第10話
ミーコと冷は向き合った状態が続いたのが、ミーコから先に話を始めた。
「せっかく命だけは見逃してやるチャンスを与えたのにバカな。それでは力づくで取りに行くぞ!!」
「いつでも俺はいいけど」
「言っておくがわたしは選ばれた者だとだけは言っておこう。それは勇者の血を受け継いだのが私だ。女の子だと思ってると死ぬわよ。冒険者デビューしたばかりのクセに調子に乗るな!!」
ミーコは素早く冷に寄ると小刀を抜き斬りかかったら、冷はというと一歩も動かずにミーコの小刀を掴んで捕らえた。
そこからミーコの足を払うと地面に転んでしまい小刀も放してしまった。
起き上がりもう一度小刀を手に取り刺しに行ったが、結果はひどいあり様でボロボロな惨敗となった。
ミーコは決して弱い冒険者ではなく勇者の血を引くとされて血統ある剣士であり、クエストランクは5まで行く力を持っていたのだが、相手が悪かったのであり冷には軽いストレッチ運動にも至らない相手であった。
「な、なに! クエストランク2か3程度の奴に……私が負けるわけない」
「残念だったなミーコよ。わかったら盗んだ袋を返すんだ」
「く、悔しい! せめてこの袋だけでも戦利品としておくわ!」
「あっ、逃げちゃうわよ冷!」
「逃げ足は速いなあー」
「感心してる場合かお前!」
ミーコは勝てないとわかると袋だけでもと言い残し去ってしまい、冷はその逃げ足の俊敏さにも感心すると、もう見えなくなっていて失敗したなと反省したのだった。
しかしその俊敏さと素早さの潜在能力、卓越した動作には目を見張るものを感じ取った冷は見入ってしまい、見逃してしまったというわけだった。
(あれま、もう見えなくなっちゃったな〜〜)
可愛い女の子にはやや甘い対応の仕方に2人の女の子からは冷たい視線を送られたのは言うまでもないが。
諦めて冒険者ギルドに行き新しい袋を購入し出直すことになったわけだが、店員さんから慌ただしく話しかけられる。
「冷さん大変です!!!!」
「どうしましたか?」
「町の近くに妖鬼が出没した情報が入りました。妖鬼は強力な魔物でして絶対に近づかないように。いくら冷さんと言えども絶対に勝てません!」
「妖鬼って言ったら魔物では有名な魔物だわね、ユズハ店員さんの意見にここは従いましょう」
「はあ?俺は行くさ。無理と言われて引っ込む俺だと思ってアリエルさんよ? 俺ひとりでも行って来るから君達は宿屋で待ってな」
「本当に行く気なの、冷に死なれると困るんですけど」
「大丈夫、俺は死なないさ。妖鬼ってどんだけ強えのか知らねえが、不足はないって感じだ今の俺は」
「……わかりました」
アリエルは心配そうに見つめる。
「やめてほしいのが本音です。なにせ妖鬼といったらクエストランクが7以上は必要です。冷さんの経験では敵いませんが! と言っても行くのですよね冷さは……死なないでください!」
「必ず帰ってきますぜ俺は、なんたってユズハさんにそこまで言われた日には帰らない訳にはいかねえ」
心配そうに見つめるが冷の意思は固く止められそうになかった。
ギルド側も全力で止めるも同じことで、ギルドに登録してる中級位の冒険者のみ町を出ることを許される程の緊急事態であるが、当の冷は。
(鬼だか知らないが強いのがやっと登場なんで楽しみだな。やっぱり鬼って言うくらいだ、角が生えてる奴かな。イメージでは鬼つったら角が生えてるデカイキャラが直ぐに思いつくしわくわく感ある相手だぜ。念のため女の子2人は避難させよう)
と、この調子であった。
アリエルとリリスは宿屋に行かせて冷は町を出て妖鬼の出現場所に向かう。
危険な相手だけに最悪のことを考えて、選択した。
聞くところによると、すでに冒険者の何人も犠牲者が出ていて困っていたそうであるとの事で、倒せばたちまち人も喜ぶと語っていた。
森に入ると険しくなり視界が悪い。
静かな森が続いてとても妖鬼がいるようには思えない程に思えてると、前方に木々が激しく揺れていたのを発見しその場所に向かうことに。
到着するや見えたのはクマよりも遥かに巨大な魔物で全身が緑色した化け物であった。
妖鬼
(ダンジョンライト)
巨体が一匹いて冒険者のひとりが飛びかかって行くのが見えると、あっさりと斧で弾かれてしまい、さらに掴まれて殺される寸前を目撃した冷は、直ぐに妖鬼への攻撃を開始した。
(こいつは思ってたよりも強そうだな。地面には何人も冒険者が死んでますが。ユズハさんが避難してって言ったのがわかるわかる。これじゃ死体の山が出るのは必死だな)
一兆個の中でも再悪の異世界と言われてるこの地で、冷は初めて緊張感に包まれるとナギナタで妖鬼の腕を連打したら、妖鬼は叫び声をあげ冒険者を離した。
