第14話
部屋はまだ暗く日が登る前のこと。
冷は目覚めて起きていたので、妖鬼から奪ったスキルを試してみようと思った。
スキルはダンジョンライトである。
[ダンジョンライト]
ダンジョン内は暗いフロアーを明るく照らす効果。タイマツと同じ効果である。
(ダンジョン以外でも使えるかな?)
ダンジョンライトを使用してみると部屋は暗かったが一瞬で明かりがついて昼間のように変わった。
ダンジョンライトはダンジョンと使用の制限はなく、暗ければ使用できたのがわかり収穫であった。
その明かりが眩しかったのかアリエル達はみんなベッドから目覚めた。
しかしひとりだけ起きていて怪しい動きの者がいたのが照らし出された。
「動くな!何奴だ、お前は!!!」
冷は怪しい者に向かって言った。
すると冷に言われてドキッと動きが止まったら、よく見ると見覚えのある顔をしていた。
「ミーコか! 何してんだ?」
「い、いえその、おトイレに行こうと思いまして、アハハ」
ミーコはなぜか照れ笑いするので冷は怪しく思う。
「そっちはトイレじゃないが」
「えっ、そ、そうでしたね。間違えました」
ミーコは慌てて嘘をついたので間違えていたのであり、その嘘とは暗闇の中を黙って冷の金品を奪ってやろうとしたところだった。
そこへ運悪く冷がダンジョンライトを発動したために存在がバレたのが事の全てである。
盗賊としてのプライドがあるし、いつかは奪ってやろうと決めるも今回は大失敗に終わったミーコであった。
救われたのはその盗む気は冷には気づいていなかったのでホッとする。
ただ次こそはと粘り強い一面もあるミーコであった。
その話し声と明るさでアリエルが目覚めた。
「ん〜〜〜もう朝かしら」
「悪かったな起こしてさ。俺のスキルのダンジョンライトを試したところさ」
「明るくするスキル。これだと暗闇も照らせるし、ダンジョンに行っても不自由しないわね」
「お前なあ、部屋明るすぎねえ? まだ寝てんだよ」
「リリス、もう昼だよ、早く起きないと朝飯抜きにするぞ」
「飯抜きは勘弁しろよ。あ、あれれ外はまだ暗いぞ。何だどうなってんだ?」
「アハハ」
冷、ミーコ、アリエルはいっせいにリリスに失笑を浴びせたのだが、リリス本人はなぜ笑われたのか見当もつかなかった。
起きると食事を軽く取り、冒険者ギルドへ向かうことに。
新たなクエストを紹介してもらう。
いつもと同じくユズハ店員が迎えてくれる。
(今日も綺麗だな)
「こんにちは冷さん。昨日は素晴らしかった結果にギルド内でも評価はうなぎ上り。今日はクエストランクをどうなさいますか?」
「俺の評価が上がったのか。でもまだみんなに経験値を積ませたいのでランク3でお願いします」
「ランク3ですね。クエストは無理は禁物。実力にあったランク選びが大切です。こちらを」
クエストランク3
アントキラーの討伐
報酬 一匹 1800マリ
あまり高くランクを設定するとアリエルなどが対応できないと困ってしまう。
ランク3でなんとか頑張ってもらうつもりで選択さた。
(今度は頑張ってもらうぞ、みんな)
「アントキラーは今までと違ってダンジョンに生息しており、迷うと大変ですので気をつけて探索してください」
「迷うこともあるんだな。ダンジョンか、気をつけます」
(ダンジョンて言えば洞窟だろう。魔物が多くいるイメージがある。帰れなくなるのは避けよう)
ダンジョンの怖いところは帰れなくなる点。
調子に乗って進むと命を落とすからである。
「ダンジョンていうくらいだ、冷も怖いだろ?」
「リリスよ、俺がダンジョンを怖がると思うか、怖いどころかただのほら穴だろう」
「違います冷氏」
「何が違うのだミーコよ」
「ほら穴は魔物は居ません。ダンジョンは魔物が住み着いた、とても恐ろしい地帯です。勘違いすると痛い目にあいますから」
「なるほどな、魔物がいるという点が違うのか。それなら俺はダンジョンに初体験てわけだ。これは嬉しい体験だ」
「嬉しい体験とは、お前らしい発想だよ。どこまで楽しんでられるかな、さすがのお前でも簡単にはいかんだろう」
「どうやら到着したようだな、君たちも気を引き締めて入るんだぞ」
「はい!」
「わかってるぞ」
「入ります」
ダンジョンのある場所を聞き向かうと入口がぽっかりと穴が開いており潜入する。
ダンジョンに入ると暗く見通しは悪い。
あまり広くもないので戦いにくいのも外との違いで、慣れが必要である。
冷の世界にはダンジョンは存在しないが、ほら穴や洞窟はしょっちゅう入っていたので恐怖感はなかった。
(これがダンジョンか、なんかわくわくするな)
「これは暗くて魔物が見えにくいぞ!」
リリスが先頭で確認する。
「アイテムでたいまつがありますが、持って来てないですよね冷」
「持ってないよ」
「それならさっそくダンジョンライトを使ってみたら」
アリエルが指摘したので使ってみることに。
とても暗くて肉眼だけでのはよく見えない。
「ダンジョンライト!」
ダンジョンライトを使うとフロアーの先まではっきりと見渡せるし、魔物が現れても対応できるので妖鬼を倒したのは正解であった。
明るくなったところで進んで行くと冷の前方に黒い生物が地をはってきた。
「冷氏、何か来ます! アントキラーでしょう」
「まずは俺が戦って様子をみるので、下がってるんだ」
アントキラーは三匹現れて大きさは羊くらいはあり、アゴは硬い骨をも噛み砕く力がある。
盾や鎧を着ていてもその上から噛み砕かれる冒険者もいて恐れられていた。
アントキラー
(毒耐性)
(でかいアリだな。気味悪いし、夢に出てきそうで嫌な魔物だな)
アントキラーは鋭いアゴをカチカチ鳴らし冷をエサと認識すると猛烈な勢いで襲ってきた。
対する冷はナギナタを構えるが狭いフロアーでは大きく振り回すのは限界があるため、小さく振ることになった。
まずはアントキラーが噛み付くのをナギナタで防いでみせる。
冷のナギナタは神物想像の武器であり絶対に折れない効果がある為、さすがの頑丈なアゴを持ってしても全く傷つかないのである。
(このアゴに噛まれたら痛いだろう。それに俺は昆虫嫌いなんだよな)
あらゆる動物や昆虫などに精通してきた冷は今の噛み付きでアントキラーのアゴの強さを計るのに成功したのだった。
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