したのよ」
「許してくれアリエル、1万マリだ。今度美味しい物を食べさせてあげるからさ」
「1万!」
アリエルだけでなくリリスとミーコも同時に驚いた。
通路は奥まで広がっており男の案内で進んだ。
赤い絨毯が敷かれ絵画が壁に幾つもかけられている。
西洋風の館を思わせた。
扉を開けると室内は天井からシャンデリアが妖艶に照らしている。
椅子が置かれていて誰も奴隷らしき者はいなかった。
「冷様、ただ今より私、バタがご案内しますので椅子に座りお待ち下さい。ご要望は性別、種族、年齢、ランクを指定できますが、いかがしますか」
奴隷には女性だけでなく男性もいるにはいて、戦闘時に役に立つ能力が求められる。
種族には人族だけでなく獣人族、精霊族もあり好みに応じた種類がある。
年齢は特に女性の場合は若いのが人気であり、若い程人気があり高額の値がつく。
「若い女性で、ランクは高いのから低いのを何人か見せてくれ」
「種族はどうされます」
「指定はしない」
バタは別の部屋に行ってしまい冷達は残された形となる。
館内は幾つもの小部屋があり奴隷はその部屋に住まわされていて、客の要望があった時だけ部屋から出される形式をとっていた。
警備上の面も加味されていて、武器を持っている者が警備についており冷を威嚇していた。
不安にはなったが期待感が半端ないくらい上がりっぱなしである。
(楽しみだなぁ〜〜〜)
しばらくしてバタが戻って来ると、女性の奴隷が四人連れられて来た。
「冷様、まず一人目は人族の女性でしてサヤ、年は33才です。体も綺麗ですし何より料理士の職業持ちです。価格は50万マリとなります」
「サヤです。よろしくお願いいたします」
サヤは謙虚に挨拶した。
とても綺麗であり冷は満足したが、若干年齢が気になる。
冷は現在25才だから、6才も年上となり現世であれば飛びついたであろうが、ここはパスすることにした。
(年上もいいが、せっかくなので同じくらいの年がいいなぁ)
「次の子を頼む」
「はい、次は獣人族の子でジンガ。耳が頭に生えており年は17才。戦闘能力が高く近寄る人を切り裂くのが特徴です、60万マリとなります」
ジンガは幼少時より戦闘経験があり、人を信用していないくなつかない、その点が価格が低い欠点となっていた。
(人を切り裂くのは困るよなぁ可愛いんだけど)
「次の子を」
若くて可愛いが扱いが難しいと聞きパスした。
残りは2人となり冷は選ぶ基準をより厳しくする。
今日は閲覧するだけの予定であるため、無理に購入する契約をしないと決めていた。
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