冒険者は上空から地上に落ちる寸前に冷に抱きかかえられ救われると、お互いにビックリする。
「あああああああああああっ!!!!」
同時に同じセリフを発した理由はお互いに顔を見合わせればわかった。
「ああああああ! あんたは冷!」
「君はさっき会ったミーコか。何してんだよ!!!」
「その〜〜、妖鬼を倒して大金を得ようとした。倒せると思ったけど強かったわ……」
「君じゃ勝てない。離れてるんだ、俺が倒すから!!」
「無理よ! ひとりで勝てる相手じゃない、見てわかるでしょ」
「大丈夫さ俺を甘く見るなよな。俺はこう見えても世界最強の武術家、冷さんだぜ。鬼ごときにビビることはねえさ!」
ミーコを置いて妖鬼の方を見ると、妖鬼は斧を振り回し周りに生えてる森林をぶった切り出した。
人よりも太い木を簡単に斬り飛ばす力は妖鬼の得意の腕力であった。
さすがに冷もこの斧に当たるのは避け軽快に移動すると、周りの森林に身を隠し攻撃のチャンスを伺う。
(斧は当たったらヤバイな痛そうだし。だが速度はないとみたぜ)
斧を大きく振るのに慣れてきた冷はかいくぐるように移動し足をナギナタで引っ叩くと、妖鬼のスネに直撃した。
たまらず片足を地につき叫んだ。
「おおおおおおおおおおう!!!!!」
森に轟く程の大きな声であり動けなくなると、冷は攻撃の手を緩めない。
(これでも喰らえ!!!!)
ジャンプして顔の前まで到達すると顔面に蹴りを一発入れた。
妖鬼は蹴りの衝撃で顔は変形し森の中へ巨体ごと吹き飛ばしてしまった。
妖鬼の皮膚は強固で普通の剣では斬れないくらいの硬さで有名であるが、冷の蹴りは大木を一撃で切り倒す力があり、耐えられるわけがなかったのである。
(さすがに、大木よりは硬かったがな)
妖鬼を蹴りで瞬殺したのを見せつけられたミーコは驚いて腰を抜かし立てないでいるところを冷に発見された。
「妖鬼ごとき俺が倒したから大丈夫。勝てるって言った通りだろ」
「あんた強かったんだね。悪かった袋を盗んだりして」
「気にするな。俺は恨んじゃいねえし。まああいつ等は盗まれてどう思ってるかはさておき。さあ町に帰ろうかミーコ」
「助けてくれてありがとう」
ミーコが座る状態から立ち上がる。
町に帰る最中に冷はひそかに思っていた。
(ミーコのパンツ見えちゃった、ラッキーーーー!)
柳生 冷 やぎゅう れい
性別 男
種族 人族
ユニークスキル スキルストレージ
職業 無職狂戦士バーサーカー
レベル801←200アップ
体力 2309←1000アップ
攻撃力 2309←1000アップ
防御力 2309←1000アップ
魔力 2309←1000アップ
精神力 2309←1000アップ
素早さ 2309←1000アップ
剣術レベル 499←100アップ
柔術レベル 499←100アップ
槍術レベル 499←100アップ
弓術レベル 499←100アップ
斧術レベル 499←100アップ
ダンジョンライトを覚えました。
[ダンジョンライト]
ダンジョンを明るく照らす効果。
町に帰還するとアリエルとリリスが出迎えてくれたので驚いたらアリエルが抱きついて来る。
「無事だったのね冷!!」
「く、苦しいさアリエル」
(女の子に抱きつかれるっていい気持ち!)
「死んだかと思った。妖鬼なんて倒さなくていいの。逃げる時も大事なのよ。だから戦わずに逃げて来て嬉しいの」
「い、いや、倒したさアリエルさん。俺は妖鬼をこの手でぶっ飛ばしてきたっつーの。俺が逃げるわけないだろうが!」
「はあ? 倒したですって!!!!! 嘘でしょ!!!」
アリエルは冷が妖鬼と戦わず戻って来たと思っていたのである。
アリエルだけではない、出迎えに来ていたリリスやギルドのユズハ店員さん、多くの冒険者らも冷が死ぬか逃げてくるかのどちらかと思い込んでいたから、倒したという発言には戸惑った。
「いいえ、本当に倒しました冷は。この目で見ましたから」
「お、お前はさっきの盗賊女だな! てめえがなんで冷と居るんだ!」
「私を助けてくれたの。無謀にも妖鬼を倒そうとしちゃって。そしたら逆に殺される寸前に。そこを冷が助けてたの。助けてくれなっかたら私は死んでた」
「なんだと、じゃあ、お前マジで妖鬼を倒したってのか?」
「だからさっきから言ってるじゃんか。妖鬼は倒したと、蹴りの一撃だったけどな」
話を聞いていた者は全員あ然となり、言葉を失ったのは当然のことであった。
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